人のセックスを笑うな? じゃあ親父の、親のセックス、どうとらえろっていうのよ?
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メイはご多分に漏れず小学生のときは父親大好きっ娘だったし、よく一緒の風呂にも入った。だが成長とともに、父親と距離を置くようになり、高校生になった今では完全に父親を毛嫌いするようになっていたので、普段から距離を置いて、気にしないようにしている。
だけども怪文書が気にかかり、ここの所の親父の癖とか、行動を思い返していた、確かに何かがちょっと違うような気になる。
コロンが変わった。
スマホにロックをかけるようになった。
帰宅後すぐに風呂に入るようになった、気がする。
……………………………………怪しい。
メイの女の勘がそうささやいた。
一度でも気になると、それは止められなくなり、妄想が妄想を生んでいく、それもどうしても悪い方へ悪い方へと、坂道を転がりだす石のように。
一体さっきの男、何者だろうか? 不思議なことに彼女はどこかで見た記憶があるのだ。すぐ近くにいるような気にさせられる。
この怪文書の中島由貴というのが浮気相手だとして、しかしメイは中島由貴という名前にはとんと心当たりが無かった。それだけに気味が悪い。いやもし本当に親父が不倫をしてるのだとしたら、それこそ気味が悪い、というか気持ちが悪い、母の佳織を裏切り、メイを裏切り、弟の千富〔ちとー〕を裏切るのだ。家庭というものが崩壊するということが肌で感じられた、突然地面が崩壊していくような、奈落のそこに引きずり込まれるような怖さが、彼女をパニックに陥れる。高々16歳の女の子がである。
いい年をした親父が、未だに女に興味があるのが汚らわしい、父親のセックスしているところを想像し、メイは猛烈な吐き気を覚えた。胃を直接握られ中からかき回されている様な感覚、
「クソ親父、最悪の気分……」
真っ青を通り越し白くなった肌を悪寒で震わせながら、両肩を抱きしめるようにその爪を食い込ませる。
その後ちょっとだけ気分が落ち着き、メイは例の怪文書のコピーを三枚撮り、厳重に保管。そして何気なくその怪文書の匂いを嗅いだ。
「やっぱりほんの微かだけど覚えがある……ナンだろう凄く嫌な感じ、怖いよ」
そういって記憶に蓋をし、ひとまず考えるのを止め、寝ることにした。
夕方になって母の佳織が帰ってきて、少し生活音が混じる。その後弟の千富も帰宅し、隣の部屋でゲームか何かを始めたようだ。薄らぼんやりメイは目を覚まし、さっきまでの怪文書が夢ではないことをなんとなく思い出した。
さっきからラインの着信音がウザイ、怪文書のことを友達に話してみようとか一瞬でも考えた彼女だったが、「出来るわけねーだろ! あいつらソッコーで拡散させるにきまっている!」から。スマホをとるのもだるかったが、付き合いでぺぺっと既読スルーし、枕元に放り投げた。
夕食時まだ親父が帰ってこなかったのはあたしにとってありがたい、余計なこと考えずに済むから。それでも母の佳織の顔をみるのがつらい。もしあの怪文書のことを知ったらどう思うだろうか、笑って済ます、気味悪がる、怒りだすだろうか? 簡単に話せることではないと思う。弟の千富はどう思うかな、まあゲームに夢中になっているだけのちゅう房には知らせないほうがいいだろう。あーーなんであたしだけがこんな思いしなくちゃいけないのかしらと食べる夕飯の時間が苦痛でならない。
「どうしたんだいメイ、なにか食欲無いみたいだけど」
「ううんだいじょーぶちょっと食べたくないだけ」あたしは家族のこと想っているのに。
そう心配してくる母親に気取られないようにする苦労とか、佳織の極わずかの表情とかから親父の不倫に気づいてるのかとか観察する眼、とかの複雑で高度なコミュニケーションが難しい。
「彼氏出来てダイエットでもしてるんだろ」
などという的外れな千富の空気読めなさ感! 全く男って奴ときたらどうしてこんな奴ばかりなのか、メイの彼氏の和成も含めて。
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