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Мake the call  作者: 古河新後
序章 ゴミを漁る者

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第10話 執事VS実験少女

「お嬢様、本日は災難でしたね」

「そうね。本来なら起こるべきではない事よ」


 浴槽に浸かり、静かな時間を好む人は居るが私は誰かと話したい口だった。その為、何でも良いので入浴の際はラミアには話を振ってもらう様に頼んである。


「『スカイベース』は調律が取れておいでです。ソレは内側から乱れる事は皆無と言って良いでしょう。乱すのはいつも外からの者達です。実に汚らわしい」


 ラミアの考えは『ハイラウンダー』として当然の事だ。しかし、私としては肯定も否定もしない。


「ま、頑張って登ってきたのを褒めるところよ。公式だろうが非公式だろうが、並大抵な事じゃないわ」


 『スカイベース』で生活する者は基本的に『ハイラウンダー』だけであるが、稀に『ノーマルラウンダー』も招かれる事がある。

 大概は『主席』が気分で連れてきた者たちである事が多いが。


「ま、今回大事になった以上、今後はこんな事は起こらないでしょうし」

「そう願います」


 私達(ハイラウンダー)は平和に暮らしている。その当然がどれ程に“幸福”なのかは本当に落ちてみなければ分からないだろう。


 “変わらずに明日を迎える日常”と“明日も知れない日常”


 生きて行く上で人が失ってはならないモノは本当に前者なのか? 今の私には理解が及ばないわね。

 今度……ハーケン主席に頼んで地下(アンダー)とは行かずとも地上(ノーマル)に降りて見ようかしら。


 その時、肌を直に湯につけているからか、屋敷が揺れた様を感じ取る。


「……今、揺れたわね」

「私も感じました。癒しのお時間ですが……外の様子をご確認なさいますか?」

「ええ。手間だけどお願い」

「かしこまりました」


 ラミアは、少し席を外します、と言って浴室より外へ。


 今回の敵機を堕としたのは『侯爵(マークェス)』である。

 けれどパイロットの身柄を求めてやって来たのなら、私にも話は通してくるハズ。それくらいの家督は持ってるつもりだ。

 しかし、屋敷内で揺れを感じる程の振動となれば穏便ではない。武力行使に?


「お、お嬢様……」

「どうしたの?」


 私はトリエルとロートスが交戦していると言う話を聞いて、入浴を中断し湯槽から上がった。






「なんと……言いますか……」

「…………」

「これ程とは思いませんでしたぞ」


 ロートスは荒れた屋敷前の中庭でトリエルを完全に捕縛していた。

 彼女を中心に、中庭周囲の突起物にワイヤーを回し、その動きを完全に封じ込めている。

 しかし、その捕縛にはかなりの労力が使われた。現役の頃よりも落ちている体力と技術はトリエルを捕縛する為に中庭をかなり傷つけてしまった。


「……おじいちゃん。元は……『ノーマル』?」

「昔の話です。今は、お嬢様の成長を見守るただの執事ですよ」


 ロートスは呼吸を整える。トリエルの動きに合わせてワイヤーを操作する事で彼女の力を無駄なく分散させる事で無力化しているのだ。


「ただの執事は……こんな事出来ない……」

「年の功と言うヤツです」


 何とかトリエル様を傷つけずに捕縛できた。可能な限り“アークライト”にとって不利な要素は無くしておかなければ。


「……じゃあ、しょうがない……」


 その時、周囲に繋がるワイヤーが“何か見えないモノ”に掴まれて引っ張り上げられた。拘束の為に張っていたワイヤーは緩み、トリエルは抜け出す。


「私は……【リベリオン】を使う……」


 ワイヤーを通じて、ロートスにも感じ取れる。

 トリエルを拘束しているワイヤーを外したのは目に見えない『パースロイド』だ。僅かな駆動音と光加減によって僅かに迷彩率が下がった事で何とか視認できる。


 しかし、問題はその視認性ではなく、機体に乗っていないにも関わらず、搭乗時と寸分違わずに精密に動いている事だ。


「……とっ……」


 トリエルは自由になった事で改めて屋敷へ向き直る。


「どいて……」

「残念ながら……無理なご相談ですな」


 トリエルの赤い瞳は電子的に光り、それとリンクしているかの様に、透明な【リベリオン】も赤いカメラセンサーが光る。ロートスを見ている様だった。


 これが『機械同調計画マシンナリープロジェクト』の【実験少女】……


「そう……じゃあ……」

「人の屋敷(いえ)の前で何をやっているのかしら?」


 その声にトリエルは止まり、ロートスは乱れた髪と服を整えて、すっ……と姿勢を正す。






 私は入浴を切り上げてバスローブだけを羽織って表門へ行くと、中庭は酷い有様だった。

 御父様の趣味のオブジェで無事な物は何一つ無く、地面も一部が抉れたり、削られており、外塀に関しては【リベリオン】に踏み壊されている箇所がある。


「トリエル。これはキチンと説明してくれるのかしら?」

「…………レイチェル様……『アンノウン』のパイロット……渡して……」


 私はロートスに、ご苦労さま、と言ってその前を通り過ぎるとトリエルに歩み寄った。


「この件は『侯爵(マークェス)』の指示?」

「……うん」

「こーら」


 私はトリエルの額へ指を弾いて打ちつけた。あうっ……と彼女は額を抑えてしゃがむ。


「嘘はダメよ」

「……なんで……わかったの……?」

「教えない。自分で考えなさい」

「……でも……私……」


 もはや、引っ込みがつかないのだろう。尚も強行しようとするトリエルに私は逃げ道を用意してあげた。


「今の嘘は内緒にしててあげるから、“ガス”を止めて落ち着いて話せる?」

「……わかった……」


 トリエルの瞳が人のモノに戻る。彼女のマスクからは一度呼吸をする様に、ふー、と息を吐き出した。

 私はロートスにトリエルと一緒に屋敷へ入る事を告げる。


「……レイチェル様……」

「ん?」

「……庭……ごめんなさい……」

「謝るのは私だけ?」


 その言葉にトリエルは門番の所へ行き、


「……ごめんなさい」

「ああ。気にするな」

「少しはおじさん達の話を聞いてくれよ?」

「……うん」


 飴やるよ、と貰ったお菓子をポケットに仕舞って、今度はロートスの前に駆け足でやってくると、ペコリ。


「……ごめんなさい」

「トリエル様。この経験を糧に次は淑女(レディ)な立ち振る舞いをお願い致しますぞ」

「……勉強しとく」


 その言葉に、ロートスはニコっと笑う。


「ロートス、トリエルを居間に通しておいて。私は着替えて来るわ」

「かしこまりました」

「トリエル、私は服を着てくるから戻るまでじっと座ってられる?」

「……られる」

「後、【リベリオン】を敷地の外に立たせて待機させなさい」

「……わかった」


 見えない機体――【リベリオン】が動く気配。ソレをトリエルは視線を向けずともやっている。


「同調率はだいぶ、高くなってるようね」

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