第6話 拓也の親友
拓也と春菜はバスに乗り学校へと向う。バスの中は、通勤と通学の者たちで満員となっていた。学校までは十分程度で到着するので、この窮屈な状態はそれまでの我慢といったところだ。
拓也が直ぐ隣にいる春菜を見ると、何だか少し息苦しそうな表情をしているのに気付く。
「春菜、平気か?」
「うん、平気だよ……。だって……拓ちゃんが傍にいるんだもん」
「あ、そ、そっか。それなら、いいんだ」
いつもとは違う雰囲気の、二人の状態は続く。
バスを降りた二人は、私立南茶羅学園と書かれた門をくぐり教室へと向う。二人は校舎の階段を上り、一緒に二年B組の教室に入った。拓也は窓際の一番後ろの席に座り、春菜は真ん中の前から二番目の席に座った。
「拓也、おはよう。今日も春菜ちゃんと一緒に登校なんて、ほんと羨ましいよね」
拓也の目の前に座っていた神崎清彦が、後ろを向きながら声を掛けた。
清彦は真面目で優しく嘘が下手な、頭は拓也と同じくあまり良くないが、拓也にとっては小学校からの付き合いで心を許せる親友の一人だった。
「まあ、俺と春菜は生まれた時から家が隣同士の幼馴染みだからな」
「いいなあ、幼馴染み。僕にも、そんな女の子がいたらなあ」
「そうか?」
拓也の返事に、清彦は呆れたような顔をした。
「本当に拓也は、何も分かってないよね。春菜ちゃんは学年男子の中で、一番人気があるんだよ」
「そうなのか?」
「そうだよ。だからさ、拓也もうかうかしてると、他の男子に春菜ちゃんを取られちゃうかもよ」
「いや、俺は別に春菜の事は……」
担任の先生が、教室へ入って来た。拓也と清彦の会話は一時中断となり、朝のホームルームが始まった。




