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一回目、二回目、そして三回目の人生は

 一度目の人生は、地球という星の日本の実況配信者だった。


 主に、ゲーム実況が多く、時々他の実況者ともコラボとかしてたりしていた。有名ではなかったがそこそこ見に来てくれるリスナーさんがいた。


 1Kのアパートで一人暮らしで毎月かなりギリギリな生活を送っていた。


 それでも頑張れたのは応援してくれるリスナーさんのおかげ。


 そんな貧乏な暮らしだったけど、楽しかった。


 理想と現実が違いすぎて何度も配信者を辞めようとしていた時期もあったっけ。


 けど、応援してくれる方々に申し訳無いし、頑張ろうって気持ちになれた。


 そんな生活の中、()()()()()()()()()()()


 正確にいえば、自業自得な出来事だったけど。


 そう……正月にお雑煮を作って食べた。そしたらお餅が喉に詰まって窒息死してしまった。なんとも情けない死に方をしてしまった。


 あれは、黒歴史に入りそうね。今思い出しても恥ずかしい。


 そして二度目は、オリビアとしての人生だった。

 一度目と同じく裕福ではなかったけど、それなりに楽しかった。だが、聖女召喚してからの人生は地獄のようだった。


 召喚したことを感謝されることはなく、聖女の流した悪い噂によって私は虐められた。


 王族……特に王太子はストレスの禿げ口のように誰も見ていないところで私に暴言と暴力を振るう。


 更には()()()()()()()()(オリビア)は暴力を振るわれることが興奮するんだろうと思われていた。


 実際、そんな態度は一度もしたことは無い。ただ「やめて下さい」も言えず、されるがままで終わればその安堵から小さく笑うだけだ。


 それが良くなかったのかも。だけど、辛いからといって泣けばもっと酷い目に合うだろう。


 泣くのを我慢する代わりに笑うことを選んでしまった。


 使用人からは陰口をかなり叩かれたし、私を居ないものとして常に無視されていた。


 それを満足気に見ている偽聖女の顔が未だに忘れられないのは、よっぽど心に深い傷を負わされた証拠なのかもしれない。


 もう、私には人権など存在しなかったんだ。最終的には王様を毒殺したとして処刑された。


 三度目の人生も、オリビアだった。

 つまりは死に戻ったというところかな。記憶が蘇ったのは処刑される一ヶ月前だったけど。


 私にはそれだけでも十分だった。けど、一ヶ月だと城内で味方を作るのは難しいと踏んだ。


 そこで、城内がダメなら外だと思ったけど、民衆は王族から在らぬことを吹き込まれてるはずだ。ならば魔族はどうだろうかと考えた。


 私はこの世界のことを知っている。二度目が同じ人生だったから、ということでは無い。


 一度目の人生で……、()()()()()()()()()()()()()だった。


 その一度目の記憶が蘇ったのが三度目の人生でだなんて……皮肉なものね。


 小説の内容を思い出しながらもクリム(魔王様)と上手く接触した。


 この世で最も愛するスライムを利用して近付いたというのに、何故かクリムは私の『髪の毛』がスライムの色に酷似していると鼻息を荒くして言っていた。


 クリムから復讐の話をされた時は驚いた。きっと、私が可哀想だと思って聞いたのよね。


 じゃなかったら、


「魔王城をお前の好きに使うといい。全てが終わったその時は私の好きにさせてもらおう」


 だなんて言わないもの。


 これは絶対に裏があるんだと思うの。


 だから、私はこう返した。


「なるほど。復讐の為に魔族達やダンジョンを使うかわりに、復讐が終われば私の命を貰うということですね。わかりました、その契約で大丈夫です」


 だって、そうでしょう?


 いくら私の髪の毛が気になるからと言って、そこまでする理由なんて私の命が欲しいからとしか思えなかったもの。


 一人の女の命はたかが知れてると思うけど、私は人並外れた魔力が備わっている。


 魔力量がかなり大きい。こんな美味しい獲物は無いんじゃないかしら。


 魔力を全部あげるの。そのつもりで了承したというのに、クリムは眉間に皺を寄せて不機嫌そうにしていたのは何故なんだろう……?


 それに、決意したことがある。


 この世界が小説の物語で、その中の登場人物でもあるオリビア・ペレスは悪女という汚名を遺して処刑された。


 だったら、悪女は悪女らしく優雅に復讐を遂げてみせよう。もちろん、私のやり方で。


 あんなにも酷い仕打ちをしておいて、許すことは出来ない。寧ろ……怒りが込み上げてくるばかりだ。


 前までは虐められていた。けど今は違うんだと、幸せだと思って割り切れるほど私は人間出来てはいないし、心が強い訳じゃない。


 どんなに大人げなくとも、許せないものは許せない。私の心は……よっぽど傷つき、絶望した。


 それが例え終わった出来事だろうと……。









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