第18話:空
「西島空≪にしじまそら≫です。よろしくお願いします」
これは…夢だな。
俺が小学2年の頃、空は俺のクラスに転入してきた。
「じゃあ、西島くんはあの席に座ってくれる?」
そう言って、俺の横の空いてる席を指差した。
「あの子どこから来たのかな?」
俺の後ろの席にいた光が俺の耳元で小さく囁いた。
「横の席なんだし、休み時間にでも聞いてみればいいだろ?」
「そうだね」
そうこうしてる間に、空は俺の横の席でランドセルを置いていた。
「はーい。授業始めますよ。国語の教科書を開いてね」
「「「はーい」」」
先生の声に生徒達が反応する。
「南くん。西島くんは転入してきたばかりだから、教科書がないの。だから、机を寄せて見せてあげて」
「はーい」
そう言って、机を寄せた。
「ほら、見ろよ」
「…ありがとう。南くん」
「いいって。それより、俺のことは太陽って呼んでくれよな」
「わかった。じゃあ、僕のことは空って呼んで…」
「オーケー。空」
それが、俺と空の初めての会話だった。
………
「……っ…」
……今何時だ?
「8時…だいぶ寝たな…」
帰ってきたのが12時くらいだったから8時も寝てたのか…
グゥ
そう思っていたら、今度は腹が減ってきた。
「…はぁ」
俺は食べ物を探して冷蔵庫を開いた。
「なにもないな…コンビニでもいくか…」
俺は近くのコンビニに行くことにした。
………
……
…
「何買うかな…」
俺は近くのコンビニに夕食を買いに来た。
あまりここら辺の地理は変わっていなかったので、探さなくても昔よく行っていたコンビニがあった。
「とりあえず弁当でも買うか」
商品棚から食べやすそうな弁当を取り、レジに向かった。
「500円になります」
俺はちょうど500円玉を持っていたので、お釣りなしで買い物できた。
「温めますか?」
「いいです」
「ありがとうございました」
早く帰って食べよう……
「太陽!?」
この声は、まさか……
振り返るとそこには…
「……空」
「太陽……」
会いたくないやつに会ったな……
「帰ってたんだな……」
「………」
「ちょっと話さないか?」
「………」
俺は空の顔を見ずに、早足でその場から逃げようとした。
「おい太陽!!」
…が、空に腕を掴まれてその場から、逃げることはできなかった。
「お前とは話したくない。…俺は許してないんだぞ。お前を…」
「…謝らしてくれ」
「………」
コンビニの前でこんなことをしていても、お店の人に迷惑なので俺達は別の話をすることにした。
………
俺達はコンビ二近くの公園に来た。
ここでよく3人で遊んだな…
………
「かくれんぼしよう!!」
と、光が言った。
「いいけど、この公園は狭いから隠れるところなんて知れてるぜ?」
「そんなことないもん!! じゃあ、たっくんが鬼ね!! 行こう!! 空くん」
「う、うん」
「やれやれ、それじゃあ、10数えるぞ!? …10…9…
俺はゆっくりと10数えた。
…2…1…もういいかい!?」
「「もういいよ!!」」
そうして、俺は光達を探すのだが、この公園は本当に狭いため、すぐに見つけることができる。
「みーつけた」
「えぇーー!? なんでわかったの!?」
「光は隠れんのが下手なんだよ。なぁ? 空」
「う……うん」
不本意ながらも肯定する空。
「あぁーーー!? たっくんも空くんも言ったね!? 今度は絶対分からないところに隠れてやるんだから!!」
「やれるもんならやってみな?」
「むー!! 絶対、ぜぇーーーたいやってやるんだから!!」
「落ち着いて、光」
そう言って俺を思いっきり睨む光。それをなだめる空。冗談で挑発する俺。
ほんとにこんな日々がずっと続けばよかったと思う。ずっと…
………
「太陽、お前風高受けなかったんだな…」
空の声で現実に引き戻された。
「……受けるわけないだろ」
…風高を受けてもそこには何もないのをお前は知ってるだろ?
「光も風高受けなかったんだよ…」
「…知ってる」
「……悪かった」
「許さない…一生…」
俺は思いっきり空を睨んだ。
「わかってる…」
「………」
2年前まで親友だった……たった一つの事件で崩れた…
「ひとつ言うなら…」
「……?」
「俺も光が好きだった…」
「知るかよ…一つ言えるのは……俺がお前を許すことはない」
「あぁ…最初から許されないと思ってた。…でもほんとに悪かったと思ってる…」
「………」
できることなら、こいつを殴り殺したい…
でも、そうしたところで何も元には戻らないんだ。
---あの日々は…---
世の中、死んでも償いきれないことがあると思う。死んでも…な。