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10 王宮食事会


 ティアラが隣国行きの列車に乗るため駅へと向かっていた頃、近隣国の要人を集めて食事会が行われた。王太子マゼランスの『新たなパートナーとなるクロエ』を紹介するためだ。


「以前の聖女ティアラさんは退任となったため、このクロエが新たなパートナーとなります」

「元聖女ティアラに関しては、各国の要人に関する記憶は全て消去して、民間人になっています。国に関する重要事項が、漏れることはありませんので、御安心を」


 つい最近までは清廉な銀髪美人ティアラがいた席に、今は黒髪で勝気な印象の少女クロエがいる。ティアラの消去された記憶のように、この国はあらゆるものを消去しては別の何かに差し替えていくのだろう。


 最初は無難に会話が進んでいたが、ふとマゼランス王太子が子羊のステーキを切り分けていたナイフを止める。


「ところで、ジル・ハルトリア公爵は欠席なのですね。いえ、お仕事も忙しいようですし、昨日挨拶に来られたので別に構わないのですが。せっかく今宵は、ドレスアップしたクロエがいるのでね……」


 構わないが、自分の新しい女であるクロエと顔合わせしなかったのは、気に入らないという言い回しだ。


「申し訳ございません、マゼランス王太子。数日後には国の祭典を控えておりますので、ジル様は今宵の列車で帰らなくてはいけないのです。スケジュール的に、今回の食事会は難しかったかと」


 ジル・ハルトリア公爵の代理として出席している大臣が、王太子の癇に障らないようにフォローを入れる。大公国の公爵は、国王のような役割を果たしながらも、完全な王立制度の王太子に比べると些か自由な暮らしが出来る。


「ふぅん……羨ましいですな。大公国の公爵様は、いやジル様が自由人なのか」


 井の中の蛙のように、狭い場所でしか権威を振るえないマゼランス王太子からすると、ジル公爵のような自由人が気に入らないのだろう。


 そしてジル・ハルトリア公爵が、かつてパーティーの日に一目惚れしていたティアラに、プロポーズをする計画を立てていたとしても。あの自由な公爵にとっては、ごく当たり前のことなのである。


 例え、ティアラがジルの記憶を全て消されていても、ジルはそれすら恋の刺激に変えてしまうのだから。


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