表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/89

第57話 だってほら、結人って私に虐められていつもめちゃくちゃ悦んでるじゃん

 シャイニングサンシティに到着した俺達は夏乃さんの希望でまずは水族館に来ていた。夏休みの真っ只中という事で館内は結構人が多い。俺達のような学生は勿論、家族連れやカップルなど様々な人達が訪れている様子だ。


「色々な種類の魚が泳いでるね、一体何種類くらいの魚がいるんだろう?」


 目の前の水槽の中にいる色とりどりでカラフルな魚を見た夏乃さんはそうつぶやいた。俺は近くにあった説明用のプレートを見て水槽の中を泳いでいる魚の名前を読み始める。


「カクレクマノミとレモンピール、コバルトスズメダイ、ナンヨウハギ……他にも色々いるみたいですね」


「あっ、結人。あっちにクラゲとサメがいるって」


「急に走ったら危ないですよ」


 夏乃さんはまるで子供のようにはしゃいでいた。見た目が完全に今どきギャルで一見すると怖そうに見える夏乃さんが嬉しそうに微笑む姿は周りから見たら恐らく凄まじくギャップがあるに違いない。

 しばらく二人で写真を撮りながらゆっくりと水族館を見て回っていると何かを見つけたらしい夏乃さんが高めのテンションで声をあげる。


「結人、見て見て。あそこにペンギンがいるよ」


「気持ち良さそうに泳いでますね」


 目の前にある水槽は正面から頭上にかけて広がっていて真横や真下から眺めることができ、さらに空も透けているためまるでペンギン達が飛んでいるように見えるのだ。

 ちなみに入り口で貰ったパンフレットによるとこのエリアは大空のペンギンという名前が付いていて、この水族館の中で一番人気の映えスポットらしい。

 現に周りにいるカップルや家族連れは水槽の中を自由気ままに泳いでいるペンギン達の写真をスマホで撮っていた。


「私達も水槽をバックにして二人で写真撮らない?」


「良いですね、せっかくなのでそうしましょう」


「よし、じゃあ早速撮ろうか」


 夏乃さんはスマホをインカメラにすると俺に体をくっつけてくる。密着した瞬間良い匂いがしてドキドキさせられた事は内緒だ。

 それから俺達はペンギンの水槽をバックに何枚か自撮りをしたわけだが、撮れた写真は空の上にいるようにも水中の中にいるようにも見えてかなり良い感じだった。


「想像してたよりも良い感じに撮れたね、SNSにアップしたらめちゃくちゃいいね貰えそう」


「分かってるとは思いますけどもし投稿するなら俺の顔はスタンプとかで隠してくださいよ」


 夏乃さんのSNSアカウントは凉乃や兄貴もフォローしているため俺が映っている写真をアップされると一緒に行った事がバレてしまう。

 まあ、二人とも俺と夏乃さんが最近よく一緒にあちこち遊びに行っている事には何となく気付いていそうな気はするが。そんな事を考えながら再び水族館の散策を再開する。


「へー、ドクターフィッシュって水族館にもいるんだ」


「水族館にいるイメージはなかったのでちょっと意外です」


「どんな感じか試してみようかな」


 そう言い終わった夏乃さんは水槽の中に右手を突っ込む。するとドクターフィッシュ達が夏乃さんの右手目掛けて集まり始める。

 ドクターフィッシュは水中に人間が手足などを入れるとその表面の古い角質を食べるために集まって来る人間にとっては有り難い魚で美容や健康にも色々と効果が有るらしい。


「聞いてた通り痛みとかは全くないね」


「まあ、ドクターフィッシュが痛かったりしたら大問題ですし」


 いくら美容や健康に良いとしてもその対価として痛みが伴うのであればそこまでしてやりたいとは絶対に思わない。恐らく多くの人が今の俺と同じように考えるはずだ。そう思っていると夏乃さんがニヤニヤしながら口を開く。


「結人はかなりドMだから痛くても喜んでやりそうって思うのは私だけ?」


「いやいや、全然ドMじゃないですよ。一体どこでそう判断したんですか?」


「だってほら、結人って私に虐められていつもめちゃくちゃ悦んでるじゃん」


「……前から思ってましたけど夏乃さんって本当ドSですよね」


 金髪ロングヘアとピアス、ギャルメイクによって気が強そうに見える夏乃さんから虐められるという行為は、そういう性癖を持っている人からめちゃくちゃ需要がありそうだ。

 その後も二人で水族館をあちこち回っていた俺達だったがお昼の時間帯になったため見るのを一時中断して館内にあるレストランへと移動する。

 レストランの中は混雑はしていたが席に余裕があったため特に待ち時間無く入る事ができた。まあ、混み具合を考えると実際に料理が出てくるまではそこそこ時間がかかりそうだが。

 メニュー表を見てそれぞれ食べたい物を注文した俺達はパンフレットをテーブルの上に広げて昼食後にどうするか話し始める。


「この後はイルカショーを見に行かない? 多分昼を食べ終えたくらいのタイミングでちょうど良い時間になりそうだしさ」


「そうですね、水族館と言えばイルカショーは定番ですしそうしましょうか」


「じゃあ決まりで」


 昼食を済ませた後は二人でイルカショーを見に行く事が決定した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ版1巻が発売されました!!
画像をクリックするとAmazonページに飛びます
html>

― 新着の感想 ―
[一言] 初コメントです! 初めて読んだ時に面白くて即座に★5つ入れました。 それが作者様にとっての手助け?応援?励み?どう表現すればいいのか分かりませんが、えーと、そう、今後の執筆に対するモチベーシ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