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他人の空似だ

「全く、悪趣味なものを造る」


 クリムは動きが止まったドラゴンを見上げた。


 私もそれは同意する。


「ドワーフは何かを作り上げることが喜びであり、誇りでもあるみたいです。発想が斜め上になってますが、かなり腕は良いです」

「だから、ドワーフ村に来たのだな」

「はい」


 クリムは何かと察しが良い。きっと私が来た目的も理解したのだろう。


 私は行く理由を話していなかった。それなのに許可してくれた。


 それは信じているからなのか、それとも……何か別の理由があるかのどちらかだなと思う。


「あ……」


 私は口を開こうとしたが、拍手の音が室内にやけに響く。


 拍手がした方へクリムと私は視線を向ける。


「すっごいねー。結構自信作だったのに」


 ハイトーンボイスのような高めな声。薄暗い廊下から姿を現したのは、ドワーフ族の長だった。


 外見に似合わない幼い声とのギャップで笑いそうになってしまう。が、怒られるだろうからグッと我慢する。


 クリムも私と同じことを思ったのか、口元に手を当てて肩を小刻みに震えている。


 そのことに気付いた長が怪訝そうな顔になった。


 だが、クリムが何者なのか気付いたのか顔を青ざめて膝をついた。


 いや、土下座のようになっている。


 地面に額を擦り着けそうな勢いだ。


「こ、これは魔王様ではありませんか!!! こんな辺境の地に足を踏み入れてくださるとは、感激でございます!!」


 フードを被せるタイミングを逃してしまった私は、額に手を当てた。


 こうなるからフードを取らないように念押ししたのになぁ。


「…………いや、私は魔王ではない」


 笑いを堪えながらも否定するクリム。


 何を言い出すのかと思えば、すぐに分かる嘘をつかなくても。


「知っているか? この世には同じ顔が三つ存在する。わたしはその一人ということだ。わたしが魔王というのなら存在感があるはずなのだ。お前から見て、わたしは存在感あると思うのか?」


 なんかめちゃくちゃ言い始めたんだけどぉぉぉ!!!


「存在感あると思うのですが……白髪は珍しいので」


 長、わかってるね。ご最もよ。


「他人の空似だ」


 無理があるってー! もうやめて! 恥ずかしいから!!!


「……それは確かに。では貴方様は魔王様では……無いので?」

「だからそう言っているだろう」


 信じるのか……。ドワーフの長はそのうち詐欺に合いそうで心配。


 それにしても、なんで急にクリムは嘘なんて。


 心配そうにクリムの顔を覗き込むと、クスッと笑って呟いた。


「……オリビアがそう望んだのであろう?」


 確かに身バレすると面倒だと言ったけども。


 惚れた弱みね。なんで好きになっちゃうのかなぁ。


 そんなこと言われたら怒れないじゃない。


 顔がニヤけちゃう。しっかりしろ、私。


 ニヤける顔を整えるように両手で頬に添え、ドワーフ族の長を見る。


 私は魔王様に質問したいのを堪えながらもドワーフの長を見る。


 土下座をやめた長は深いため息をして、動かなくなったドラゴンの脚にそっと手を当てる。


「これ、造るのに三年以上かかったのになぁー。完全には壊されなかったけど、せめてさぁ、手加減というものを……ブツブツ」


 ボソボソっと愚痴り始めたので、これは長くなる。


 前に来た時も私がうっかり壊してしまって、造りものに対する想いを十日間も言われ続けた記憶がある。


 これを避けるために壊さないでと言っていたんだけど、やってしまったことは仕方ない。



 私は魔法で収納した荷物の中にあるアイテムを取り出した。


 もしもの場合に備えて、()()()()()()()()()()()()()()










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