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ディザイアの境界    作者: 翡彗 白亞
3/4

第三章―虚ろ―

こんにちは。はじめましての方は、はじめまして。

この小説を閲覧していただきありがとうございます。

久方の投稿です。

ようやく、ディザイアの続編ができたので投稿しました。

とうとうクライマックスにはいりました。

どうか最後までよろしくおねがいします。


思いに気づかない人・・・  私


存在が消えてはじめて気付いた・・・



―第三章― 虚ろ



「なんだいその顔は?

ザラがそう聞くが、優は無言だった。 

「君、いいね」とクックと笑う。 

「何がしたいのですか?」

「亜紀羅に教えたいんだ。欲望こそ真の人間と」

「何がだ! ただ、人殺しへ走っただけじゃないか!」

「それが人間と言う物だ」

「ぐ・・・」

と言うと優に近づき頭を掴む。

「さあ、宴だ」

そういうと、ザラは優の口に何かをおしこむ。 

「うッ! ンンンン・・・」

ゴクン・・・

思わず優は飲み込んでしまった。

「ケッホゲッホ・・・な・・にを飲ましたのです?」

「さあ・・・そのうち分かる」と言い、去っていく。 優が呼び止めようとしたとき。

「・・・ッ!」

血を吐いてしまった。

【なんだこれ・・・凄くあつい・・・ん・・・】

「うああああああああああああああああああああああああああああああああッ! んああああああああああああああああああああああああああああああああ」

悠は叫ぶ。

ザラは笑う。

そして、ザラが、再び悠に近づき耳元で言う。

「それはね・・・[  ]なんだよ」

優は驚愕する。

そして、ザラは微笑みながら言う。

「君の心の奥底。 いや、丸出しの思いを聞かせてもらった」

笑うザラに優は苦しみながら最後の言葉を伝えるように天井にささやく。

手をのばして・・・彼女の名前を。

「あ・・・きら・・」



場所は変わって、柊事務所に戻ってきた四人。

「誘拐事件からの誘拐事件か」と野崎。

「だが、しかし犯人は分かっている。ザラだ。場所が分からん。コンパス貸せ」

「柊嬢さん。場所分かりました」とシアムがシャーレに針を乗せ、液体がかかったものを持ってきた。

「かつて、柊嬢さんが住んでいた所ですが、今はビルになっているはずです」

「・・・コンパス貸せ」

柊嬢さんがいつも使っている懐中型のコンパスをシアムは差し出した。柊が針をくるっと回すとコンパス上に陣が現れた。

「魔術だな。こんな街のど真ん中ってことは[何気ない日常]という魔術を使っている・。

なあ、何気ない日常にするにはどうすればいいと思う? それはな、[気付かせない]だ。 だがしかし、作るのは難しい。 魔術でも、大きなことになれば魔術も気付かれ、変な名前の病気やテロ事件となる。 それを防ぐ。いや・・・あやつは、[邪魔だからあえて、気づかせない]って事にしたんだろうな」

「嬢さん・・・詳しく」

「ああ・・・。

この魔術はザラが作った薬か何かによるものだろう。推測するにはな。

範囲1メートルに入れば気付く魔術だ。 だがそこには[気付かせない]というシールドがはられているんだ。 

遠くから見れば何かあって近寄ればなにもないっていうトリック。 それを回避するには、意識をすることだけだ」

それを聞くと亜紀羅はソファーから立ち上がり、「行く」と言い事務所の外に出て事務所の戸の目の前の階段を下りようとした時、柊は「亜紀羅」と呼び止めた。 亜紀羅は「なに?」と聞き返す。柊はでかい声ながらも真面目に言う。

「お前は、一人ではない。

人はどこへ行こうと一人だ。 でも必ず誰かがいるんだ。 そう、[愛人]がな。

永遠に縁は結ばれても絶対的宿命がやってくる。 そして別れてしまうが・・・縁はずっと残ったまま。 残されたものはあるし、何より心で生きてまぶたをとじれば・・・その人がいるんだ。 人はどこへ行こうとしても一人。 けれど・・・一人じゃないんだ。 不思議に」

