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第12話 妹思い

 拓也と春菜は、いつもの満員状態で息苦しかったバスを降りて学校へと向う。バス亭から校門までは緩やかな上り坂になっていて、その坂を二人は横に並んで歩いて行く。


「ねえ、拓ちゃん?」


「ん? どうした、春菜?」


「拓ちゃんは、ゴ-ルデンウィ-クってどこかへ出かけるの?」


「ああ。ゴ-ルデンウィ-クなら、妹たちと一緒に温泉にでも行こうかと思ってるところさ。今朝、冬香が温泉に入りたいって言ってたからな」


「温泉? そうなんだ……。実はね、私も家族みんなで一泊二日の温泉旅行に行く予定なの」


「そうか、春菜のとこも温泉に行くのか」


「うん」


 彼女は急に黙って、顎に手を当てる。目は、遠くを見つめたままだ。

 そんな彼女の姿を見て、拓也は声を掛ける。


「なあ、春菜? 何か、気になる事でもあるのか?」


「あっ、あのね、拓ちゃん?」


「おお、どうした?」


「も、もし、良ければ……なんだけど……。私たちと一緒に……温泉旅行に行かない?」


 彼女の誘いに拓也は即答ぜず、唇を力強く閉じた。


「春菜、ごめん。せっかく誘ってくれたのに悪いんだけど、それは遠慮しておくよ」


「あっ、謝らなくてもいいよ。拓ちゃんたちと一緒に旅行が出来たら楽しいだろうなって、私が勝手に思っただけだからっ」


 拓也に見せた彼女の笑顔は、どこか寂しさを感じさせた。そんな彼女の雰囲気を察したのだろう。拓也は、慌てて口を開く。


「いや、俺だけだったら一緒に行っても良かったんだけどさ。妹たちが春菜や秋穂ちゃんが春菜の両親と仲良く楽しそうにしているのを見たら、羨ましくて寂しい思いをするんじゃないかと思ってね。だから、本当にごめんな」


「いいのいいの。私は全然平気だから。だから拓ちゃん、あまり気にしないで」


 彼女は笑顔で、小さく両手を振った。


「あ、ああ」


「拓ちゃんって、昔から変わってないよね」


「そうか?」


「だって……。凄く妹さん思いなんだもん」


 春奈は、背中の後ろで両手を組む。そして、少し跳ねるように歩いた。


「ま、まあ、別に普通だと思うぞ」


「そんな事ないよ。拓ちゃんは、すっごく妹さん思いだよ。あーあ、私も拓ちゃんの妹として生まれたかったなあ……。あ、でも、妹だと……」


「俺は春菜が幼馴染で良かったと思うぞ。春菜には、今まで勉強とか料理の事とか色々と世話になって助けてもらってるからな」


「えっ? そ、そうかな?」


「ああ。春菜には凄く感謝してる」


 彼女の顔が、見る見るうちに赤くなる。


「あっ、な、何だか、ちょっと恥ずかしくなってきちゃった。でも、拓ちゃんにそう言ってもらえて凄く嬉しいな。私も拓ちゃんの幼馴染で良かったって思うよ」


 いつもの屈託のない笑顔を、拓也に見せる春奈。そんな彼女を見ていた拓也の頬は、ほんのりと赤くなっていた。


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