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【ローズマリー営業日誌】
1月2日 執筆者:アリス
「お姉さま、誕生日おめでとうございます。」
「おめでとうですママ。」
「「主人おめでとう。」」
「みゃぉー。」
「ありがとう皆んな。」
今日は私の17歳の誕生日。
前の世界だと1月から4月1日までに生まれた子は、早生まれとか言われ学校での学年が違ったりするが、こちらの世界だと1月生まれから学年が変わってくる。
本来学園に通っていれば今年の春から高等部の2年生になっていたことだろう。
今ここにいるのはエリスと精霊達、他の皆んなは年明けの休暇を与えているのでこの場にはいない。
朝からエリスに頼まれ私の誕生日ケーキを一緒に作り、皆んなからお祝いをされているところだ。
「お姉さま、これは私とシロからのプレゼントです。」
そう言ってくれたのは花飾りのついた手作りのヘアピン。
あれ? これって……。
「ありがとうエリス、シロ。でもこれって何か魔力を感じるんだけれど。」
もらったヘアピンからなんらかの魔力を感じる、嫌な感じはしないから変なものじゃないと思うけど……結構強力な魔法がかかっている気がする……。
「よくわかんないけど、シロに光の魔法を掛けてもらったの。」
よくわかんないって。まぁ聖獣様の魔法だったら問題ない……どころかかなり貴重なものじゃないんだろうか?
「ママ、私からはこれを。」
リリーがくれたものは一つの苗。
「リリーありがとう。これは何の苗なの?」
「サクラの苗ですよママ。」
「桜!?」
この国には基本桜の木は生えていない。
東の島国パングージに生息するらしいが私は行ったことがないからね。
でもこの国の気候で育つのかしら?
「俺たちからはこれだ。」
「これだ。」
エン達からもらったのは
「大根?」
すこし形が悪いがどうみても大根だ。
「マンドレイクだ。」
「ブフッ!」
なななな、なんちゅうーもんを持って来るんだ!
「大丈夫なのこれ!?」
マンドレイク。マンドラゴラとも言われるが、その根は万能薬になるとか猛毒だとか色々言われている。
ただ、抜くときに根が悲鳴をあげるらしく、それを聞いた者は死んでしまうらしい。
「心配しなくても大丈夫だぜ。」
「だぜ。」
「どうもお騒がせしてすみません。マンドレイクのマンタです。」
「ブフッ! しゃ、喋った!?」
大根……じゃなかった、マンドレイクがいきなり話しかけてきた。ってこの子生きてるの!?
形が悪いと思っていたけどこれ手足だったのね。よく見れば目や口がついているわ。
「そらぁ、喋るに決まってるじゃねぇか。精霊なんだから。」
「なんだから。」
「へ? 精霊?」
「どうも、これでも土の精霊をやらせて頂いてます。」
なんだか腰の低い精霊ね。
「それで、どうしたらいいのかしら?」
正直この後どうしていいものか全く分からない。精霊契約でもすればいいのかしら?
「主人の好きなようにすればいいぜ、煮るなり焼くなり育てるなり。」
「食べれるかぁーー!!」
ぜはぁ、ぜはぁ。
マンタのつぶらな瞳が「ボク食べられちゃうの?」って見つめてくるのよ、食べれるわけ無いでしょうに!
「お姉さま、この子育てちゃダメ?」
「まぁ、そうするしか仕方が無いわね。」
エリスも心配してるし、このままって訳にはいかないからね。
はぁ、精霊って珍しい存在じゃなかったのかしら?
結局私とマンタは精霊契約をし、部屋の鉢植えで育てることになりました。
土に埋もれている方が楽なんだそうだ。
その後、二階にあるカーテン越しの窓辺から、日光浴を浴びながら鼻歌を歌う大根の姿が見えるようになったとか。
その正体は未だ誰も分からないと言う。




