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第83話 何で俺はそこを見落としたんだろ

 その後もしばらく二人で色々な店を見て回ったが夏乃さんのお眼鏡にかなうものが中々見つからない。そのためプレゼント選びにはまだしばらく時間がかかりそうだ。


「そろそろお昼にしない?」


「そうですね、時間的にはちょうど良いですしそうしましょうか」


「オッケー、じゃあおすすめのところがあるんだけど」


「……もしかしてまたカップル限定とかじゃないでしょうね?」


「えー、何で分かったの?」


「夏乃さんの考えそうな事くらい分かります、今回はダメですから」


 俺がそう釘を指すと夏乃さんは残念そうな表情を浮かべた。どうやらまたやるつもりだったようだ。何度も同じ手に引っかかる俺では無い。結局今回は飲食店街にある回転寿司に入る事にした。


「結構混んでますね」


「うん、やっぱりお寿司は人気みたい」


 店内には子供から高齢者まで幅広い年齢層のお客さんが順番待ちをしておりかなり混雑している様子だ。やはり日本人のソールフードであるお寿司はどの世代からも人気らしい。その後しばらく待ってようやく席に案内された。


「ここは私が奢ってあげるから好きなだけ食べて良いよ」


「夏乃さんが奢ってくれるって何か怪しく感じるんですけど」


「何が怪しいの? 私的には優しい幼馴染のお姉さんが可愛い弟分に奢ってあげる心温まるシーンだと思うんだけど」


「だって前はこれで引っかけられましたからね」


 カップル限定パフェの時とシチュエーションが似ているのだから警戒するなという方が無理だろう。


「警戒し過ぎだって、そこまで言うならメニューを見てみたら?」


「……メニューを見た感じは特に問題なさそうですね」


「でしょ、だから結人が心配するような事なんて何もないって」


 いくら夏乃さんでもタブレットのメニューを偽装する事なんて出来るはずがないので流石に今回は大丈夫だろう。ひとまず俺はサーモンとはまち、鉄火巻きを注文した。


「結人って回転寿司に来たら絶対最初にサーモンを頼んでるよね」


「一番好きなネタですから、そういう夏乃さんだっていつも最初にまぐろを頼んでるじゃないですか」


「あっ、やっぱり結人も気付いてたんだ」


「夏乃さんとは何年も幼馴染をやってますからね」


 ちなみに兄貴や凉乃も同じように自分の好きなものを一番最初に頼む習性がある。夏乃さんや兄貴がハイスペック過ぎてあまり似ていないと思われがちな俺と凉乃だがその辺りを考えるとしっかり血は繋がっていると言えるだろう。

 それから俺達はそれぞれ注文しながらお寿司を食べ始める。俺も夏乃さんもそこまで大食いではないのでペースは割とゆっくりだ。

 もしこれが夏乃さんとではなく兄貴と一緒に来ていた場合は多分隣で凄まじい早さで皿が積み重なっていったに違いない。兄貴は大柄なだけあってよく食べるのだ。そんな事を考えながらタブレットでメニューを見ていると変わったものが目に飛び込んでくる。


「へー、コラボメニューとかあるんだ」


「そう言えば壁にもコラボポスターが貼られてるよね」


 どうやら最近流行っている鬼を駆逐する人気アニメとコラボをしているらしい。コラボメニューとして作中のキャラクターなどをモチーフにしたものが何種類か並んでいた。


「せっかくだし何か頼んでみたら?」


「そうですね、原作漫画は読んだ事あるので」


 俺は何も考えずに目に入ってきた太巻きを注文したわけだがすぐに後悔する事になる。レーンから流れてくるのではなく店員さんが直接席まで持ってきた太巻きは俺の想像よりも数倍は大きかった。


「いくらなんでも流石にこれはタブレットの画像と違いすぎやしません?」


「こんなに大きいなんて予想外だったね」


「てか、よくみたら普通の太巻きより値段が何倍も高いじゃん。何で俺はそこを見落としたんだろ」


 値段さえ見ていれば間違いなく普通の太巻きではない事に気付いていたはずなのに。そう言えばタブレットで注文をした時にちょうど値段の部分が夏乃さんの手で隠れていたような気がする。

 まさかとは思うが夏乃さんの策略だったりしないよな。そんな事を考えながらひとまず俺は目の前に置かれた太巻きを頬張り始める。

 割とお腹がいっぱいという事もあってこれを完食するのは中々厳しいと思う。だが注文した以上残すわけにはいかないと思い必死に食べていると夏乃さんがニヤニヤしながら口を開く。


「結人一人だと大変そうだし私も手伝ってあげるよ」


「!?」


 なんと夏乃さんは太巻きの反対側から食べ始めたのだ。しかもいつの間にか俺の後頭部に左手を添えており逃がさないという強い意思を感じる。

 そして夏乃さんは俺がモタモタしている間に凄まじいスピードで食べ進めておりいつの間にか顔と顔がもう少しで密着する寸前だ。俺は唇と唇が接触する寸前で何とか噛み切って下方向に回避した。


「あーあ、もう少しだったのに」


「もう少しだったのにじゃないですよ、一体何を考えてるんですか!?」


「結人ってラッキースケベとか好きそうじゃん、だからそれを叶えてあげようと思って」


「ラッキースケベの意味をもう一回調べ直してください」


 ラッキースケベは偶然起こるからラッキーなのであって今回の場合は意図的に引き起こそうとしていたのだから絶対に違う。ただ昼食をとるだけのつもりがまさかこんな特殊プレイに付き合わされる事になるとは思わなかった。

少し期間が空きましたが久々の更新です!

コミカライズ版は現在2話前半まで更新されていて、1月3日の12時に2話後半が更新予定なので下のリンクからお願いします!!

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