そう、柊がいうと「私たちも行く」と言い事務所の戸を開く柊。亜紀羅が微かに振り返ると、柊はかすかに涙を頬に伝わしていた。

亜紀羅は興味があったわけではないが、少し気になった。

そして、静かながらもどこか騒がしく事務所を出て行き、優の元へっと向かう、野崎・柊・シアム・亜紀羅。




「うっうう・・・もう・・・無理よ・・・あの人の言うことなんてずっと聞いてられない」

路地裏の影ですすり泣きをする女性。 そこに、あの人物はささやいた。

「お嬢さん。 僕が助けて差し上げましょう。

しかし・・・条件があります。 それでも良いのなら」

悪魔のような甘く優しいささやきに女性は聞こえたのだろうか、女性はその人物にしがみつき泣き叫びながら答える。

「どんな条件でもいいです! 助けてください! もう、我慢なりません」

ニヤっとその人物は笑いいう。

「了解」

そして、女性とともにその人物は消えた。


柊達4人は、優もいる場所にたどり着く。 

「意識しろ」

全員、瞼を閉じて意識を集中させた。

「あった」

と亜紀羅がドアに指を指す。 柊が「いいぞ。 では中に入ろう」と言いドアを開く。

中は長い廊下。


そのとき。


ザ・・・・


静かに中がざわめいた。

いきなりの風で目を瞑ってしまう4人。 目を開いた4人の目の前に・・・死人のような人間がズラリと。

「な・・・これは・・・副作用」

「なんの副作用だ?」

「式・・・の副作用。式作成で失敗したら、死人のようになるという副作用だ。 

死人・・・正しくはただの狂人。  何もかも見えなくなってしまってこうなるのだ」

「なぜ、見えなくなる?」

「式は、人間衝動を引き起こす。 そう、本来持つ人間の物をよみがえらせる。 自然体はいい。 作成時は・・・心を操ることになるから・・」

「ああ」

そういっている間に増える式の失敗。

「欲望に狂う人間を作るためにどんだけ失敗してんだが」

と柊は呟き帯から銃と小さな刀を取り出す。

「こういう場合は、銃だけじゃ間に合わない」

と言い、銃と刀をそれぞれ左右ににぎり構え言う。

「さあ、やろうではないか・・・。亜紀羅は、先へ行け」

そういうと、柊は式の中を駆け抜ける。 同時に亜紀羅も進む。 シアムも、薬を取り出し、走ろう思ったとき。

「こんにちは」

と女性の声が背後からした。 シアムが振り返ると、黒のストレートで優しくもどこか病んでいる女性がユラリ、と立っていた。 女性は言う。

「愛、していたのです。 でも・・・限界です。ごめんなさい」

女性はそういうと何かをワンピースから取り出す。 ボトルのようなビンで黄色い液体だった。

「ごめんなさい」

女性は再び言うと先へ走りいく、 シアムは僅かな香りから危ないと感じて追いかけ、行き止まりに追い込んだ。

「ごめんなさい・・・もう、限界です」

そのボトルをあける・・・とそのとき、シアムが叫ぶ。

「だめだッ! それをするなあああああああああああああ」


ごくん・・・


女性はシアムの声を聞かず、全て飲み干す。

「あがッ・・・がはッ・・・ゲホっゲホっ」

女性は咳き込んで吐血した。

「く・・・なんてばかなことを・・・」

「ああ・・いいわ~。力が解放される」

薬で女性は、[式]になってしまった。

シアムは止めようとした。 シアムは、ボトルのフタがあいたときに香ったかすかなにおい。 薬を扱うシアムだけにわかる危険な香りだった。 そして今、式の薬と分かったのだ。 

「私ね、美しく可愛くなりたかったの。そんな時、彼が現れて私を綺麗にしてくれたのと同時に自由を奪ったの。でなければ殺すと脅されたの。それからずうっと彼氏の言うこと聞いていやいやしてたの・・・ああ、これでようやく・・・フフ」

シアムはその女性に語り始める。

「かりそめの綺麗も可愛いも本物ではない」

「否定されても、これが私の正しいこと。奪われた自由はの代償は彼の代償を奪う事よ!!」

そういうと、女性の前に男性が魔方陣から現れた・・・。

「ななななななんなんだ?」とうろたえる男。

「奪った自由の代償払ってもらうわ」

「自由って代わりに美貌を与えただろうが!?」

「ごめんなさい。 もう、我慢できません」

「な・・・なにする気だ!?」

女性は体から茨を生み出した。

「よく聞け! 何かを得るには何かの代償を得る。ただで何かを得れる世の中ではない!

