第7話:深い闇
あれから俺はずっと滑っていた。そして、気が付けば辺りはオレンジ色に染まっていた。
…もう夕方か。
そろそろ終わりだな…
ピンポンパンポン♪
「東高等学校の生徒さん、夕食の時間なのでホテルに戻って来て下さい」
「南くん、帰ろうか?」
「…あぁ」
ホテルに戻る途中、北川と亮に会った。
「亮、滑れるようになったの?」
「あぁ、だいぶ滑れるようになったぜ!!」
「ほんとに? 雪乃どうなの?」
「うん。ちゃんと滑れてたよ」
「…ふーん」
そんな会話をしていたらレストランに着いていた。
「おい見ろよ!! うひゃー!! うまそうだぜ!!」
ホテルの食事はビュッフェ形式でかなり豪華だ。
「どれ食おうかなー!!」
亮がよだれを垂らしながら言った。
俺は適当に選んで1人で食うか…
「太陽くん、あの席で食べようよ」
「………」
「南くん。雪乃がそう言ってるんだから、あの席で食べるわよ」
どう言ってるんだ…
「…あぁ」
俺は北川達と食べることになった。
「もい!! ほのにくふぁいこうばぜ!!」
「食べるか、感想言うか、はっきりしなさいよ」
「静はいつもそういうのに厳しいんだよなー」
「静ちゃんと亮くんってほんとに仲良いよね」
「そりゃ幼なじみだからな!!」
幼なじみか…
「へぇ、だから仲良いんだ!」
「そういうこと!! にしてもここの料理うまいな!」
「そりゃうちのホテル自慢の料理だしね」
「はぁ!? お前ん家のホテルここにも建ってたのかよ!!」
「あら気づかなかったの?」
「亮くん、どういう意味?」
「静の親父はホテルを経営してんだよ。でも、どれだけあんだよ?」
「日本だけでも確か4つは経営してるわ」
日本だけでも?
…本当に正真正銘のお嬢様ってわけだ。
「すごいね。静ちゃんのお父さん」
「…っていうか太陽!! お前も話に参加しろよ!!」
「…もう食べ終わったから部屋に戻るよ」
「太陽くん待ってよ!!」
「?」
「みんなといっしょにしゃべろうよ。…そっちの方が楽しいでしょ?」
「俺は……」
北川は俺にいつも優しく気を遣ってくれる。
…やめてくれ!!
「疲れたし部屋に帰るよ」
あの時も最初はそうだったんだ…
だけど裏切られた。
俺は怖いのかもしれない…
昨日まで優しくしてくれた人が突然消えてしまうんじゃないかって…