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結論


 「ヤ、ヤンデレがすきぃ?」


 千紘はフラれた理由を説明されると身構えていたのにも関わらず、いきなり向けられた好意に困惑しつつ、耳を真っ赤にしていた。


 「あの包丁を持って迫ってくる気迫も、俺の全てを独占したいって言う独占欲も、二人で死のうって言う行動力も全部最高! 特にあの虚な瞳! あれを向けられたときは、ゾクゾクしたね!」


 「え、ええ」


 いや、まて千紘。お前が引くのは許されないぞ?お前はまがいなりにも、嫉妬でお兄ちゃんを滅多刺しにしたヤバイ奴なんだからな?


 「ヤンデレなんて現実であったらダルいだけだと思ってたけど、千紘みたいな可愛い妹に詰め寄られるともう何でもされてしまいそうだ」


「ええ、、、」


 いや、だから千紘お前に引く権利は無いんだぞ?


 しかし、千紘は引いて冷静になったのか俺の言動が矛盾していることに気付いた。


 「だ、だったらいいじゃん!!私と付き合っても」


 俺は悲しげな表情で告げる。






 「ダメなんだ。俺には好きな人がいる」






 「は?」




 「恐らく俺の片思いだ。それでもその人から答えを聞くまで、俺は自分の気持ちに嘘をつきたくない」


 バンッッ!


 千紘がベッドを叩いていて立ち上がる。その形相から見るに怒りは現在、最高潮のようだ。


 「ありえない! 私と言う存在が居ながら他の人が好きだなんて!!」


 千紘の瞳から愛憎が涙となって溢れ出す。その涙はやけに粘性を帯びた物に見えた。


 「そいつ誰?もしかして()()()?」


 「それは言えない。だってお前、言ったらその人のこと殺そうとするだろ?」


 「当たりまえじゃぁん?」


 だと思った。


 「まって、頭が追いつかないよ。お兄ちゃん。要するに、お兄ちゃんには好きな人がいるけど今日の私を見て気持ちが揺らいでるってこと?」


 「ああ、そうだ」


 「で、結局お兄ちゃんはどうしたいの?」


 我ながら情けないとは分かっている。分かっているが、、、


 「ま、待って欲しい・・・・・・・」


 千紘が絶句する。


 「は? それって、そいつの返事がわかるまで私をキープするって事だよね?」


 「まぁ、そう言う言い方もあるな」


 次の瞬間、千紘は物凄い速さで両手で俺の首を掴み、親指で喉仏をゴリゴリと弄る。


 「お兄ちゃんはさ?もう一回死にたいの?」


 あの、虚な瞳が向けられる。正直、ゾクゾクしているが、今は興奮している場合では無いだろう。


 「ま、待ってくれ千紘」


 必死に抵抗するが凄いパワーだ。吸血鬼は普通人間よりも運動能力は高いはずなのに、何故が押し負けてしまう。ヤンデレってみんなそうなのか?千紘がおかしいのか?


 「うっさい!クズ兄!もっぺん死ね!・・・・・・って言いたいところだけど」


 以外にも千紘は俺の首から手を離した。


 「今日はもうあんなに刺したし、勘弁してあげる。何回殺しても死なないんじゃ意味ないしね。それにね、お兄ちゃん。私、分かったの」


 「何がだ?」


 「私がそいつなんか目じゃないくらい魅力的になってお兄ちゃんを誘惑すればいいんだよ」


 「え?」


 「お兄ちゃんが返事を待ってられなくなるくらい、虜にしてあげる! ね。それならいいでしょ」


 なんか、正直全然耐えられる気がしないので良くないのだが、これすらも拒絶してしまったら、今度こそ何をされるか分からないのでここは大人しく従っておこう。


 「わかった。それでいいよ」


こうして俺と千紘の話し合いは落ち着く所に落ち着いたのだった。


 「よし!じゃあ、早速・・・」


 何が早速なのか分からないが、取り敢えずリビングに行こうと思う。俺達は片付けをしていて何も食べていない。晩ご飯にしよう。


 が、俺が部屋を出ようとすると千紘がそれを遮った。


 「お、なんだ?千紘?まだ何かあるか?」


 「お兄ちゃん。話してたらなんか喉が渇かない?」


 「ん? そうだな。だからリビングに、、、」


 そう俺が言いかけた直後に千紘は着ていた服をはだけさせ、首をカクンと右に倒し、首筋とうなじを強調する。


 「私で、()()()()()()

 

 「お、おい千紘。マジでやめろ」


 ヤバい。血も見ていないのにこんなに吸血衝動に駆られたのは初めてだ。


 「でもちゃんと約束は守って血は見せてないよ?」


 口の中で犬歯が鋭く形状を変え、目が熱くなるのを感じる。恐らく赤眼になり始めているのだろう。完全に吸血鬼化が始まっている。


 俺は耐えきれなくなりそうだったので急いで千紘を押し除け、リビングへ向かう。


 到着すると俺は冷蔵庫を開け、トマトジュースをガブ飲みした。ゆっくりと赤を凝視しながら。


 トマトジュースはたまに欲求を誤魔化す時に使う、月の最後の限界の時期には効果は薄いが、こう言う突発的な衝動には以外と効く。


 すると千紘が、やって来て俺の耳元で囁く。


 「そんなに私の血が飲みたかったんだ? 最初からそんなじゃ、先が思いやられるね? お兄ちゃん」


 「おん」


 もう、俺は強がりが言えないくらい普通に弱気になっていたのだった。


 「それとさ、お兄ちゃんの好きな人が()()()なのかは知らないけど、、、」


 先ほどからあの女呼ばわりされている結月。少しかわいそうだ。


 「その前に千紘。結月をあの女呼ばわりするのはやめろ! あいつは俺の大切な友達で幼馴染みだ。お前だって小学生の頃は一緒に遊んでただろ?」


 「わかった」


 今回は、流石に失礼だと思ったのか素直に反省する千紘だった。


 「でもさ、結月ちゃん、絶対お兄ちゃんの事狙ってるし!、なんかヤバい雰囲気感じるから気をつけてね?」


 いやいや、あなた人のこと言える立場じゃないでしょうが。


 「ヤバいってどう言うことだ?結月は男子人気も高い、クラスの人気者だぞ?そんな風に言われるような奴じゃないと思うが」


 結月は俺の唯一の友達で、幼馴染みだ。俺は彼女を信頼している。


「でもさぁーなんか、私とおんなじ匂いがするんだよねー?」


 









 かつてこれほど不安を煽る言葉があっただろうか?




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