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第87話 私に呪われたら一生離れられなくなるかもね

 夏乃さんと一緒に誕生日プレゼントを選んでから数日が経過した。八月もそろそろ下旬であり今年の夏休みも後少しで終わりだ。

 来年は大学受験の年となっているため今年ほどゆっくりは出来ないだろう。そんな事を考えながら俺は机に向かって夏休み明けにある課題テストの勉強をしている。


「もしかしたら今回は兄貴に勝てるかもしれないけど、こんな勝ち方をしてもあんまり嬉しくはないんだよな……」


 早穂田大学のオープン以降兄貴はずっと不調だ。しばらく拗らせたていた夏風邪こそ治ったもののいまだに雰囲気はかなり暗い。

 夏乃さん経由で聞いた凉乃の話によると部活でも今までは考えられないようなミスを頻発しているのだとか。テストで勝つなら今が絶好のチャンスと言えるが、俺としては正々堂々と勝負して勝ちたいと思っている。


「……兄貴が今のままだと調子が狂うし、早くいつも通りに戻って欲しい」


 堂々としていてちょっと偉そうなくらいが兄貴らしいので今の弱々しい姿はマジで見ていられない。ただし、兄貴は昔から意外と打たれ弱いところがあるので立ち直るまではまだ時間がかかりそうな気はする。


「そう考えるとハイスペック過ぎるのも良い事ばかりとは言えないよな」


 今までの人生で数々の挫折や敗北などを経験してきた俺に対して、兄貴はそれが比べものにならないほど圧倒的に少ない。それもあってこういう事態になると立ち直るまで時間がかかってしまうのだ。

 その点同じように完璧超人に見える夏乃さんは過去に良すぎた容姿が原因でいじめられ、それを乗り越えた体験があるため兄貴よりも遥かに強い。


「ここ最近は凉乃ともギスギスしてるみたいだし……」


 夏乃さん曰く凉乃の表情もかなり暗いようだしこの傾向は良くないと思う。あまりにも二人の仲が悪化するようなら流石に俺や夏乃さんも間に入らざるを得ない。


「とにかく兄貴が何とか乗り越えてくれたら良いんだけど」


 俺はそう言葉を呟きながら数学の問題集を閉じて立ち上がる。勉強を始めてから長い時間が経ったためそろそろ休憩をするつもりだ。

 スマホと財布をポケットに突っ込んで家の外に出た俺は近所にある本屋を目指して歩き始める。面白そうな本がないか探しにいく予定だ。

 今日は朝から結構頑張って勉強をしたのだから息抜きをしてもバチは当たらないに違いない。母さんも家にいないし、適当にどこかで昼ごはんを食べてから帰ろう。

 それから本屋に到着した俺は漫画や情報雑誌、自己啓発本、ビジネス書など様々なジャンルの本を見ながら店内をうろうろし始める。大学は経済学部系を志望しているため金融系の本を読んで今から勉強するのもありかもしれない。


「結人がいつも読んでるエロ漫画が置いてあるコーナーはここじゃないよ」


「いやいや、俺がエロ漫画ばっかり読んでるような印象操作はしないでくださいよ……って、何でここにいるんですか!?」


 後ろを振り向くとそこには夏乃さんがいた。この前のショッピングモールの時もそうだったがいくら何でも夏乃さんとのエンカウント率が高すぎやしないだろうか。


「それは私達が運命の赤い糸で繋がってるからかな」


「ここまで来るともはや呪いな気すらするんですけど」


「私に呪われたら一生離れられなくなるかもね」


 某RPGゲームのピラミッドの奥で入手できる一歩動くだけでモンスターが出現する金色の呪われた武器を所持している時並のエンカウント率な気がする。


「冗談はさておき、結人は何をしてるの?」


「テスト勉強の息抜きでぶらぶらしに来たんですよ」


「そっか、もうすぐ夏休みも終わるもんね。私はまだしばらくは夏休みだからすっかり忘れてたよ」


「急にめちゃくちゃマウントを取ってきますね」


 夏乃さんが意地の悪そうな表情を浮かべている姿をみて俺はそうツッコミをいれた。大学によって長さは違うらしいが、早穂田大学は二ヶ月近くあるため後一ヶ月くらい夏乃さんの夏休みは続く。


「悔しかったら結人も早く大学に入ったら?」


「それが出来たら苦労はしませんよ」


 一応日本にも高校卒業前に大学に入学できる飛び入学制度というものが一部の大学で存在はしているらしいが、そんなものは異例中の異例だろう。だからどうあがいても後一年半ほどは高校生をしなくてはならない。

本話から第5章スタートです!

結構重要な章になる予定です〜

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