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09 大公国『ハルトリア』へ


「きゅいーんっきゃんきゃん」

「うふふ。あなた随分と賢いのね、きちんと私が新しい飼い主だって認識して。街中でもちゃんと歩けてる」

「くいーんっ」


 雑踏にも関わらず、リードをつけなくてもちょこちょことティアラの後をついてくるポメは、さすがは元レンタル幻獣である。使い魔ショップで揃えた首輪もよく似合っていて、ティアラは満足していた。


「もしかすると、列車に乗るかもしれないの。けれど、まだ決意がつかなくて……」

「くーん」

「けど、お金には限りがあるし、この国の治安は、お世辞にも良いとは言えないわ。どうせ、明日にはこの国を出なければいけないのなら、やっぱりあの人と……」


 暮れてしまった夕陽とは対照的に、少しずつ絶望の気持ちが晴れて、ティアラは前向きだった。順調にポメを手に入れ、偶然の厚意により列車のプラチナチケットまで手に入れたから、安心しきっていたのだ。


 夜の街灯が、ポツポツと灯り始める。そろそろ駅に向かわなければ、ジルとの待ち合わせに間に合わない。


 ティアラが隣国行きの列車に乗り込むために、駅の方向へと進路を変えたその時だった。


「えっっ?」


 グイッと何かのチカラにより、ティアラの目の前の景色は一転して暗がりへ。突然、ストリートの隙間道に引き込まれたティアラは、叩きつけられるように転げる。


「う〜っ! きゃんっきゃんっ」


 ポメが幻獣らしく必死に威嚇するが、魔力を失っているポメに暗殺者が倒せるようには思えない。


「元聖女、ティアラ様ですね。あなたの命……もらいにきました」


 全身黒づくめの男は、鋭いナイフを取り出し、ティアラの命を奪う宣言をした。


(魔法さえ使えれば……ダメだわ。強く、祈りを込めても発動しない。万事休す……か)


 ティアラが命の終わりを覚悟してギュッと目を瞑ると、『ドォンッ!』と、銃声が鳴り暗殺者が倒れた。


 プラチナチケットをティアラにくれたガンナー『ジル・ハルト』が、暗殺者を撃ったのだ。


 パタン……と倒れ込む暗殺者に驚き、座り込むティアラ。ジルはティアラに手を差し伸べて、余裕の表情で笑った。


「殺してはいない。安心しろよ、麻酔銃だ。さてと、このまま列車に乗って出発だ。隣国……つまり、オレの領地である『大公国ハルトリア』へ」


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