第4話:歓迎会
授業が終わると俺の後ろに人集りが出来ていた。
「ねぇ、北川さんはクラブとか入るの?」
「雪乃って呼んでいい?」
「彼氏とかいんの?」
うっせぇな…静かに寝かしてくんねぇかな…
「そんな一気に聞かれても答えられないよ」
北川の声が聞こえる。
「ごめん。北川さん」
それからの休み時間、北川の周りに人がいないことはなかった。
………
……
…
放課後
「そうだ!! みんなで今から北川さんの歓迎会しにカラオケでも行こうぜ!!」
クラスの中心的人物の月島亮の声
「太陽くん、行く?」
北川からそう聞かれた。
「興味ないから行かない」
「はぁ…太陽、お前いつも家帰って何してんだよ!?」
亮が大きな声で言った。
「「どうでもいいだろ」」
声が重なった。
「そう言うと思った」
亮は笑いながら言った。
「だったら?」
「正直言うけど、クラスで浮いてるぜ? お前」
わかってる…
「だからさ…今日ぐらいは来いよ。たまにはクラスみんなで遊ぼうぜ」
「私も来てほしいな」
北川は亮の意見に賛成のようだ。
「……わかったよ」
クラスのみんなと、どこかに出かけるなんて、初めてだな。
………
……
…
「南くん、今日は珍しいね」
クラスの委員長でもある雨宮静が話しかけてきた。
「亮に無理矢理な…」
「亮はあれでも南くんのこと心配してるのよ。『太陽は絶対いいやつだ。今は何かあって心を閉ざしてるだけだ』っていつも言ってるわ」
「……」
「着いたぜ」
亮が言ってた駅前のカラオケだ。このカラオケは開店記念とのことで、今はタダみたいな値段だ。
「何名様ですか?」
店員が尋ねる。
「今日、集まったの何人だっけ?」
「待って数えるわ」
雨宮は迅速に数え始めた。
「15、16…16人よ」
「そんだけかよ…まぁ、いいか。今日は太陽も来たし」
「えーっと16人です」
「それでは12番の部屋になります」
ここのカラオケは新しく出来たっていうのがすぐわかるほど綺麗だった。
部屋に入って、まずそう思った。
「じゃあ一曲目は俺が歌うぜ」
亮がそう言って入れた曲は桑〇佳祐の波乗り〇ョニーだった。
季節外れだろ…
そう思ったがクラスのだれ一人言わなかった。
クラスのやつらが次々と歌っている。やっぱ上手いやつもいれば、音痴なやつもいた。
「次は北川さん歌えば?」
盛り上がったところで亮が言った。
「えぇ!? わたし!?」
そうは言っているが入れる曲を考えている。
「その次は太陽な」
「…やだ」
「けっ、ノリ悪ぃな」
北川が入れた曲は中島〇嘉の雪の華だ。
…上手い。
たぶんこの中で一番上手い。まるで天使の歌声だな…
そう思いながら聞き入ってしまった。
………
「どうだった? 太陽くん」
「上手かったよ」
「太陽くんは歌わないの?」
「音痴だから歌いたくないんだ」
それから北川は何曲も入れたが全部上手かった…
………
「もうこんな時間かよ」
亮がそう言った。時間はもう10時前だ。
「そろそろ帰るか」
亮の一言で北川の歓迎会はお開き、駅前で解散した。
………
……
…
俺は徒歩通学で駅とは逆方向…結構遠いな。
「太陽くんいっしょに帰ろうよ」
北川の声だ。
「あぁ、送って帰るよ」
「ありがとう」
笑顔で北川はそう言った。
「ところでさ、太陽くん前に公園で何してたの? 私みたいに雪でも眺めてた?」
「まぁ、そんなところかな…」
「ふーん。あとさ、私のこと名前で呼んでよ。雪乃って」
「…わかったよ。北川」
「…わかってないでしょ」
そんな会話をしながらだと意外に時間が過ぎるのが早かった。
「私の家ここだから…」
「じゃあな。北川」
「雪乃!!」
「…雪乃」
「やっと言ってくれたね…おやすみ。太陽くん。また明日」
「…あぁ。また明日」
そうして今日一日は過ぎていった・・・