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神様の眷族と二人暮らし  作者: 春三
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俺とヨーコの日常

 日曜日の午後、スーパーに散歩がてら買い物に行って、油揚げを買った。それと言うのも、ヨーコが最近、コンビニのおいなりさんで満足しなくなったのだ。曰く。


「お揚げを甘辛く煮たおいなりさんが食べたいの。私はそんなに安い女じゃないんだからね」 だそうだ。

 安い女とか言う前に、狐なのにね。


 陽射しが柔らかく、春の風が吹き抜ける。川沿いの土手を、気持ち良く歩く。平和だなぁ。そんな良い気分の俺を、不機嫌にさせるヨーコ。


「ねぇ、さっきから黙って歩いて無気味なんだけど、何で遠回りして帰るの?早く帰ってお揚げさん煮てよ」


 さっきから無視して、自分の世界に浸っていたのに。何で付いてきたんだ。仕方なく土手を降りて、帰り道を探す。脇道に入り進むと、お寺に突き当たった。楼門の横に石碑があり、かなり古そうだ。


「ヨーコ、道を間違えた、戻ろう。」俺は踵を返して戻ろうとする。

「渡は、何か感じない?」

 ヨーコは古そうな石碑を見ながら聞いた。

「えっ、何が?」

「感じないなら良いわ、戻りましょう。」 ヨーコは何も言わず戻り始めた。なんだアイツ、人に聞いといて説明なしかよ。それから知ってる道を見つけて、アパートに着いたのは夕方。俺は油揚げを煮る為に、鍋を

 用意しながら、ヨーコに頼んだ。


「ヨーコ、風呂にお湯を張ってくれ。」

「解ったわ、お風呂は任せて、おいなりさんお願いね。」

 これで油揚げに集中出来る。鍋に火を掛け煮込んでいると、急に足が冷たくなった。

 床を見ると、風呂場から水が流れている。俺は火を消し、風呂場に入り蛇口を閉めた。すると溢れていたはずの水は浴槽の半分位しか溜まっていないし、床も濡れていない。狐に摘ままれたのか? そんな事を思っていると。


「狐じゃないわよ、渡は、さっきお寺で、昔に亡くなった力の強いお坊さんの気に触れたのよ」

「亡くなったお坊さんの気?」

「霊力と言ってもいいわ。亡くなったお坊さんは、昔川の氾濫で悩む人達の為に、あのお寺の場所で祈祷したのよ。川の氾濫は鎮まり、お坊さんは、お寺を建てそこに住んだの」俺は、ヨーコの話しを聞いて疑問が生まれた。


「でも、お坊さん亡くなってるんだろ、気とか霊力とか、ちょっと信じられないよ」


「人は亡くなった後、肉体は無くなるけど、魂は大気に漂ってるの。そして、時間を掛けて魂は少しづつ大気に溶けていく。あのお坊さんは亡くなって、普通なら魂は大気に溶けていくけど、魂の霊力が強くまだこの世界に漂ってる。渡は、その霊力に触れた、川の氾濫を鎮めた霊力にね」

「俺がお坊さんの霊力に触れたから、幻覚を見たのか」

「そうね、でも安心して良いわよ。触れた時間は短いから、もう幻覚を見る事はないわよ」


 そうか、お坊さんの霊力に触れた事が原因で、幻覚を見たのか。


「話しわ終わりよ、早くおいなりさん作ってちょうだい」


 もう少し、心が納得する時間が欲しいのに、俺はヨーコを睨み、鍋に火を掛けた。




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