第12話:誘魔と呼ばれる男
「疲れた…」
「そうだな」
あれから傾斜がもっと緩やかなコースに変えてずっと滑っていた。気が付けば夕方だった…
「あれ雪乃じゃない? 雪乃ー!」
「静ちゃん、久しぶりだね」
「半日離れてただけでしょ? ところで隣の彼は誰?」
北川の横には金髪で切れ長の目が印象的な男が居た…
「裕…」
「クラスが変わって以来だね。月島くん」
「亮、知り合いか?」
「あぁ、一年の時同じクラスだったんだ」
「…へぇ」
「北川さんとはスキーの講習でいっしょだったんだよ。そうだよね? 北川さん」
「あっ、うん」
「じゃあ、みんなで夕食に行こうか」
「あぁ」
俺達はレストランへ向かった…
「ごめん。そこのイケメンくんと眼鏡が似合うかわいい女の子には自己紹介してなかったね。僕の名前は天草裕。君たちは?」
「雨宮静よ」
「南太陽だ」
「へぇ、よろしく」
天草裕…雰囲気が気に入らないな。
「月島くん、どうしたんだい? 元気がないみたいだけど?」
「なんでもねぇよ…」
亮は黙々と山盛りの料理を食べていた。
亮はこの男と出会ってから口数が少なくなっている気がする…どうかしたのか?
「北川さんは南くんか月島くんと付き合ってるの?」
「えっ? そんなわけないよ…」
「…トイレ行ってくる」
亮が突然そう言って立ち上がった。
「待て、亮。俺も行く」
………
「亮どうしたんだ? お前らしくないぞ?」
俺はトイレに行く途中、亮があの男と出会ってから口数が少なくなった理由を聞いてみた。
「…なんでもねぇよ」
「天草裕となにかあるのか?」
「………」
亮が重い口調で話始めた…
「あいつは…」
………
「やっと帰ってきた。料理冷めてるよ」
「…あぁ」
「どうかしたの?」
「………」
まさか天草裕が北川を?
そんなわけないよな……
「…なんでもない」
「ふーん。あと裕くん、クラスの人とどこかに行ったよ」
「そうか」
これからの天草裕の行動には注意しないとな…
………
裕side
「裕どうだった?」
天草裕のクラスメイトが言った。
「あの噂の転校生…ヤバいよ。綺麗系だけど話してみるとマジかわいいし」
「うっほ!? マジ!? っでどうすんだよ?」
天草裕はズボンのポケットからタバコを取り出して、口に加えた。
「決まってんだろ? 俺様の女にする」
「おっ!! でも今の彼女はどうすんだよ?」
「あんなブスはもうどうでもいい。それより北川雪乃…必ず俺様のものにしてやる」
「裕、やっぱお前は『誘魔』と呼ばれるだけあるわ」
天草裕はニヒルな笑みを浮かべていた。
未成年の喫煙は法律で禁止されています。