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まにまにのほころび/あおあおさくら  作者: 藤泉都理
本編 に 双手腕之瞬
39/45

大文字の火




 神様に猶予を与えられて何年経っただろう。

 明確な期限は設けられはしなかった。

 待つと、言ってくださった。

 待つ、と。

 神様の言葉を疑っているわけではない。

 決して。

 ならば何故。

 焦燥が生まれるのか。

 はやくはやくと。

 泡儀と名乗る人物に出会ってしまったからか。

 泡儀の言葉を聞いてしまったからか。

 ゆえに。

 焦燥が生まれるのか。

 早くしなければ。

 早くあの岩を。故郷が封じられている岩を斬らなければ。

 あの岩が消滅する前に。

 それは、

 それはやはり神様の言葉を疑っているのではないか。

 神様は言ってくださったのだ。

 待つと。そう。

 それに。

 泡儀は言ったではないか。

 事を起こす前に必ず、自分の短刀を破壊しに来ると。

 信じられるのか。否。信じられるわけがない。

 竹蔵以外は全員。

 違う。神様も。神様も信じている。のだ。

 信じているから今は、岩を山ほど斬って、短刀を鍛える事だけを考えればいい。

 斬って、毀して、斬って、毀して、鍛えて、強くなって。




 雲を掴むようだと、どうして思ってしまうのだろう。


 岩を斬れるのかと、どうして疑念を抱いてしまうのだろう。




 覚悟を決めたのではなかったのか。

 竹蔵に命をくださいと言った時に揺らぎない覚悟を。

 決めた。けれど、

 実感がないのだ。

 強くなっている実感が。まるで。

 駆け走っている。景色は確かに変わっている。けれど足元を見れば一歩も進んでいない現実に気付く。現実に迫られる。

 このままずっと同じ事を繰り返していて叶えられるのか。

 神様は叶えられる、とは言ってくださらなかったではないか。

 待つとだけ。

 確かめたくなった。のかもしれない。

 どうしても。

 鍛える為の岩ではなく。

 故郷の岩を。






 どうして立ち止まってしまったのだろう。

 ずっと駆け走っていればよかったのに。

 ずっと駆け走ってさえいれば。

 疲れたなんて思いもしなかったのに。

 あの人たちに出会って、足を止めてさえいなければ。




 狭間で苦しむ事もなかったのに。






 海に行きたい。

 故郷が封じられている大岩が浮かぶ海に。

 早く斬って。

 終わらせたい。

 怖いのか。

 浮かぶ疑問に首肯する。

 きっと怖いのだ。

 止まったまま、終わらせてしまいそうな自分が。












(2023.2.17)





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