表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された聖女は幻獣と気ままな旅に出る  作者: 星里有乃
旅行記2 婚約者の家族と一緒に
29/87

07 新しい住まい、私達の部屋


 ハルトリア新都市中心地より車で数分ほどで、ジルやミリアが暮らす邸宅に到着した。小高い丘の上に建つお屋敷は、広い庭から内海を眺められる景観の良い場所だ。

 キラキラと輝く海の景色をこれからは、毎朝当たり前のように見ることが出来るのだろう。


「お帰りなさいませ、ジル様、ミリア様。初めましてティアラ様」

「ティアラ様のお部屋の準備も出来ておりますゆえ、荷物などはそちらの方へ。ペット様のケージやグッズも、今朝執事が電話で手配しまして準備済みです」


 車で門を潜り屋敷の玄関前で車が止まると、使用人達が並んで出迎えてくれる。


「ミリア様は、家庭教師の先生から出された宿題が溜まっておりますので。これからお勉強ですよ」

「そういえば、宿題いくつかそのままだったっけ。ジルお兄ちゃん、ティアラお姉ちゃん。夜の食事会でね」

「ミリアちゃん、また後でね」


 ティアラが今日からこの屋敷で住むことは、既に通達済みでメイドと爺やが個室まで案内してくれるという。


「じゃあ、オレは書斎で今週の仕事の書類に目を通さないといけないから、ティアラは休んでいてくれ。昼ご飯はそれぞれ個室で摂ることになるけど、夜は家族で食べるから」

「ええ。分かったわ、ジル。お仕事、無理しないで」



 * * *



 ティアラのために用意された部屋は、離れの二階にある二間続きの大きな洋室。小洒落た鏡台やデスク、テーブルとソファのセット、クローゼット、天蓋付きベッド、演奏用にアップライトピアノも。バスルーム完備で、基本的には自室で身支度が出来るようになっている。


 すぐ隣の部屋には、ジルとティアラが新婚生活を送るための寝室もあった。まだ婚約中ではあるが、既に新婚生活の準備が整っていて、少しだけ緊張してしまう。ポメのためのケージや容器も全てセット済みで、バルで休んでいる間に執事さんが準備を進めたことが窺われた。


「この離れはジル様が奥様を娶った時のために、予め作られたものなのですが。妹のミリア様が生まれたこともあり、なかなか花嫁選びが難航しておりまして。ティアラ様がお嫁に来てくださって、爺やはほっとしております」

「こんなに良い部屋がしばらく空いていたなんて、勿体無いわね。けど、他の女性が使っていた部屋に住むのも気が引けるし」


 王宮暮らしの時には、聖女ランクが上がるまでは個室が与えられず寄宿舎のような共同生活だった。その後は個室が与えられたものの、二年ほどで魔力を失ってしまった為、落ち着いた暮らしは幼少期以来である。


「今日のスケジュールは、夜にティアラ様の歓迎会を家の者で行う予定です。王宮の夜会のように国の来賓が来るわけではないので、平服で大丈夫ですよ。オススメのワンピースを出しておきますね」

「それと着替えのお洋服や下着は、昨日メイド達は買い付けてきまして、幾つかはクローゼットに準備がございます。化粧水や乳液、櫛や石鹸なども全て新しく準備致しました。安心してご自由にお使い下さい」

「ええ、シャワーを浴びたいところだったしさっそく使わせてもらうわ。案内、ありがとう」


 パタン……メイドと執事が静かにドアを閉めて退室すると、部屋はティアラとポメだけのプライベートな空間となった。大きな窓の向こうには、お茶を楽しむための屋外テラスやモニュメントが見える。

 お屋敷暮らしと言っても独立した離れを貰えたため、プライバシーが守られた生活になるだろう。ポメもようやく住まいが定まって嬉しいのか、自分のスペースとなるケージをクルクルと廻りながらチェック中だ。


「いっときはどうなることかと思ったけど、今後はここを拠点にして外へと出かけるのね。今日の予定はゆっくりとシャワーを浴びて、お祝い会をしてもらって……それから……」


 夕食を食べたらお風呂に入って眠るだけだが、そこでふとティアラは部屋の状況に気づく。


(今夜は自分の部屋とジルとの二人部屋……どちらで眠るのかしら?)



 一応はティアラ個人の個室も用意してもらったものの、寝室はどっちを使えば良いのか未定である。果たして今夜は一人部屋なのか、それともジルと同室なのか……。


 考えただけでティアラは思わず恥ずかしくなってしまい、ポメが不思議そうに見守る中、ソファでクッションを抱きしめながら赤い頬を隠すのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