第7話 春菜への気持ち
「そういえばさ、前から拓也に訊こうと思っていたんだけど……」
「ん? 突然、何だよ?」
午前の授業が終わり、今は昼休み。二人は机を合わせて、昼食を食べている。
「幼馴染みの春菜ちゃんの事は、どう思ってるの?」
「え? は、春菜の事?」
「うん」
「急に、何で春菜の事なんか訊くんだよ」
「え? だって拓也と春菜ちゃんって、周りから見ると付き合ってるみたいに仲が良いからね。それで、拓也は春菜ちゃんの事が好きなのかなあって……」
「ば、ばかっ、俺と春菜はそこまで仲良くねえよ」
「え? そうなの?」
「そ、そうだよ」
「ふうん……拓也は素直じゃないね。だけどまあ、今はそう言う事にしておこうかな」
「な、何だよそれ。お、俺は別に春菜の事なんか……」
「なになに? 拓ちゃん、私がどうかしたの?」
春菜は購買部で買ったと思われるパンを両手で抱え、拓也の隣に立っていた。
「春菜どうしたの?」
春菜の後ろから佐伯優子もやって来る。
佐伯優子は、春菜の中学からの親友で頭は良く運動神経も良い。髪はベリーショートで身長が一六九センチと女の子にしては背が高い、体型はどちらかというと細身の方だ。顔は少し大人びた感じの美人顔。
春菜は、身長が一六二センチで体型はほんの気持ち程度のポッチャリ系。
拓也は、身長一七五センチで太ってもいないし痩せてもいないといった中途半端な体型なのと、顔は普通よりちょっと良いくらいな程度。
清彦は、身長が一六七センチで痩せ型、顔はカッコイイというよりは可愛いといった感じに周りからは見えるだろう。
「気のせいかもしれないけど、拓ちゃんが私の事を話してるような気がしたから……」
「ちょっと御堂、あんたまた春菜の悪口を言ってたんじゃないでしょうね?」
「え? 拓ちゃん、私の悪口を……言っていたの?」
「ば、ばか! ちげえよ! この俺が春菜の悪口なんか言うわけねえだろ!」
「それじゃあ、あんたは春菜の何を話していたのよ?」
「や、やあ、そ、それは……」
「ああ、それはね。拓也が春菜ちゃんの事をどう思って――むぐぐっ!」
拓也は咄嗟に、清彦の口を手で塞ぐ。
「いや、清彦のやつが俺と春菜はいつも仲が良いって言うもんだから、それは俺と春菜が幼馴染だから当然だろって話しをしてたのさ」
「そうだったの? 拓ちゃん?」
「ああ、そうだぞ」
「なーんだ、そうなんだあ。良かった」
春菜の表情が柔らかくなった。不安な気持ちが消えて、安心したのだろう。
「もぐもぐもぐ!」
「ああ、清彦、わりいわりい」
清彦の口から、手を離す。
「もう、拓也ったら酷いじゃないかあ。急に口を塞ぐから苦しかったよ」
「ごめんごめん、この通り謝るからさ」
拓也は胸の前で、手を合わせた。
「まあ、いいけどさ」
「そういや、なあ春菜?」
「うん? なあに、拓ちゃん?」
「お前、今日弁当どうしたんだよ?」
「あ、えっと……。お弁当は、朝ちゃんと作ったんだけど……鞄に入れるのを忘れちゃって……そのまま家を出て来ちゃった」
「ああ、やっぱりな。今回で弁当忘れて来たのって何回目だ?」
「え? えっと……。ううん……。何回くらいかなあ……。えっと……うんと……」
春菜は、何度か小首を傾げる。
「ごめんね、拓ちゃん。ちょっと分からないかも」
拓也は、大きな溜息をついた。
「そうだな……。大体、週に二、三回は忘れて来てるって感じだぞ」
「そ、そんなに忘れて来てるのかなあ?」
「ああ、そうだぞ。だから明日からは、朝、春菜が俺を迎えに来た時、弁当を忘れてないか俺が鞄の中をチェックしてやるよ」
「え? う、うん、拓ちゃんありがとう。それじゃあ、明日からよろしくね」
「ああ、俺に任しとけ」
春菜と優子は、自分の席へと戻って行った。
優子が立ち去る間際に、「春菜の鞄の中は見てもいいけど、エッチな事はするんじゃないわよ」と言っていたが、拓也はそれを聞き流していた。
「拓也って、本当に春菜ちゃんには甘いよね。というか、優しいよね」
「うるせいな。春菜は俺の幼馴染だから、このくらい当たり前なんだよ」
「はいはい、そうだね。そう言う事にしておくよ」
これ以上、清彦に何を言っても無駄だと思ったのか、、拓也は黙ってお弁当を平らげた。




