第4話「死神」
明けましておめでとうございます!
「なるほど?」
何も出来なかった。
何も。
何一つ。
何もさせてくれなかった。
「なるほどなあ」
何もさせてもらえないまま。
鵺咫路は、獣噛に負けた。
完敗である。
「なるほどねえ」
強い。
というか。
巧い。
立ち回り。
読み合い。
差し合い。
「なるほどお」
それが。
獣噛は何枚も鵺咫路よりも上手だった。だから、鵺咫路は獣噛のフェイントに引っ掛かり。
防御は崩され。回避は逆手に取られ。
攻撃は潰された。
「呆れた耐久性能でしたわよ。まさか、地下闘技場の王者が、新人ファイターをKOし損ねてしまうだなんて」
スマホで鵺咫路の試合を見せた孤山が、心底呆れ果てた様子で云う。
試合は、鵺咫路の負けだ。それは、揺るがない。
鵺咫路の快進撃である連勝記録は、9で止まり、彼はふりだしに戻ってしまったわけだ。
しかし。
当の本人は、ピンピンしているではないか。そして、何度も先程の負け試合を繰り返し見ている。
「相手が誰だか、本当にお分かりでして?」
スマホに集中したいのか。鵺咫路がかったるそうに、孤山へと顔を向けた。
「もう何度も聞いたって。ショヴスリ・ダンジョンの地下闘技場最強なんだろ?
ムルシエラゴの代表で、【百獣の王】って他所からは呼ばれ、リングネームは【地下闘技場の死神】…………覚えたよ」
「いえ。……いえ、覚えてるか確かめたかったわけじゃありませんでしたわ」
あんなに殴られ蹴られ投げられて。それでも、立ち上がり続けたのだ。
獣噛が、新人ファイターに手加減なんて手心を加える様なタイプでなし。そもそも、死神に心なんて、あるものかとすら思っているくらいなのだ。
孤山から見た、獣噛は、そんなもの。その獣噛が、倒し切れなかった。
ルールの中で拾った勝利。果たして、獣噛が、それに満足しただろうか。
死神の表情は、分からない。ただ、獣噛は一言。
『またな』
とだけ。
十分だろう。
狩り甲斐のある新しい獲物の登場に、死神はきっと笑っていた。
こじゃれたカフェテラスにて。
男子と女子の組み合わせ。
……だと云うのに。
「全く。失礼な話ですわよ」
世間的にお嬢様の部類にばっちり該当する孤山をろくに見もせずに、鵺咫路はもう何度目になるかも分からない録画の再生をタップするのであった。
今年もよろしくお願いします!
話数とタイトルは偶然です(きいてない)




