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オリビアはまな板説

 配信中のトラブルがあるのは予想ついていたけど、こんなに早くなるとは思わなかった。


 クリムに知られる前に何とか解決しないと。


 知ってしまうと……私の想像の斜め上な発想と行動してしまう気がしてとても怖いから。


「あっ、見えた!」


 紫色と茶色が混ざった沼を囲むように森がある。


「ルーナ、危ないから私の服の中に入ってて」


 さっきまでは、飛竜が勢いよく飛んでいたので余裕が無かったが、今なら少し余裕が出来た。


 私の服にしっかりとしがみついているルーナ……ドール系の魔族に声をかける。


 ルーナが飛ばされないようにと私も手で抑えているが、着地するとなるとどうなるか分からない。


 だけどルーナはプィっとそっぽを向いた。


「嫌なのよ。オリビア、まな板だもんね。それじゃあしがみついてても飛ばされるのよ。そもそも作り物の胸なんだから、そっちの方が飛ばされないか心配なのよ」


 ルーナはまな板と言いながら目線は私の胸を見ている。


「し、失礼ね! 服に縫い付けてあるから飛ばされないわよ」


 この世界のパッドは存在しない。そもそも私の胸がまな板すぎて悲しかったので作ることにした。


 布に綿を詰め、包んだら形が崩れないように縫うとパッドが完成する。


 急な戦闘とかになる場合も考えて服にパッドを縫い付ける。


 そうすると、あら不思議。まな板だったのが膨らみが二つも。


 ただ、私の知られたくない秘密(貧乳)だということは誰にも打ち明けて居ないはず。


 なんで知ってるの!?


「ルーナ、なんで私の胸が作りものだって知って……」

「??? そんなの簡単なのよ。見たから!」


 ドヤ顔で言うルーナに苦笑を浮かべる。


 失念していた、ルーナは手のひらサイズの大きさ。


 私がしらず知らずのうちに部屋に入ってきて着替えを覗いているなんて有り得そうだった。


 女同士とはいえ、覗かれた事実はかなり恥ずかしい。


 死刑囚の時に着ていた服だって貧乳がバレるのを嫌だから何とか水魔法を使ってシャボン玉風にして誤魔化してたのに。


 割れたら悲惨だったけど、運良く割れなかったのでそこは良かった。


 こういう時はちゃんと魔法が使えるのよね。不思議なことに。


「仕方ないなぁ。飛ばされないようにしっかりと捕まっててよ」


 私はルーナを服の中に入れるのを諦めた。ルーナって変な所で意地張るから、説得に時間がかかる時あるのよね。


 今はそんな時間が無いから私が折れるしかないんだけど。


 軽く手に力を入れるとルーナは小さい手で私の服をギュッと握る。


 どうしよう、可愛い。これが緊急事態じゃなかったら確実にスリスリしてた。頬と頬を合わせて擦る。その時は絶対に私の目がハートになってることでしょうね。


 渋々折れたけど、これはこれで良かった気がする。可愛いのが見れた。


 ふふっと、思わず笑みが零れる。


「何? どうしたのさ。急に笑って怖いのよ」


 ルーナが怪訝そうに私を見る。


「ごめん。なんでもないわ。それよりも、もうそろそろ口を閉じてた方がいいわよ」


 私は手綱を引く。飛竜は咆哮を上げ、下に降りる。


 バサッと翼を広げて降り立ち、私は下に降りると、地面がジメジメしているようでヌメっと土が濡れてる時のような気持ち悪い感覚に眉間に皺を寄せた。





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