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ドワーフ村の長の家はドラゴン(?)屋敷

 長の家の扉を叩くと返事はなかった。


 そういえば、初めて長の家に訪ねた時もそうだったっけと思いながらもそっと扉を押す。


「勝手に入っても良いのか?」

「扉の横に文字が刻まれてますよ」


 長の家に上がったことが無いのか、クリムは怪訝そうに眉をしかめた。


 ドワーフに依頼する時も配下がやってるんだろうな。と思ってるけども、その配下には少し同情しちゃうかも。


 だって、ドワーフ族は……かなりの変人の集まりなのだから。


 私は、扉横に書かれてる文字を指さした。


 そこには『精神崩壊する屋敷の挑戦者を望む』と書かれある。


 その後、小さく『自己責任でお願いね! テヘッ』


 と書かれてあるのを見たクリムはさらに不機嫌そうな顔になった。


 言いたいことはわかる。私もこの文字を見た時は物申したい気持ちになったもん。


 仕方ないんだよね。ドワーフ族は高度な鍛冶技術がある。


 それが次第にお互いに張り合うようになり、家を改造してどっちが腕利きなのかを他者に意見を求めるようになった。


 交流は持ちたくないけど、意見は聞きたいという……天の邪鬼なのよね。


 魔族の間では知らないけど、冒険者の間では『ドワーフ村に行くなら生きて帰ってくることを目指せ』と言われている。


 家に寄っては造られた奇妙な生き物の見世物小屋だったり、かなりグロテスクな蝋人形屋敷だったりする。


 そして、


 長の家はというと、ドラゴン屋敷。そのドラゴンも造りものなのだから驚く。


 こじんまりとした外見なのに中に入ると貴族の屋敷のような豪邸な見た目になる。


 それは長の家だけじゃなくてドワーフ村の家や店が全部そうなっている。


 ドワーフ村の近くにある森の硫黄のにおいと関わりがあるらしいけど、詳細は不明。


 奥に進めば、巨大な牢にドラゴンが獲物を見るような目でこちらをじっと見ている。


 時々咆哮するドラゴン、火を吹くドラゴンや鉄格子に思いっきり体当たりするドラゴンもいる。


 ドラゴンに寄って死んだ私にとっては、ドラゴンの独特な臭い、鋭い牙と爪、響くように吼える姿はトラウマでしかない。


 冷静に歩いているけど、内心怖くて仕方ない。


 クリムは私が怖さと戦っているのが伝わったのかは知らないけど、さりげなく手を握ってくれるが、何も言わない。


 そのさりげない優しさが恐怖を緩めてくれて少しだけ安心する。


 ここで『大丈夫か?』とか『安心しろ、必ず守る』とか言われたらその優しさに甘えるところだろうけど、そう言わないのは私がそういうことは好きじゃないのを理解しているんだろうなって思う。


 まぁ、私の髪のことになると『守る』だのなんだのと言っているけど。それはそれで複雑。


 ギュッと握り返すと、クリムが「あっ……」と小さく唸った。


 私が首を傾げると「いや、なんでもない」と言われてしまったので大したことじゃないんだろう。


「行き止まり?」

「前に来た時は行き止まりではありませんでしたけど」


 奥に奥にと進むと、前に道は無く、行き止まりだった。


 その刹那、後ろから何かの気配を感じて鳥肌が立った。


 生暖かい風と荒い息遣い。前の壁に写し出される影は私のモノでもクリムのモノでもない。


 だとすれば……。


 後ろを勢いよく振り向けば、鉄格子に体当たりしていたドラゴンだった。


 ドラゴンは鼓膜が破れそうなほどに吼える。


 吼えた息が強く、飛ばされないように踏ん張る。深く被っていたフードが取れ、水色の髪が見えてしまった。


 それを見たクリムの中で何かが切れる音がした……気がする。


「……どうやら、このドラゴンは躾がなってないようだな。ならば私が躾てやろう」


 クリムは着ていたフードを投げ捨てた。


 そんなクリムを見て、私は心の中で叫んだ。


 何のためにフードを被ってたのかわかってんのぉぉぉぉ!!!?








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