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湖の女神が愛用していた弓矢

「あ、武器屋……」


 ドワーフ村から魔王城へと帰ろうと元来た道を戻っている最中、私は武器屋の前で歩みを止めてしまった。


「見たいのか?」

「い、いえ。早く……帰ってって、え!?」


 寄りたいのを我慢して歩こうとした瞬間、クリムが迷わず武器屋に入ってしまった。


 私は慌てて追いかける。


 ーークリムの考えてることが分からない。


 たまに思う。


 武器屋に入ると、色んな種類の武器が並んである。


 短剣や弓、剣や斧など、それも他の街では売られてない珍しいデザインのものまである。


 その中でも全体的に水色で透明感がある弓矢に惹かれた。


 ーーなんだろう、水みたいな……。


 店主のドワーフが私に声をかける。


「気になるかい? 残念ながらこれは売り物じゃないんだよ。何せ曰く付きで、使い手を殺してしまうんだ」

「それはどういうことですか?」

「使えば使うほど、弓矢に生気を取られちまうんだ。大昔は湖の女神が愛用していたらしいが、どういう経緯で女神の元から放れ、今に至るのかはわかっちゃいない。たまに弓矢が水を纏う時があるが……弓矢が泣いていると、噂されている」

「湖の……女神」


 私はフード越しで自分の頭を撫でる。


 髪に違和感があった。私は髪を見られないようにフードを深く被るが、弓矢と髪が共鳴しているようだった。さらに瞳も疼き出し、咄嗟に目元を隠す。


「嬢ちゃん、どうした? 大丈夫かい」


 ーー呼ばれている? 選んでほしいの?


「あの、売ってくれませんか? この武器、欲しいです」


 店主は少し考えてからお金の計算をし始めた。


「そんなに欲しいなら、このぐらいは頂かないと。この弓矢を見に来る客もいるんでね」

「え!? そんなに!!?」


 ぐぬぬっ。


 足下を見られた。


 指定された金額は日本で例えると一億だった。


 そんな大金持ってるはずがない。どうしよう。日を改めて来ようかな。


「……すみません。やっぱり、遠慮しときます」


 肩を落としながらも店を出るが、クリムはまだ店内にいるようだ。


 外で待機していると話し声が聞こえた。


「先日、死刑にあった子覚えてる?」

「うん。たまにドワーフ村に来る子だったよね。良い子だと思ってたのに、人は見かけに寄らない」

「これだから人は信用出来ないんだよ」

「頭おかしいとしか思えないわ。なんでも重罪らしいし」

「怖いねぇ」


 誰のドワーフの声なのかは分からない。皆同じに見えるし、ヒソヒソと声を潜めて話してるドワーフは見当たらない。


 これも近くの森の影響かな。森にはイタズラ好きな妖精が住んでるから。


 イタズラ好きな妖精は、不幸が大好物なのよね。だから嫌がることをやって楽しんでいる。


 人の不幸は蜜の味って言葉があるぐらいだし、よっぽど好きなんだろうな。


 フゥー……と、息をついていると頭に誰かが触れてきた。


 驚いた私は小さな悲鳴をあげてその人物を見た。


「あっ、えっと……遅かったですね、気になった武器でも」


 動揺しながらも一歩後退りした。


 ーーえ、今、頭……撫でた?


「これを」


 クリムは私が惹かれた弓矢を見せてきた。


「これっ……、どうして!?」

「欲しかったのだろう」

「そうですが、高かったはずですが」


 渡された弓矢とクリムを交互に見る。


「……その弓矢がスライムに似ていたからな」


 しばらく間をおいて、クリムが口を開く。


 水色なら、全てがスライム似だと言い切ってそうだな。


 なんて、そんなことを思ってしまう。


 クリムらしい理由なんだろうけど……。なんだかなぁと呆れるを通り越して引いてしまう。


 歩き出したクリムの後ろを急いで追いかける。


 そして何故かすれ違うドワーフがクリムを見るや否や、顔を引きづって距離を置いたり、見て見ぬふりをしたりしてるのはどうしてなのだろう……?













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