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追放された聖女は幻獣と気ままな旅に出る  作者: 星里有乃
旅行記2 婚約者の家族と一緒に
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04 朝食は甘いドルチェから


「ティアラとミリアは、先に席で待ってていいからな」

「はぁい! このワンちゃん、ポメって言うんだね。分かりやすくて可愛い」


 ミリアはすっかりポメを気に入った様子だが、さすがに幻獣とは気付いていないみたいだ。オープンテラスの席には、すでに犬連れで食事をする先客の姿。バスケットからポメを出してやると、チラチラと他の犬がポメを意識し始めた。


「きゃうん、きゃわわん」

 耳にピンクの水色のリボンをつけたトイプードルが、ポメに向けて何かを投げかけるように吠える。だが、ポメは然程相手にしてないのか、ジッと様子を見てお澄まし顔。


「ポメ、他のワンちゃんとも仲良くね」

「くいんっ」


 当たり前だよ、と言わんばかりに返事をするポメは、犬基準で言うと賢い小型犬に見えなくもない。実際のところ、ポメの種族はハルトリア鉱山地域から森林に生息する幻獣カーバンクルなのだが、周囲の犬達の様子からしても犬同士と思われているようだ。


「ポメって、偉いね。他のワンちゃんも最初は吠えてたのに、ポメを見習って大人しくなっちゃった」

「そ、そうね。ポメって身体は小さいけど、意外と中身は男らしいところがあるから」


 すっかりただの犬だと思い込んでいるミリアに、誤魔化しながらティアラはポメの威圧力の正体を説明する。このギルド施設を兼ねている飲食店という特殊な施設には、冒険者寄りの人々が多い。

 ポメが幻獣であることを説明するのは、冒険者達の目が気になってしまうのだ。幻獣として聖女として現役ならともかく、ポメもティアラも魔力を失っているため、クエストの類は今のところ出来ない。変に過去のスペックを明かさない方が、保身のためにも良いだろう。


「お待たせ、今朝のドルチェはクリームたっぷりだぜ。ハルトリア流の甘いブリオッシュ、ラズベリードーナツだ」

「わぁ! ピンク色のドーナツもあるねっ。これがラズベリー味なのかな」


 しばらくすると、ジル自らクリーム入りクロワッサンやドーナツ、エスプレッソのセットを持って席に戻ってきた。お店のサービスなのか炭酸水もついていて、食事を喉につまらせる心配もない。


 ミントの香りがするウェットシートで手を拭き清潔にしてから、ハルトリアのドルチェを実食。


「では、初めてのハルトリアでの朝食……頂きます。んっ……? 思ったよりずっと、甘いっ」

「だろ。この国のレディの朝食は、これが常識なんだぜ」


 そういうジルは、クールな見た目に似合わずクリーム入りクロワッサンとエスプレッソをスマートに食べていて、想像よりも甘い物に慣れているようだ。母国の朝食なのだから、当たり前だろうが。ジルの意外な一面を垣間見た気がして、ティアラは嬉しくなって思わずクスクスと笑い出した。


「ふふっ。ジルの意外な一面を見れて、何だか嬉しい。こうして、だんだんと家族になっていくのかしら?」

「そういうティアラも……ほれ、口元にクリームがついてるぞ!」


 ジルは長い指でティアラの口元についたクリームを優しく掬い取って、ペロッと自分の舌で舐めとった。まるで、間接キスか何かのような仕草に、ティアラは思わず顔を真っ赤にする。


 すると、二人のやりとりの一部始終を見守っていたオマセなミリアが一言。


「今日の朝食の一番甘いドルチェは、ジルお兄ちゃんとティアラさんの間接キッスで決まりだねっ」


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