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11 列車を導くスピカ


 ジルがボディガードをしてくれたおかげで、ティアラとポメは無事に隣国列車行きのターミナルに辿り着いた。


 他国への移動を目指す夜行列車は、移民を乗せるための臨時便も増えており、この国が解散に向かっているような気がした。


「取り敢えず、この国を出なきゃ安全はないからな。もしかすると、革命が起こるかもしれないんだ。特に元聖女のあんたは、うかうかしてられないぜ。早く乗車しよう」

「革命が……? 早くしないと、おいでポメ」

「くいーんっ」


 さすがに子犬ほどの小柄なポメが直接列車に乗るのは難しいので、ティアラがポメを使い魔用のカゴに入れて運ぶ事に。


 プラチナチケットの特別席は、ミニバーやベッド付きのオシャレな部屋となっていた。面積は狭いものの高級ホテルのような内装で、さすがは公爵御用達のプラチナルームだと感心する。


 ポメをカゴから出してやったのち、改めてティアラはジルにお礼を述べることにした。


「さっきは、助けてくれて本当にありがとう。あなたは、大公国ハルトリアの領主様なのよね。もしかすると、以前にお会いしたことが、あるのかも知れないけれど……」

「分かってるって。王宮から追放された時に、一部の記憶を消去されているんだろう。要人の顔やらデータやらが、外部に漏れないための対処法だよ」


 暗に、ジルとティアラが何度か会っていることを認める発言だ。現役聖女時代は、王太子のパートナーとして働いていたから、ジルとは親しくしなかっただろうが。


「そう。王宮から出ていく時に、手の甲にスタンプのようなものを押されたのよね。すぐに跡は、消えてしまったけど」

「それが、魔法道具を用いた記憶消去法だよ。あんただけじゃなく、そこの犬みたいな幻獣も戦闘履歴を消されているはずだ」

「ポメって、一応レンタル幻獣だったから。けど戦闘履歴って?」


 ふわふわした体毛とクリクリした瞳の可愛いポメが、激しい戦闘とはどうしても結びつかない。


「まぁ暗殺者には、感謝して欲しいもんだよ。そこのちっこい幻獣は、現役ならドラゴン並みの殺傷能力だ。あんな暗殺者、魔力なしでもひと噛みだったろうし」

「えぇっ? この可愛いポメが、そんな強いはずないじゃないっ。もうっ冗談きついわ。ねっポメ」

「きゅう〜ん」


 甘えるポメの頭を撫でてやると、ついに列車が走り出した。車窓からは『スピカ』と呼ばれる美しい星が見えて、この旅路に希望があることを示しているようだ。


 次第に遠ざかる祖国に、ティアラは寂しさを感じながら、新天地に思いを馳せることにした。


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