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神と人の箱庭  作者: 紫暗
8/11

当日の朝

本を購入し街へと繰り出した一家。

生活雑貨や調味料などを見て、帰る際に購入するものを検討した。

そして一家は宿へと戻り、一日を終えたのだった。


次の日。


適性の儀の当日がやってきた。

朝からネディスは興奮し、元気であった。

朝食のため、食堂へと降りていった。


「おじさん!おはようございます。」


「おう、おはようさん。今日はいよいよ適性の儀だなぁ。ほれ朝飯だぞ。」


そういいながら朝食のトレーを渡す。品目は黒パンとスープ、それに肉と野菜の煮物の三品だ。


「パンはお代わりできるから、足りなかったら行ってくれよ。」


調理場へと戻っていった。ネディスは初めての外食にうきうきだ。

黒パンは、保存期間を長くするため、焼成の時間を長めに取り、固く焼き上げたものだ。そのままだと外皮が固く口腔内を傷つけてしまうため、スープなどに浸して食べる。しかし、この宿の黒パンはすでにスライスカットされており、外皮も切り取られているようだ。試しにそのままかじってみると、ほのかに肉とガーリックの香りが鼻腔を突き抜ける。

どうやら表面に牛脂らしきものとガーリックを刷り込んでいたようだ。朝から力強い食事のようだ。


「ふふん。どうだ。うちの飯は他の宿よりひと手間加えることで、味に差をつけているのさ。」


「ちなみに切り取った黒パンの外皮は小さく切って揚げ、スープに入れてあるぜ。」


馴染みのある言い方だと、クルトンのようなものに加工してあるらしい。うまい。


ひとしきりパンを堪能した後、スープへと手を伸ばす。

スープはビーフシチューのようなものらしい。スプーンで口に運ぶと、肉の旨味と野菜の仄かな甘みが広がっていく。これはコンソメスープか?野菜の香ばしい香りが強い。

どうやらベースはコンソメスープであり、そこに濃い目のデミグラスソースを混ぜているらしい。聞いたところ、デミグラスソースは夕食の肉のソースとして使っていたものを煮詰めたらしい。

朝には少し重たいかもしれないほどのがっつりとした味付け。この世界では朝にしっかりと食べることが主流であるため、人気が出ることは間違いないだろう。

とても美味である。


最後にメインディッシュとでも言いたげな煮物に着手しよう。

野菜と肉の煮物。肉はホロホロに煮込まれ、スプーンで簡単に切れた。口に運ぶと動物的な旨味がじゅわりと広がる。スープの中で一緒に煮込んだらしい味付けで、ガツンと力強い。だがしかし、なんだこの優しい酸味は。

肉を頬張りながら、皿の上を観察する。

これだ。皿の一部に盛ってある赤いソース。これが正体か。少し掬い、なめてみるとトマトソースらしい。新鮮なトマトよりも遥かに酸味が強く、粘度も高い。これが肉と絡み合って美味い。

そしてサイドメニューの如く居座っている野菜。

こちらは肉程しっかりと煮込まれていないのか。わずかにシャキシャキとした繊維質を感じ取ることができる食感。それでいて煮物としての味付けがしっかりとある。ともに煮込まれた肉の旨味を吸収し、さらにおいしくなっている。

ふと、思いつく。先ほど肉に着けたトマトソース。これを野菜につけるとうまいのでは?と。

衝動のままに野菜につけ、口に運ぶ。

……うまい。肉と比較して主張が弱かった野菜たちが、一気に主役に駆けあがった。トマトソースと絡み合うことで野菜の旨味がさらに強調される。

この煮物は肉がメインで野菜がサブなどではない。

肉と野菜のツートップなのだ、とそう確信した。


一心不乱に手を動かし、気が付けば目の前の皿は空っぽになっていた。


「ごちそうさまでした!」


ネディスの初めての外食。大満足である。


さて、今日はこれからが本番だ。

適性の儀が行われる教会へと一家はやってきた。


教会にはすでに多くの家族が集まり、皆開始の時間を待っている。

ネディスたちはその集団と同じように、時間まで待機していた。


朝の鐘が鳴り響く。

教会の扉が開かれ、一人の牧師が現れた。


「おはようございます。本日も神のご加護がありますように。」


「お待たせいたしました。ただいまより、適性の儀の受付を開始いたします。」


「私たちも行こうか。今回は人数が多いみたいだから、時間がかかるだろうけど、気長に待とう。」


そういい、私たちは中に入っていく。


教会に入ると、まず目に入ったのは、太陽の光に照らされた壮大な絵画だった。

一人の女性らしき姿の天使が羽根を広げ、天へと飛び立っていくシーンのようだ。

色彩もふんだんに使われた絵画で、今まで見たことのないほどの精巧な絵に圧倒される。


ネディスが放心している間に、父に手を引かれ、受付に連れていかれる。


「いらっしゃいませ。適性の儀ですね?」


「ええ。お願いします。」


「かしこまりました。では、所属を確認しますので、村名と一家の代表のお名前をお願いします。」


「ヴェリティス村のラエフェです。」


父が答えると、受付の修道女は何かの魔法を使う。

すると、机に置かれた一冊の本のようなものが、ひとりでに捲れていき、そしてある一文が光った。


「確認いたしました。ラエフェ様のご子息、ネディスさんですね。認証が完了しましたので、先の待合室でお待ちください。」


不思議な現象に戸惑いながら、導かれるままに奥に入っていく。

そして父に質問をした。


「父さん。さっきのあれって何だったの?」


「あれはな、検索の魔法だよ。あの本には領内の出生についての情報が書かれていて、その中から指定した文言を探し出すんだ。」


便利なんだ。と父は答える。

この領内では、その地域で暮らす人々の所属を登録することで、人口管理や税金徴収の格差をなくそうとしている。その際に収集した情報を流用し、適性の儀にも活用しているのだ。

所属が記載されている人は、ここでの適性の儀を無料で受けることができる。

ちなみに、記載されていない人であっても、一定の代金を支払えば受けることは可能である。


そうしている間にも、次々と適性の儀が進んでいく。

時折ざわめくような声が聞こえるが、それは出現した適性が特殊なものだった際のものだろう。


「それではラエフェ様。奥へどうぞ。」


いよいよネディスの順番がやってきた。

一家は先導され、教会の奥へと進んでいった。

多くの方に拙作を閲覧していただいているようで、感謝の気持ちで爆散しそうです。

まだまだ拙いため、お手数ですがもしよければ感想、文章についてのアドバイスなどいただけましたら幸いです。

本当にありがとうございます。

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