生きるなら死の代償。幸せを得るには苦労。綺麗ごとの逆には穢いこと。などを得るのだ!

悪い事ばかりでない!その闇の先に何か得る者はある。

光の逆に闇。闇の逆に光。それが理なんだ!

だから、やめろ。そして、野崎にその男を渡して罰を受けさせて、アンタは毒を抜け!」

「おしまいよ」


・・・・・

亜紀羅は廊下先の広い間にやってきた。

長い廊下の中に部屋はここだけだった。


「おい、優。返事しろ。ったく返事も出来ないのか」


シュウウウウウウウウ・・・


魔方陣が現れ、男性が現れた。

亜紀羅は、すぐに刃物を構えたが下ろした。

「なんだ・・・優か」と亜紀羅が安心するのも当然。 優だったが・・・

「亜紀羅・・・ごめんね」

「馬鹿。 それより、さっさと帰ろう」

そういって、亜紀羅が優に振り向いたとき。

優の瞳が変わり亜紀羅は押し倒される。

優は、着ていたシャツを第二ボタンまではずす。

「な・・・! なんのつもりだ」

「亜紀羅・・・いい匂いだな」

「!?」

そこで亜紀羅は察した。


そう・・・


優が式になっていたことを。



「式に・・・つか、はなせ」

優は亜紀羅を問答無用で押さえ、亜紀羅の首筋をなでる。

「綺麗だよ・・・亜紀羅」

「なんのつもりだ」

「亜紀羅・・・」

ガバっと亜紀羅を抱きしめる。

「亜紀羅・・・好きなんだよ。 告白もした。 なのに君はなにも感じてくれない。 ひどいよ・・・好きなのにさ・・・こんなに好きなのにさ。 亜紀羅・・・今すぐにでも抱きたいさ・・・好きだ」

亜紀羅は呆然。 そして・・・

ドン!

優を飛ばした。

「ぐはッ」

亜紀羅は立ち上がり、刀を構える。

「優、気持ちは分かった。 だが、式であれば殺す。ましてや、式の優に告白されても何も嬉しくないな」



「やってみる?」


女性の声が優の背後からした。

ザラだ。

ザラは、ニヤと笑い人形を操るように指を絡ませ呪文を言った。

「[戦え、式よ]」

その刹那・・・

優は、亜紀羅に殴りかかろうとする。 亜紀羅はギリギリでよけて珍しく焦る。

「操られたのか・・・。  こうなれば、いくら優でも式ならば仕方ない・・・加減なく行くぞ」

向かってくる悠のこぶしを掴み、そのまま蹴り飛ばし吹っ飛ぶ。だが、そのまま起き上がった。

「やれるならやってみろ」

「アキラアアアアアア!」

気が狂ったように名前を呼び、亜紀羅に向かった。



「フフ・・・フフ・・・アハハハハハ」

「ぐぎゃああああああああああああ!」

女性の茨が男性の体を巻き付き、締めあげる。棘が体に食い込んでいき断末魔をあげる。器用に枝分かれした茨で腹に穴をあけて内臓をえぐった。

男性の腹から、どす黒い血があふれ出す。

「次はどこにしようか? そうね・・・足」

女性の目がキンと光ると、ボキボキボキイイッという音とともに男性の足は折れていく。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああうああああああああああああああああああああああああああ! や、やめてくれえ・・・た、たすけてくれえ」

シアムが一歩踏み出す。

「お前さんも悪い。 だが、こういうことするそのお嬢さんも悪いッ!

はああああッ! 受け取れ、惑わしの薬」

シアムが胸ポケットから試験管を取り出し、投げると煙になる。 女性は目が痛くて目をこすり、男性を離した。 その隙にシアムは、男性をこちらにやろうとするが女性が目を真っ赤にして暴走をはじめた。

「私の傷を受け取りなさい」

シアムと男性に茨を叩きつけた。

「があああああああッ」

「ぐッ・・・これは本格に戦わなくては」

と言い、左胸ポケットからシアムは、日本刀を取り出す。

「かわいいお嬢さんには、こういうことしたくないんですけどね」と言い、刀を構える。

そして、二人は同時に走り出す。

この後、 シアム自体もどうなるか知って、牙となり女性に走る。

「はああああああああああああああああ!」

「傷を・・・傷をおおおお!」


ドーンドーンドーン!

バシュバシュバシュッ!

