召し1
F長老が転勤になったころには、私は日曜日休みのバイトに変わっていた。
なので、宣教師のレッスンがなくても、日曜日に教会へ行ってレッスンを受けることができた。
第3話で説明したように、聖餐会が終わると日曜学校、日曜学校の次に神権会・扶助協会と2時間もレッスンがある。(現在では第1、第3日曜日が日曜学校、第2、第4日曜日が神権会・扶助協会とレッスンは1時間となった。)
さて、教会にはいろいろな組織(神権会とか)があるが、それぞれ会長と会長会が存在する。
例えば支部会長会、支部会長が支部の責任者だが、その下に顧問としてふたりの兄弟が選ばれ、書記としてひとりの兄弟が選ばれる。この兄弟たち4人が支部会長会と呼ばれる。
下と書いたが、実際教会の物事を決めるときはこの支部会長会が話し合い、全員の意見が一致したときに決定される。
このような会長会が組織ごとにあり、みんな教会員の中から選ばれる。もちろんボランティアである。このような役職を「召し」と呼ぶ。
私が初めて受けた召しは「図書委員」である。
何をするかというと、支部会長から頼まれた教会の本を注文したり、また教会には月刊の雑誌も存在しているのだが、その注文の仕方をを知らない会員に教えたりする。
これを半年くらいして、次に召されたのは初等協会の教師の召しだ。
初等協会とは、3歳から12歳までの子どもたちが所属する組織である。この支部には3歳の男の子と12歳の女の子しかいなかった。
子どもなので、自分の意思で教会に来る子はあまりいない。大抵は親が教会員のため連れて来られる。
私はそんな、連れて来られていた12歳の女の子にレッスンをすることになった。
この子と私はその後、彼女が高校を卒業するまでなんだかんだ関わりを持つことになる。
12歳の女の子、あいかちゃん(仮名)との初めてのレッスンは、たしか新約聖書の一部分だったと思う。ちゃんと教師用のテキストがあって、それを読んで準備した。
私はまず、レッスンをきちんとするよりもあいかちゃんと仲良くなろうと思った。F長老がレッスンよりも世間話を優先する人で、そのおかげで話しやすくなったのだからそれに倣おうと思ったのだ。
そして、このあいかちゃんなのだが教会が嫌いらしく、初等協会の会長さんからそのように聞いていたので、レッスンはすぐ終わるようなものにした。
でも、教会が嫌いなのに連れて来られるなんてどうなんだろう。
私の家庭では信仰は個人の自由という考えだったので、あまりいい気持ちはしなかった。
それに、教会の聖典に強制はよくないこと、と書いてあるのだ。しかし、実際は嫌がる子を無理やり教会に連れてくる親は結構いる。
とにかく、私はあいかちゃんと仲良くなろうと努めた。アニメ好きという共通点があったため、割りと仲良くなれた。(気がする)