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実況やらなくても自滅しそう

 

 勇者パーティは勇者・戦士・聖女・ 魔法使いの計四人で構成されている。


 皮肉なことにその四人とも、私に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 まずは、お手並み拝見と致しましょうか。


 私は口角を上げ、口を開いた。


「毒沼のダンジョン。冒険者の間では難易度が五ツ星中三ツ星になる。どうなることやら」


 ダンジョンは魔物の住処として魔王様(クリム)が提供した土地なのだが、いつしか人間が難易度を決め、冒険者ギルドに依頼するようになった。


 モンスターが凶暴なので退治してくれとか。とある薬草が欲しいので代わりに取りに行ってほしいとか。


 今となってはそれがおかしいんじゃないかと思った事がある。


 周りの環境や自分の置かれてる立場も含め、それが『当たり前』となってしまう。


 相手との価値観が合わないのもそのせいでもあるし、自分の中での『常識』が相手からしたら『おかしい』事にも繋がってしまう。


 魔族やモンスターだってそうなんじゃないかしら。


 無断で自分の住処に入ったら誰だって怒ると思う。モンスターは自分の住処を大切にするから余計ね。


 そりゃあ、攻撃的になるのだってわかる。


 ただ、この世界の人々にとってモンスターは危険だから殺さなきゃいけないという考えのようだ。


 それが『当たり前』になってるから怖い。


 人間は人の命も軽いものとして扱っているのだから、モンスターだと余計なのかもしれないけど。


 そんなことを考えながらも映像を見ていると勇者パーティが動き出した。


 私が見ている映像は勇者を含む四人には見えることも声が届くことはない。


 まぁ、生配信が行われてるなんて想像もつかないだろうけど。


 偽聖女がいる時点で詰んでるとは思うけど……さて、どうします?


 沼を通らなければ先へは進めない。沼を避けて通ろうとしても私が仕掛けたトラップが発動するわ。


 すぐに殺られてしまったら面白くないから、優しめなトラップにした……、ん?


 私は呆気に取られた。それもそのはず。


 毒沼を避けて通った勇者達がトラップにハマるハマる。


 落とし穴に入るわ、丁度足首に引っかかるように仕掛けた線にかかってマルタが飛んできた。それを阻止しようとした魔法使いが防御魔法を発動しようとしたーーだが、


 地雷を踏んだらしく、軽く地面が爆発し、そのままマルタによって飛んで木にぶつかる。


 いやいやいやいや、ちょっと待て。


 弱すぎません? こんな初歩的なトラップでよ。


 とりあえず、冷静になろう。


 私の元親友でもある魔法使い、エミリーは冒険者よ。


 罠にハマるなんて考えられな……。


 ハッと私は何かが気になった。


 街の人々の反応と様子はどうなんだろう。と、見てみると私と同じ反応をしていた。


 《本当に勇者?》

 《王宮の決定したメンバーだしなぁ》

 《それにしては弱すぎ》

 《まさか、適当に集めたメンバーだったり?》

 《なんとなくわかる。だって、王様は未だに意識戻らないんでしょ。メンバーは誰が決めた?》

 《噂に寄ると……《《王太子》だって》》

 《は? 宰相様じゃないの?》

 《忘れたのかよ、宰相様は……ほら》

 《ああ……》


 まずいわね。実況やらなくても自滅しそうかも。


 宰相であるラザニー・フィレッチは、王子の暴走を止めようとしたが、怒りをかってしまい寒い地下牢へと閉じ込められてしまった。


 ラザニーは元々体が弱かったのもあり、肺炎を起こし()()()()()()()()()死亡した。


 そう、処刑を利用して逃亡した前の日だ。


 そんなことが公には出来ないので、病死として世間には言っているが、私は……王子が殺したようなものだと思っている。


 私はその現場を直接見てないけど、小説の裏話として書いてあったのよね。本編では語られなかった部分だけど。


 元々王子は()()()()()()()し、クズ設定ではあるけど、()()()が無かったのよね。残念なことに。


 なんて思いながらも深いため息をした。


 呆れながらも勇者パーティの行動を見ていると、一匹のスライムがフラフラしながらも勇者の元に行く。


 確かに私はスライム型の魔導具をアルベイルに持たせて追跡するように言ったわ。


 けど、


 近付くことは無いはず。


 だって人間が近付けば離れるようにと一定の距離感を保てるようにしてるんだもの。


 と、疑問に思っていると急に映像が見えずらくなる。


 何事だろうかと思って勇者パーティの近くにいるであろうアルベイルに連絡しようと、テーブルにちょこんと座っている()()に目を向ける。


 その人形は瞬きした後、動き出した。


 ドール系の魔族。ある日突然意思を持ち、特殊な能力を秘めた謎が多い魔族。


 手のひらサイズなため、気に入った者の肩やポケットなどに良く潜り込んでいる。


 ゴスロリ風のドール系の魔族、ルーナは私の顔色を伺うなり、キューブの上に乗る。


「緊急なのよ?」

「ええ、そうなの。お願い出来るかしら」

「任せろ、なのよ!!」


 私はルーナに手をかざした。ルーナも私の手に小さな手を当てる。


 次の瞬間、アルベイルの声が聞こえた。私が今、アルベイルと会話していることは街の人々は知らない。


 街に映し出されてるのが勇者パーティがいる毒沼だからね。


 〈オリビア様!! 聞こえますか??〉


 とても慌てた声だ。


「聞こえるわ。何があったの?」

 〈それが……あっ、見つかっ……〉


 すざましい音と共にザザザという音が響き、プツンと音が遮断された。


「え、アルベイル!?」

「ダメなのよ。向こうで何かあったとしか思えないのさ」


 どうしよう。


 映像は何も見えなくなっているし、街の人々の様子も困惑して不安になっている。


 酔っ払いなんかは「早く見せろ!」だのなんだのと吼えている。


 このままじゃ、視聴者は減る。


 なんとかしないと。


 私はキューブから手を離し、部屋を出て向かった先は……飛竜がいる場所だ。



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