シアムより後ろには、銃声と刀で物を切る音が響く。

柊は無言で切り、打ち続けていた。また、野崎も銃で対抗していて今終わったとこだ。

「ざっとこんなもんか・・・さて、シアムの場所に行くか」

「あ、ああ」

はじめての異形との戦闘で須崎は少し疲れていた。

「・・・野埼はそこで休んでろ。あまり、普通の人間が見るもんでもない」

「分かった」

「ああ、それでいい。抵抗されるか思ったぞ」

「実体験しただけです」

「理解が早くて助かるよ。じゃあな」

柊の姿はすぐに分からなくなった。野埼は、よろめいて座り込んだ。

「・・・実体験・・・ざまあないです」

ポケットにしまった手を出してみると、手はなかった。

「いでえよ・・・でも、守りたかったし、それにやるべきことあるんだ」

と立ち上がり、館を出た。



一方でシアム。


床には切り刻まれた茨で溢れていた。そして、女性もシアムも血まみれであった。

そこに・・・

「シアムッ!」

柊がやってきた。

「な・・・お前・・・ていうか、大丈夫か?」

と血まみれになったシアムに駆け寄る。

「あ・・・ああ・・・それより、嬢さんがいるだろ。 あやつ、目の前で式になったんだ」

「なんだと・・・」

驚く柊を無視して、『よっこいせ』といわんばかりに、シアムはよろよろしながら立ちあがる。 柊はシアムを支えようとするが、柊の手を追い払う。 少々、柊はムスっとするがシアムは関係なしに柊に言う。

「戦いながらなんの能力か、考えていたがわかんないんだ」

「・・・だとすれば・・・[式そのものか]なのか」

「ん?」

シアムが珍しく頭に「?」をつける。 怪我をしているせいかもしれない。柊は驚きながらシアムと語り合う。

「珍しいな・・・シアムがそんな顔をするとは」

「思考が回らない」

「まあ、そうだろ。

説明すればな、[式]の名の由来はな、[式神]を意味する。

式神は意思がなく誰か・・・そう、[主]と呼べる存在により動く。 それは、式神ではなく主の意思で。 式神はただのペラペラの紙だ。 だから主の思うがままに動く。  式はな、[人間の本来あるべき物]と[心]を主として意思として動くんだ。

