黒エルフさんは寝たいんです
この作品にアクセスしていただきありがとうございます!
執筆初心者なので読みにくかったり、わかりにくい表現があるかと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
誤字報告や御意見、御感想お待ちしております。
「だからあーなってこーなって、しかもそーなったんだよ!」
「・・・・・あぁ」
「でね!そっからバーってなって!とわぁーって感じ!」
「・・・・・そっか」
「あ、聞いてないな~?でもいい!それでもいい!ウチは喋る!ひたすら喋るそれがウチ!そう!それがウチだから!!」
「・・・・・うん」
「よし!聞いてないね!これ!んでね!とわぁーって感じになったあとなんだけどね!しょわーってなって・・・・が、ガーってなって・・・ね・・・?」
「・・・・・ハァ」
「ため息!?遂にため息!?やめて!!ウチ泣くよ!笑わせようとしてるのに無表情でテキトーな相槌されて泣きそうなんだよ!?」
「泣け。いや、やっぱ泣くな。更にうっさくなる。あと寝かせろ」
「やだ!ウチは眠くないもん!!」
「オマエ、オキテル。ワタシ、ネル。ゼンブ、カイケツ」
「それだとウチが寂しいじゃん!」
「オマエ、シヌ。ワタシ、ネル。サイコー」
「最悪だよ!?」
現在、深夜4時。
草木ですら眠ると言われる時間だと言うのに、眠ることが出来ていない黒エルフの少女がそこにいた。
彼女の目は既にほぼ閉じており、今にも寝そうな状態だ。
仕事が終わり帰宅したのは夜の8時頃。
食事や入浴等の時間はあったものの、仕事の疲れや起きていた時間を考えると無理もない状態だ。
そんな彼女は時折船をこぎながら、その重たそうな瞼を持ち上げてはいるのだが、焦点の合っていないであろう瞳が見えるだけである。
そして遂に限界が訪れたのだろう。
首がカクンと落ちたのを最後に、彼女は目を開くことをやめた・・・のだが。
「ちょっ!?だから寂しいって言ってるじゃん!ーー目覚めよ!睡眠阻害魔法!」
「・・・・・まじでふざけんな」
残念ながら、夢の世界への扉は同居人である白エルフの少女によって閉ざされてしまった。
それも一人で起きているのが寂しいと言う、身勝手な理由で、だ。巻き込まれた方はたまったものではない。
「これで何度目だ!?アンチスリプなんて眠気を無くすだけで疲れはそのままなんだぞ!!あれか!私は締め切りに追われる作家か何かか!?」
「さっき寝かせてあげたじゃん!」
「いいか?5分とか10分なんてな睡眠とは言わん。私としては仮眠とすら言いたくないレベルだからな?」
「12分23秒も寝かせてあげたのに!?」
「最低でも30倍した時間寝かせろ。いや、まじで」
「そんなに寝たら死んじゃうよ!ウチが!」
「ウサギですら一羽で生きて行けると言うのにお前はウサギ未満か!」
この二人のやりとりは今日が初めてではない。
同居し始めた頃、つい一ヶ月前程からだ。
・・・・・それもほぼ毎日。
黒エルフの少女、クロナが最後にまともな睡眠を取ったのは5日前。
明日はせっかくの休日。
しかも、事情を知る上司や同僚から「寝てきなさい」とお叱りのような気遣いを受け、ありがたくも押し付けられた連休である。
可能であるならば今すぐに、自然と目が覚める時まで眠りたいところだ。
「頼む。頼むから寝かせてくれ・・・このままだと私が死ぬ。過労で死ぬぅ・・・」
「やだ!寝るのも死ぬのもダメ!!私が寝るまで起きてて!!」
「昼過ぎまで起きてろと!?」
クロナは眠りたいのだ。切実に。
しかし昼夜逆転生活を送る白エルフの少女、シロナが寝かせてくれない。
寝たい黒エルフと、寝かせたくない白エルフ。
色々と正反対な二人は今日も対立する。
「ねーかーせーろー・・・・・・たーのーむー・・・・・」
「いーやーだー!アンチスリプ!!アンチスリプ!アンチスリプぅぅぅぅぅっ!!!!!」
シロナの妨害により、クロナが寝ることが出来たのはお昼どころか日の沈みかける頃になってからだった。