表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/24

……お前を傷つけたからだ

 ドワーフ村はその名前の通り、ドワーフしかいない村。けれど、油断は出来ない。


 私は世間では死んでることになっているから目立つことはしたくない。


 クリムは魔王ということを隠す必要は無いけれど、隠さないと色々と目立つ(主に美形だし魔王という肩書きは伊達ではないぐらいオーラがすごい)


 一緒に行動してるということはクリムが目立ってしまうと私まで目立つのよ。


 ……ドワーフ村に行く前に散々理由を言ったと思うのに、このクリム(魔王様)はどうやら聞いていなかったらしい。


 フードを脱いでしまったなら、仕方がない。


 ドラゴンは威嚇をするように吼えた後、鋭い爪を立ててクリムに向かって手を振り下ろす。


 その動きは()()()()()()()()()()()()()()()()()()再認識した。


 クリムは両手をドラゴンに翳すと、振り下ろされたドラゴンの手が透明な壁により弾かれ、勢いよく後転した。


 立ち上がるまでには少し時間かかりそうなので今のうちに、クリムが投げ捨てたフードを拾ってクリムの元に駆け寄った。


()()()、急いでこれを」

「……必要ない。今はこのドラゴンの躾だ」

「いや、そのドラゴンは造りものですから、感情はないので無駄かと」

「それでもダメなのだ。ドラゴンはわたしにとって」


 グォォォォォッン


 クリムの声に被せてドラゴンが雄叫びを上げる。


 タイミングが悪く、ドラゴンが起き上がってしまった。


 さっきよりも血走らせてるような目で私とクリムを捉えている。


 一体、クリムとドラゴンの間に何があるというのだろう。


「とにかく、戦ってはいけません」


 疑問に思ったが、それよりも戦闘になって壊したりしたらドワーフ族の長が絶対に発狂するのが目に見えている。


 そうなってしまったら聞く耳持たないだろう。


 私は何とか戦闘を止めさせようとクリムの腕を必死に引っ張ってるけどビクともしない。


 私自身がドラゴンに恐怖し、全身が震えていて上手く力が出せないせいもある。


 だけど、クリムは私に見向きもしない。ずっとドラゴンを睨んでいる。


 ーー怒ってる。でもどうして?


 クリムが怒る理由なんてどこにも無いはずなんだけど。


 ましてや小説でもクリムがドラゴンに怒る描写は無かった。


 怒ってる理由が分からなくて混乱していると魔王様がゆっくりと口を開く。


「……お前を傷つけたからだ」


 その声は呟きのような声のトーンで、さらにドラゴンの声とも重なってしまい、聞き取れなかった。


 聞き返そうとしたが、今はそんな余裕が無い。ドラゴンが突進してきた。


 私の少し前にいるクリムは怯むことなく手を上にあげる。


 するとドラゴンの上と下に魔法陣が現れた。それもドラゴンの移動に合わせて動いている。


「……亜空の宇宙へ、導けーーライトニング!」


 詠唱をすると、雷が落ち、ドラゴンを直撃した。


 丸焦げにはならなくともドラゴンの動きが止まった。


 プスプスと焦げた臭いがする。これはまずい。クリムは本気でドラゴン(造りもの)を壊す気だ。


 そうなってしまったら色々と面倒なことになる。


 なんとしても止めないと。


 私の戦闘能力は魔王様よりも下なのは理解している。


 だったら、


「これ以上、ドラゴンに危害を加えたら私の髪の毛に触らせてあげませんよ!!」


 クリムが次の攻撃へ移ろうとした時、私は大きく息を吸って、声を響かせる。


 ピタッとクリムの動きが止まった。


「髪を人質に取るとは……。これでは手出しが出来ぬでは無いか」


 明らかに嫌な顔をされるが、渋々と攻撃を中断する。


 その様子を見て、とても複雑な気持ちになった。自分の髪に負けたような敗北感があるのはきっと気のせいかな。


 うん。そういうことにしとこう。と、胃が痛むのを感じながらもそんなことを思っていた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