表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/87

04 彼女を見守る謎の影


「あのっ、その幻獣。捨ててしまうのなら、私に譲ってはもらえないでしょうか?」


 自分と似た境遇の幻獣を前に、ティアラは考えるよりも早く、すぐに動いてしまった。ギルドの従業員に駆け寄り、子犬にしか見えない震える幻獣の引き取り手として申し出たのだ。


「えぇっ? 別に構わないけど、そいつはもう魔力が尽きているから、冒険の役にはさほど立たないぞ。ポメラニアンと大差ない大きさだし、犬みたいなもんだ」


 確かに、幻獣としての魔力の光を帯びていないその小さな生き物は、見た目はほとんどただの犬だった。実際に、魔法を使った攻撃が出来ない以上、ギルドとしては飼うことが出来ないのだろう。


「けれど、もともとは幻獣なのでしょう? 普通の子犬よりもはるかに丈夫なはず、ボディガード役として使いたいの」


 相手を納得させるには、若干苦しいかと思われた理由だが。ギルド従業員は、上から下まで厳しい目つきでティアラの【ワンピース型のローブ】という装備を見て『ジョブにつくなら薬師か、錬金術師ってところか』とポツリと呟く。

 実際には、最近まで聖女という特別な魔法職についていたけれど。一からスキルを覚えて再就職するなら、魔力依存度が低いその辺りのジョブを目指すことになるだろう。


「あんた、戦闘は? それとも、一般枠で旅するだけのか?」

「この国から出ていくことになっただけで、普通の旅よ。今のところ、モンスターと戦う予定はないわ」


 特に冒険者でもなさそうなティアラが、魔力の無い幻獣を飼いたいという願い。果たして、ギルド従業員の結論は?


 幻獣と仲良くなるために、ティアラはそっと手を差し出す。その時だった。


「くうーん」


 幻獣自ら、ティアラが差し出した手にお手をして、尻尾をふりふりと振り始めた。『この人に飼われたい』というアピールなんだろう。


「はぁ……仕方ねえな。戦うわけでもないんなら、いいけどよ」


「本当ですかっ! ふふっよろしくね、幻獣君っ」

「きゅいんっ」


 ティアラが幻獣を持ち上げると、見た目よりも軽くふわふわとしていてまるで綿菓子のようだった。



「へぇ。あれが、この精霊国トップ聖女ティアラね。いや、元・聖女か」


 聖女と小さな幻獣が心を通い合わせたその光景を、一人の男が静かに見守っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