それはまるで、式神のよう。 ペラペラではないが、どこかペラペラなんだ」

「人形とは違うのか?」

「違うな。

[人形]は[人間]の[形]なんだ。

そこには、作り主の魂が入る。 だがしかし、魂があるだけで意思もない。

[ただの魂のある空の器]なんだ。 でも美しいだろ。 それは、[空]だからな。

人間が本来もつ欲で一番美しいのは、人間が眠っているとき。 そう、[死]。 人形は死んでいないが時が止まっている。だから美しい。 人間は完全なる死で美しいんだ」

「わかった。 じゃあ、あそこのお嬢ちゃんはかな~り・・・やばいんだな」

「ああ。死の式だ。あの茨は死を呼ぶためのもだ。結局、死ぬことになるが・・・シアム、お前も死ぬ」

「!?」

「・・・死なせないよ」

柊は女性に銃を向けた。

「とどめをさす」

柊の周りに緑の円陣が浮かび上がる。

「生と死に永遠に彷徨え、死の式よ」

魔力を込めた弾丸を銃にセットした。

「嬢さん。式は亜紀羅しか殺せないんじゃないのか・・・」

「転送だ。生死のある白紙の世界へ転送させるのだ」

「わかった」

「シアム。お前はすぐ死ぬ。男は罪人だ、そのままで良い。

シアム・・・覚悟は?」

「ああ・・・分かった」

女性は自分がやられることに感知し襲い掛かってくる。柊は結界を展開しながら女性の脳天を狙いにかかる。

「この世で一番美しいのは、死ではないぞ。本当の所。それだけは言っておこう。

御前は哀れだな。美しさには代償を得るのは当たり前だ。本当に死が美しいならば・・・彷徨うことはないだろう。じゃあな」


パーーーーン


女性の脳天を魔弾で発砲し結界を展開した。


「生死彷徨いしユイチリの精霊の森よ彼女を封じ、永遠の時を彷徨わせたまえ」


呪を唱えると、木々を纏い、微笑んだ妖精たちが現れた。

「承知した。知恵の杜のエルフよ。生死を無残に遊んだこの罪、こちらで償わせます」

「ふふ~哀れ~」

「ばかね~」

そう言い、ユイチリの妖精は女性に捕まれた。

「いやあああああああああああああああ!私は美を!美しさを!」

「それがこの末路なのよ。美しいって死の意味。だから代償は死を彷徨う事よ」

「哀れ~みじめ~」

ズブズブズブズブ

「ぐぎゃあああああああああ」

と女性にユイチリの木々が纏い、消えた。

「・・・はあ・・・はあ・・・」

久方の大魔術に少し疲れたがそれどころではなかった。

「シアム!シアム!」

シアムは女性が消えたことで死ぬ寸前だった。横たわるシアムを柊は抱き寄せた。

「柊嬢さん・・・守れなかった・・・彼女を・・・」

「式になるもの誰も救えない。仕方ない」

「これから先・・・柊譲さんを守ることもできない・・・」

「・・・気にするな・・・」

ポタッ・・・

「泣かないでください・・・」

「ばかあ!シアムを!御前を愛しているんだぞ!?」

「それだけ聞けてよかった・・・ありが・・・と・・・。残った二人を頼む・・・」

パタと手が床におち、首もがくんと力が抜けた。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! ・・・・・ああ・・・あ・・・」

柊はこれまでにない声をあげたが、すぐ落ち着く。

「はは、これごとき弱くなってどうする私よ・・・」

シアムに優しい温かい知恵の杜の光を纏わせ冥桜へ送った。

「・・・さて、シアムの言う守る者を守りに行こう。約束だ」

涙をふき、亜紀羅の方へ向かった。



 ―

  


「優、こんなことしても何も得しない」

亜紀羅は殴りかかろうとした悠のこぶしをなんなくかわす。

「亜紀羅が・・・僕に応えてくれないからだ」

優は、力をふりだし、欲望を丸出し、亜紀羅に殴りかかろうとするが亜紀羅はよける。 そして、優は隠していた刃物を捨てて、亜紀羅に向けながらこちらへ、ゆらり・・・、ゆらり・・・、と向かう。

人が変わって・・・やってきた。

「亜紀羅、ごめんね」

「優・・・正気か?」

「ああ・・・」

優は正気に戻っていた。

「言うよ。 亜紀羅、好きだ。 愛している」

亜紀羅は無言だった。 ただ言う。

「私は・・・人を愛せないから。 それに無だ」

そういうと、優はまた人が壊れ捨てていた刃物を取り上げ、亜紀羅に襲い走ってくる。

「好きなのになぜ、そんなこと言うんだああああああああ」

「ゆ、ゆう・・・グッ・・・あ・・・」

避けようとした亜紀羅。 だが、悠のスピード。 いや、欲の勢いだけで走る優のスピードについてい


ずぶっ


亜紀羅の、腕に、優の、刃物、が、さ、さ、っ、た・・・・。


「・・・はあ・・・はあ・・・」

息を整える亜紀羅に悠は近寄る。 亜紀羅は言う。

「近寄るなあッッッ!!!」

そういうと、優はピタっと足を止めて、また・・・人が変わる。

「亜紀羅!? 大丈夫?」

と近づき、優は亜紀羅を抱き寄せる。

「・・・」

もちろん無言。

「ごめんね・・・でも・・・」

そこでまた、人が・・・変わった。

ぎゅっと束縛する優。

「亜紀羅、痛いでしょ?」

「いいや・・・別に」

「ごめんね」

亜紀羅の言い分など無視。 優は我がペースで進める。

「亜紀羅、好きなんだよ。 君は気付かないから黙っていたよ・・・でも正気な僕は我慢できず壊れてしまった」

「ザラの薬で、だろ。 愚か者」

「ほとんどは思い」

「そうか・・・」

「好きなんだよ・・・。

この姿も・・・髪も・・・表情も・・・全て」

亜紀羅の髪に触れる。

「・・・」

無言する亜紀羅の口に近づき

「君の唇を奪いたい。 体も・・・」

と言い、体をまさぐる。

「気持ち悪い」

「そう・・・」

と言うと、優は少し亜紀羅の胸に触れる。 亜紀羅は無反応のまま後ろに隠していた右手で腰に隠している刀を取り出し・・・

「優、悪い」

と言い・・・


グサツ


「ぐあああああああああああああああああああッ!」

優は亜紀羅から離れる。

亜紀羅は、血を振り払い言う。

「おあいにく、[無]なんでね・・・

無だからこそ・・」

と、離れた優に壮大に飛びつき・・・


ドン!


