最終話:白銀の天使
それから月曜日の学校。俺はめんどくさいやつに絡まれていた。
「………」
「太陽!! どうだったんだよ?」
「……なにが?」
「2年振りに実家戻ったんだろ?」
「別に…」
「幼なじみと運命的な再会……みたいな!?」
「……はぁ、亮」
「なんだ?」
めんどくさいやつこと、亮は答えを聞きたがる子供のような目で見つめてきた。
「今は授業中だ」
気の弱い歴史の小倉先生がこっちの方をチラチラ見る。……注意しろよな。
「そうだったな!! 休み時間にでも話聞かせろよ」
「……はいはい」
めんどくさいな……
………
キンコーンカーンコーン
「よし、話聞かせてもらうぜ!! 幼なじみとどうだったんだよ!?」
授業が終わると、すぐに飛んできた亮。
「なんで俺に幼なじみがいるって決め付けるんだ? まぁ、幼なじみとは会ったが何もない」
「けっ!! つまんねぇな! その幼なじみと付き合うとかさ」
全く大きなお世話だ。
「……ところで天草裕はどうなったんだ?」
「あぁ、あいつは退学だとさ。他の五人も同じ処分だ」
そりゃそうだろうな。しかし、これから先、報復があったりするかもしれないな……。気を付けないとな。
「太陽くん!!」
そんなことを思っていると雪乃が俺の名前を呼んだ。
「どうしたんだ? 雪乃」
「お母さんはどうだったの!?」
「元気そうだったよ」
「よかったね」
自分のことのように喜ぶ雪乃を見て、心が暖かくなった。
「南くん。これ」
「雨宮? なんだこれ?」
「お土産よ。バタバタして買えなかったでしょ?」
「あぁ、ありがとうな……」
正直、お土産は買う気なかったんだけどな……
「雪乃、ちょっと話がしたいから屋上に来てくれないか?」
「ん? いいよ」
「太陽……お前、俺の気持ち知ってて、北川に告白するつもりじゃ…「そんなわけあるかよ」
亮の言葉を遮り、雪乃と屋上に向かった。
………
「もし南くんが雪乃に告白しちゃたら、付き合っちゃうかもね。雪乃」
「けっ知るかよ! 太陽なんか」
「もう雪乃の気持ち知ってるんだから諦めなさいよ。亮」
「なっ!? 静知ってたのかよ!?」
「そりゃバスの中で雪乃が南くんが好きって聞いてから、亮が極端にヘコんでたからわかるわよ」
「やっぱ幼なじみだな……」
「……それにしても亮は、幼なじみの私の気持ちわかってないわね」
「……?」
………
屋上―――
「……何? 太陽くん」
「……雪乃」
「…………」
「ありがとう」
「えっ、どういうこと?」
「雪乃が俺を闇から救ってくれた……」
「救った覚えはないんだけどな」
「雪乃がいたから、今こうして前を向いて立ててるんだ」
「んー。……とりあえずどういたしまして」
雪乃がいなかったら母さんと和解することはなかった。光とも二度と会うことはなかっただろう……
「でも、ちょっと期待はずれかも……」
「?」
「今の雰囲気だったら告白でもしてくれるのかなぁ……って」
まるで亮みたいなこと言うんだな……
「……見ろよ雪だ」
空から降る真っ白な雪。心の闇を消していく白。
「…あの時といっしょだね」
「そうだな…」
「……綺麗だね」
雪乃は目を瞑り、体で自然を感じているようだった。
「……雪乃」
「ん?」
「今は恋愛感情かわからないけど雪乃が気になってきてるかもな……」
「…ほんとに?」
「……さぁな」
正直、今はわからない。でも、わかるのは雪乃が俺を救ってくれたということだ。白銀の雪が降った日に舞い降りた天使。
あんたは白銀の天使だ。