第93話 一時間くらい前だ、そこからずっと涼乃を探してる
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「それで二人の間で一体何があったんだよ……?」
「最初はちょっとした意見のすれ違いだったんだ。それがだんだんとエスカレートして行って、気づいた時には涼乃を泣かせてた」
恐らくこんなことになってしまうなんて思ってもいなかったのだろう。いつもの兄貴であれば凉乃を泣かせるようなことはしないはずだ。
ここ最近の兄貴は完全に弱っており、普通なら絶対にしないようなミスを平気で連発しているようなので、意見のすれ違いになった際に勢い余って普段なら言わないようなことを言ってしまったのかもしれない。
「ちなみに涼乃と最後に電話していたのはいつ頃なんだ?」
「一時間くらい前だ、そこからずっと涼乃を探してる」
「……なるほど、それでも見つかっていないのか」
一時間前なら俺と夏乃さんが既に家にいたし、涼乃が帰ってきたのであれば間違いなく気付くはずだ。そのため、涼乃が一度家に帰ってきた可能性はまずないだろう。
夏乃さんと手分けしているとは言え、この街は広いため闇雲に探しても見つけられるとは思えない。涼乃が行きそうな場所に絞って探すのが最適解だろうが、それは既にやっているはずだ。
「兄貴のことだから涼乃が行きそうな場所はもう探してるとは思うけど、どこどこ行ったのか教えてもらってもいいか?」
「家の近くにある公園とよく行ってるゲームセンター、近所のペットショップ、涼乃のお気に入りのカフェにはいなかった」
「オッケー、とりあえず夏乃さんにも共有しておく」
俺は兄貴から聞いた情報を夏乃さんにもLIMEのメッセージで送る。先程はろくに会話もせずに家を飛び出してしまったが、兄貴が一度探した同じ場所を夏乃さんがまた行くのは効率が悪い。
だから当然の情報共有だ。普段なら夏乃さんが真っ先にそれに気付きそうだが、それが頭から抜けるほど動揺をしていたのだろう。
夏乃さんは涼乃に対して色々と厳しく言うこともあるが、それは完全に優しさの裏返しだからな。大好きな妹が泣いて音信不通になったと聞けば冷静さを失っても仕方がない。
「でも心当たりがある場所を探してもいないってことは、もしかして普段行かないような場所に行ってるのか……?」
「分からん、本当に手がかりが何もないんだ」
そう口にした兄貴の表情は相変わらずめちゃくちゃ暗かった。もし本当に普段行かないような場所に涼乃がいるなら探すのは凄まじく難航するだろう。
さっき兄貴は涼乃と仲が良い子には片っ端から連絡をしたと言っていたが、それでも見つかっていないということは友達の家にいる可能性についてはほとんどない。
兄貴が全く信用されていない人間であれば涼乃の友達から嘘をつかれている可能性も普通にあったが、俺に対しては横暴で尊大な態度を取っているものの、他人に対してはかなり誠実なタイプなので、そこに関しては心配無用だ。
ひとまず涼乃が行きそうな場所でまだ行っていない場所を探しては見るが、それでも見つからなかった場合は完全に運頼みになってしまう。
夏乃さんが向かった方向で涼乃を見つけてくれれば良いのだが、先程の情報共有のメッセージも既読だけついて返信が返ってくるような気配はないため、恐らく今も見つかっていないのだろう。
それからしばらく二人で涼乃がいそうな場所を探す俺達だったが、残念ながら事前に予想していた場所は全て空振りだった。
「……くそっ、ここもハズレか。結人は他に涼乃が行きそうな場所に心辺りはないか?」
「個人的には学校とかもあり得るかなとは一瞬思ったけど、わざわざ夏休み中に行くとはあんまり思えないんだよな」
「もし学校にいるなら部活中の誰かが見かけると思うし、涼乃を探してることは伝えてるから俺に連絡がくるはずだ」
兄貴が所属しているサッカー部は練習試合明けで今日は休みになっているらしいが、普通に今日も練習中の部活は多いことを考えると、夏休み中ではあるが学校にそこそこ人はいるはずだ。
それを考えると涼乃が学校にいる可能性もかなり低い。そんなことを考えながら兄貴と二人で歩いているうちに気付けば歓楽街のエリアに足を踏み入れていた。
夜のイメージの強い歓楽街だが日曜日ということもあって、まだ明るい時間帯であるにも関わらず人通りは結構多い。
俺達のような高校生はちょっと近付き難い場所だなと思っていると、少し離れた場所にいた人物の顔を見た俺は思わず声をあげる。
「えっ、涼乃!?」
俺がそう声をあげると兄貴も気付いたようでそちらに目を向けた。ようやく探していた涼乃が見つかったわけだが、それと同時にトラブルの予感もする。涼乃の隣にはめちゃくちゃガラの悪そうな男が立っていたのだ。
他の商業案件が一旦片付いたので本作の更新を最優先で進めます、3月と4月は高頻度で更新予定です!