「ぐ・・・」


押し倒し、上に乗り・・・


キイイイイイイイイイイイイン・・・


「な・・・境界結界・・・ない!? まさか・・・私がが愛をささげないと己は死なないのか・・・」

予想外が起きた。 亜紀羅はあまりの驚愕に立ち上がり後ずさりをする。

「とにかく切れないのか・・・」

亜紀羅は少し・・・いや、はじめて・・・俯いて考えた。


相手に対して、初めて[人]と言うものに対して[生命][残るかもしれない傷]に対して考えた。


そして・・・

「優に・・・優をつけていいのか?」


そして、揺らぐ、悠と共に過ごした日々をフラッシュバックする。

「切っていいのか・・・優を・・・

それに、優を考えると変になる・・・なんだろうか・・・」


そのとき。


ズシュッ!


「うぐ・・・・」


ドサッ・・・


「な・・・」


亜紀羅の目の前で優は腹を刺された。 



その時。

亜紀羅は[変な気分]というのが分かった。


理由が分かった亜紀羅は、優に近寄る。

「優! 生きているか?」

刺されたこともあり、優は、元通りになっていた。

優は、そっと、亜紀羅の頬に触れ言う。

「大丈夫・・・おなか・・・だから・・・

それよりも・・・亜紀羅に傷を・・・付けてごめんね・・・」

「謝るな。 私は大丈夫だからさ」

「そう・・・ でも、僕のこと、嫌いなんだね。 亜紀羅は」

その言葉に、亜紀羅は・・・はじめて・・・

「あ・・・亜紀羅? 泣いているの?」

涙を流し、絶望という壮絶と言う名の苦痛を味わった。

「私・・・私・・・優に対して変な気持ちだ。 なんか[嫌いなんだね]と言われて、胸に刃物がささったような・・・気がして・・・」

涙を流す亜紀羅は美しかった。 と同時に手のひらに舞い降りては、スウッ・・・と消えてしまう儚い雪がちらついているようだった。

そして、優は言う。

「亜紀羅・・・それは・・・僕が、好きな証拠だよ・・・」

その言葉にはっと・・・初めて気付く我が心に素直に亜紀羅。

「好き・・・そう、なんだ・・・私は、己が優が愛しくなってしまったんだな・・・」

涙声でそういう亜紀羅。

「うん・・・」

と言うと、優は起き上がり、亜紀羅を抱き寄せ優しく静かに・・・唇に唇を触れる・・・

そう、キスをする。

優にすれば、長く待っていた愛しき亜紀羅のキスだった。

長いようで短いキスは終わり、唇を名残ほしそうに離すと、グッタリとその場に倒れた優。 亜紀羅は、「腹でも・・・さすがに・・・」と言い、優の服を脱がしやぶり、腹にギュウギュウと破った服をしばりつける。

「止血だ。 そして、しばらく待て」

と言うと、優は「ありがとう」と呟き、少し眠った。

そっと亜紀羅は、優の首に触れる。

「あ・・・よかった・・・眠っているだけか・・・シアムから預かったこの薬を優の口にいれておくか。あと、これと。 本当はわざと・・・お前を殺してあいつをとは思ったがこうなるとは・・・

でもおかげで気付いた」

と言い、亜紀羅は薬を口の中にいれて、優の口にそっと流し込む。

流し込んだ後、亜紀羅は自分の後ろを振り返る。

「やっぱり、いたんだな。 そして、優を刺した犯人」

そういうと、素直にザラの声が聞こえた。

「気付いていて、無視とは悪趣味。 まあ、いいけどな・・・ク・・・ハハハハ!」

「黙れ」

ザラの笑いに怒りを見せる。

「ほう・・・変わったな亜紀羅。 怖いな~」

と笑いながら言うザラに「そんなことよりも・・・」と亜紀羅は言い、小刀を構える。

「ザラ。 私は暁 亜紀羅は己を殺すッ!」

「いいさ・・・いいさ・・・いいさ!」


二人は駆け出した。


    


                          [続]



最後までありがとうございました。

おつかれさまです。

次回でこちらは最終章となります。

よければまたの閲覧よろしくおねがいします。

ありがとうございました。


     翡翠 白亞

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