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【戦線都市ワダツミ・カプリッチオ】  作者: 幾多野 数多
【序ノ章】
8/22

第8話「渡り鳥」

 


「羅生門の人か」



 喫茶店から出てきた男女。その一方の制服を見て、虎太郎は、口笛を吹く。

 羅生門男子高校。

 そこは、喧嘩自慢の不良少年が集まる学校であり、5大列強と云えど、一目置いている。それも、羅生門男子高校の頂点。

 最強の喧嘩屋の存在が大きい。


 ワダツミ四天王の一角。

 通称、ギガマキこと【ギガントマキア】。



「あんた、ギガマキの舎弟か何か?」



 虎太郎の問いに、羅生門の制服の少年────鵺咫路は、首を横に振った。



「ギガマキ先輩は関係ない。たぶん、向こうは俺の事、知らねえだろうし」



 アイビスの人数は、50人前後。その人数を前に、鵺咫路は余裕を崩さない。



「はっ。かんけーない?

 かんけーねえって? ……バカにしてんのか、てめぇ」



 だが、どうにもよろしくない。よろしくない反応だ、これは。



「【あいびす】嘗めてんのか」



 それまでは……────虎太郎は、柔らかな。ともすれば、緩やかな空気を纏っていたのに。

 表情に、怒りの色はない。だが、明らかに空気が変わった。



「怒らせちまったか」



 鵺咫路の視線が、取り囲むアイビスのメンバー達の配置を視認していく。



「逃がさねえよ。ここまで暴れた人間を、逃がすわきゃねえだろ」



 虎太郎は、素早くそれを察知して、鵺咫路が逃走を図っていると考えた。

 だが、鵺咫路の答えは、虎太郎の怒りをさらに育てるもの。



「いやあ、さすがにこの人数の相手は厳しいなぁ」


「あ?」



 瞬間。

 パイプレンチを振り上げかけたが、それを理性で押し留める。



「……そうか。そうだな。

 この人数で現れたから、リンチされると警戒したか。そりゃこっちの不手際だわな」



 発火寸前。


 だが、虎太郎の目に怒りがより濃く浮かぶ。もはや、空気云々ではない。

 キレかけているのだ。



「安心しろよ、羅生門」



 鵺咫路の名前を知らぬ虎太郎は、彼をそう呼ぶ。

 どうせ、大した付き合いになるわけではないのだろうから。



「大人数で来たのは、万が一、お前にこれ以上、逃げられねえ為だ」



 学生地区は渡り鳥の鳥籠。

 そして、その鳥籠の王者が暴れ出さぬ為の檻。



「【あいびす】が頭領、風間 虎太郎」



 名乗り。

 王者は、爪を構えた。パイプレンチとモンキーレンチだが。



「…………下がってて、斎藤さん」


「鵺くん、気を付けて。彼、そうとう強い」



 対して、鵺咫路は両手を開き構える。斎藤は、虎太郎の纏う雰囲気だけで彼が手練れであると、断言した。

 「なるほど、強敵だな」と。薄く、鵺咫路は笑みを浮かべた。



「羅生門高校2年、探偵見習い。

 十月 鵺咫路」


「?」



 鵺咫路の名乗りに、虎太郎の怒りの中に混じる、一瞬の空白。

 何故、探偵がそこに出てくるのか。虎太郎としては、意味が分からなかった。

 羅生門高校の生徒が暴れていて、それが、アイビスのメンバーだけでは、手がつけられない。だから、自分が出張ってきたというのに。

 鵺咫路の口から、探偵という言葉が出てきたのは、本当に意味が分からない。しかし、まあ。

 男同士、すでに拳は握られた。引っ込みがつかないとも云うが。



「ケジメっつーの? ま、大事なんだわ」


「やんなきゃ納得しねえんでしょ? なら、やるしかねぇな」



 互いに、軽口を吐いて。


 鵺と虎が、ぶつかり合う。


 

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