第11話 冬香の行きたい所
御堂家の朝、拓也と冬香はダイニングで朝食を摂っている。夏香はバスケ部の朝練で、既に家を出ていた。
「ねえ、兄さん?」
冬香は箸を止めて、拓也に話し掛ける。
「ん? どうした?」
「もうすぐ……ゴ-ルデンウィーク……」
「何だ? 冬香はゴールデンウィ-ク、どこか行きたい所でもあるのか?」
彼女は、小さく頷いた。
「温泉に入りたい……」
「おお、なるほど、温泉かあ。良いじゃないか温泉。夏香にも話してみて、予定を立てておくか?」
「うん……」
「それじゃあ、この話はまた夕飯の時に夏香も含めて、つう事で」
「うん……分かった……」
拓也と冬香は朝食が終わったあと各々の部屋へと戻り、その後いつも通りに秋穂が冬香を迎えに来て、拓也は二人を玄関で見送る。それから暫くして、春菜が拓也を迎えに来た。
「拓ちゃん、おはよう」
「おう、春菜、おはよう。それじゃあ学校へ――と、その前にやる事があったんだったな」
「え? 拓ちゃん、やる事って何をするの?」
「昨日、学校で春菜に言っただろ? 毎朝、春菜を抱きしめるってさ」
「え? えっ? ええっ!? た、拓ちゃんが私を……毎朝、だ、抱きしめるの? で、でも、急にそんな事を言われても……。わ、私も、こ、心の準備が……」
春奈は後ろを向いて、顔を伏せた。
「いや、悪いな、春菜。今言った事、冗談だから」
「え? 冗談……なの?」
「ああ、そうなんだ。まさか、春菜がそんなに動揺するなんて思ってなかったからさ。本当にごめん」
「もう~! 拓ちゃん、酷いよ! 最初は、急にあんな事を言われて驚いちゃったけど……。でも、本当は……」
「春菜、どうした?」
「あっ、べ、別に何でもないのっ」
「そうか、ならいいけど。でも、本当にごめんな」
「うん、もう謝らなくてもいいよ。拓ちゃんだったから、許してあげる」
「おお、春菜、サンキュ-な」
「うん」
彼女は、いつもの屈託のない笑顔を拓也に見せた。
「それじゃあ、昨日の約束通り鞄の中を見せてくれるか?」
「え? 私の鞄の中?」
彼女は、首を傾げる。
「昨日、学校で言っただろ? 毎朝、春菜が弁当を持って来ているか鞄の中をチェックしてやるって」
「あっ、ごめんなさい。すっかり忘れちゃってて」
春菜は、急いで鞄を開いた。
「いいよいいよ。とりあえず、時間もない事だし、ちゃっちゃと終わらせるぞ」
「あっ、うん……」
拓也が春奈の鞄の中をチェックしたあと、二人は急いでバス停へと向かった。彼女のお弁当に関して言っておくと、今回はちゃんと持って来ていたのだった。




