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白銀の天使  作者: Aki.
19/23

第19話:光

………


「ねぇ、たっくん将来なになりたい?」


 光が鉄棒に乗り掛かりながら言った。これは夢だな……と、いうよりも遠い過去の記憶……


「俺は……よくわからないや。光は?」


「私? 私はね、美容師になりたいんだ」


「へぇ……やっぱりお母さんがやってるから?」


「それもあるけど、たっくんをもっとかっこ良くしたいから!!」


 これは小学校1年の頃の記憶だ。もしも過去に戻れるのならあの頃に戻りたい……。俺は今でもそう願うときがある。




………


「………っ」


 久しぶりに寝た実家のベッドは思った以上に寝付けなかった。壁に掛かった時計を見てみると、今は10時過ぎだということがわかった。

 今日は日曜日だ……


 明日からまた学校があり、夕方には新幹線で帰らなければならない。


「………」


 寝癖の付いた髪をうざったく思いながら、俺は今日しなければならないことがあると感じた。


―――いつまでもこのままじゃダメだ。例え、彼女の瞳に俺の姿が触れることが許されないとしても……―――




………



「…光」


 俺は光の家の前にいた。


……会うのか?


いや、会えるのか?……


 たくさんの考えが頭の中に過る。生唾を飲み込み、呼び鈴に指を近付ける。


体の震えが…止まらない。

「……ッ」


…ピンポーン


 震える指でなんとか呼び鈴を押すことができた。


「………」



ガチャ


「どなた?」


 姿を見せたのは光のおばさんだった。会うのは何時ぶりだろうか? おばさんは俺のことを覚えているのだろうか? 俺は……

 悪いことを考えるな。やるべきことは決まっている。


「……お久しぶりです」


「あら……もしかして太陽くん? 久しぶりねぇ。光に会いに来たの?」


「……はい」


「光は今寝てるから起こしてくるわね」


「あっ、起こさなくていいです。……起きたら『ある場所』に来てくれるように言ってくれますか?」


「ある場所? いいわよ」


「それじゃあ……」


 俺はおばさんに『ある場所』を伝え、その場を立ち去った。




………


 俺は光を待っていた。思い出が詰まった公園で……



………


「この花なんだかわかる?」


「それはガーベラだよ」


 小学校1年生の頃、俺と光はいつも近くの公園で遊んでいた。


「じゃあ、これは!?」


「それはコスモス」


「へぇーたっくんって物知りだね」


「図鑑とか好きだからね」

「そっかー」


 にこっと幸せそうに笑う光。俺はきっとこの頃から光が好きだったのかもしれない。


「ねぇ、たっくん」


「ん?」


「ふふん。なんでもない♪」


「なんなんだよ」


 平和な日々だった。無垢な自分が懐かしかった。大切なものが近くにあったんだ。もうそれも……





………



「たっくん」


 気が付くと夕方になっていた。いつの間にか雪が降っていたみたいでオレンジ色の夕焼けが雪を染めていた。

 声のしたほうを見ると、ずっと逢いたかった光がいた。二年前と違い、綺麗な黒髪は明るい茶髪になっていた。


「久しぶりだね……」


「ちょっと雰囲気が変わったな……光」


「たっくんは2年前と全然変わんないね……」


「……悪かったな」


 ……光。大丈夫なのか?


「そうだ! 約束覚えてる!?」


「……あ、あぁ」


「じゃあ、なんだったでしょう?」


 満面の笑みを浮かべる光が昔の思い出にダブった気がした。


「光が美容師になったら、俺が一番最初にかっこ良くしてもらう」


「覚えててくれたんだ……私ね美容師になるために専門学校行くことにしたんだ……」 そうだったのか……


「毎日忙しいけど楽しいんだ。たっくんは高校どう?」


「まぁまぁかな」


「そっか」


 もう昔には戻らないんだな。何となく、そう思った。


「……光」



「ん?」








「……好きだった。ずっと昔から」


「なんで今言うかな……」


 光は頬を掻き困ったように言った。


「…………」


「……でも、ありがとう」


 光は笑ってそう言った。俺も久々に穏やかな気持ちになった。


「じゃあ、俺もう行くから」


 目的も終え、時間もないので、俺は駅に向かって歩きだす。



「約束!!」


 公園を出ようとしたとき、後ろから光の声が聞こえた。


「ぜっーーたい果たすからね!!」


「あぁ……」


 俺は光に手を挙げ、わかったと意志表示をした。


 俺は戻って来てよかった…今ではそう思える。

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