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第5話 幼馴染み

 ダイニングテーブルの上に用意しておいたラップで包んだおかずを、レンジで温め直なす拓也。時折、口元から溜息が漏れる。冬香に言われたショックな一言が、相当に効いているようだ。


 暫くすると、冬香がラフな部屋着の姿でリビングへとやって来た。


「冬香、さっきはごめんな」


「うん……。さっきの事はもういい……怒ってないから……」


 冬香は表情を変えずに、淡々と答えた。


「それから、さっきの事は……夏香には内緒にしててくれるか? あいつにバレたら、下手をすると俺……殺されかねないからな」


「うん……。夏香には話さない……」


「ありがとう、冬香。お詫びに、今度何かお礼をするからさ」


「うん……期待してる……」


「ああ、期待して待ってていいぞ」


 拓也と冬香は朝食を食べ終わり、食器を洗って片づけたあと各々の部屋に戻った。拓也は制服に着替え、ベッドの上で一息つく。


 それから暫くして、玄関のチャイムが鳴った。


「おっと、来たな」


 拓也は立ち上がり、部屋を出て玄関へと向う。

 玄関の扉を開けると、「拓也さん、おはようございます!」と、元気のいい挨拶で、冬香を迎えに来た如月秋穂(きさらぎあきほ)がペコッと頭を下げた。


 秋穂は夏香と冬香の共通の友達であり、拓也たち兄妹の幼馴染みで家のすぐ隣に住んでいる。いつも左右の髪の毛をリボンで結び、ツインテールがよく似合う可愛く元気一杯の女の子だ。


「秋穂ちゃん、おはよう。今日も元気で凄く可愛いね」


「そんなっ、何か照れちゃいます」


 彼女の頬が、ほんのり赤くなる。


「秋穂ちゃんのツインテール、よく似合ってるよ。うん、凄く可愛い。是非とも、俺の妹になって欲しいなあ……なんてね」


「もう、拓也さんたら。 可愛い妹なら、二人も居るじゃないですか」


「あははっ、確かにね」


 拓也は、苦笑いをする。


「いや、俺にとって妹は、何人居てもオーケーだからさ」


 何時から居たのか、拓也の真横に冬香が制服姿で立っていた。


「な、何だ冬香、もう降りて来てたのか?」


「おはよう……秋穂……」


「おっはよう! 冬ちゃん! 早くがっこへ行こっ!」


「それでは兄さん……行ってきます……」


「拓也さん、行ってきます!」


「あ、ああ、二人とも気を付けてな」


 冬香と秋穂は二人仲良く学校へと向かい、そんな二人を拓也は軽く手を振って見送った。二人を見送った後、拓也は自分の部屋へと戻り、それから十分が過ぎた頃に再び玄関のチャイムが鳴った。


「よし、それじゃあ行ってくるか」


 拓也は机の上に置いていた鞄を持って玄関へ向う。そして、玄関の扉を開けると――


「拓ちゃん、おはよう」


 肩口まで伸びた髪を(なび)かせながら、如月春菜(きさらぎはるな)が屈託のない笑顔で立っていた。


「おう。おはよう、春菜」


 彼女は秋穂の姉で、拓也と同じ高校の同級生だ。そして、秋穂と同じく彼女も可愛い。彼女の性格は、秋穂と違いおっとりしている。そんなだから、一見アホっぽく周りからは見られがちだが頭は良かった。拓也には、それが不思議で仕方ない。


「もう、拓ちゃん、また私の事バカにしてたでしょ?」


 彼女は、拓也の表情を見て何かを感じ取ったのだろう。


「な、何言ってんだよ。俺は、今日も春菜が可愛いなあって思ってただけだよ」


「え? そうなの?」


 彼女は、呆気に取られた顔をしている。


「嘘じゃねえよ。本当に思った事だぞ」


「そ、そうなんだ……。何か、嬉しいな」


 春菜の顔が、みるみる赤くなる。


「春菜、ゆっくり歩いているとバスに乗り遅れるぞ。さっさと急ごうぜ」


 拓也も自分の言った事が、気恥ずかしくなったのだろう。彼女に、先を促した。


「あっ……。うん」


 拓也と春菜はいつもと違う雰囲気のまま、バス停へと急いで向かった。


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