EX続レヴィの一日
「非常時ではありますが、通年通り式典は行われる予定です。規模はこじんまりとしたものになるでしょうが」
会合の議題は近々開かれる予定の行事についてだった。毎年行われているそれは、士官学校の今年の卒業生の中から特に優秀な者を叙勲し、上十二衛に歓迎する式典だった。
皇帝も行幸する豪華絢爛な式典ではあるが、今は至尊のお方は戦地にいる。今年の式典には間に合わないだろうから、慎ましい式典で済ますことになるだろう。
ともあれ、式典の実務面を取り仕切る上十二衛の居残り組は忙しくなる。
新参のレヴィは知らないことだが、毎年の準備が面倒で嬉々として戦場に赴いた小隊長も少なくない。
歴戦の勇士が敵前逃亡したくなる……それくらい中身の無い恒例行事なのだ。
勲章は名誉だが、戦場の実績に関係のないものだから、名声以外に実利はない。
第三者が見れば、やめてしまえ、と言いたくもなるだろう。
「参加する叙勲者は全部で十一人です。それぞれどの隊に配属するかはいつも通りの案配で異存ないですね?」
堅物の上司がぐるりと視線を巡らせた。欠員の目立つ円卓に残っている小隊長は、内地に残された者たちだ。戦場に出れなかった鬱憤を、新参のレヴィにぶつけるくらいには情けない人間たちである。
「あれ?学校の成績順で十名。実力主義の剣の大会の優勝準優勝で二人じゃなかったんですか?一人足りないですよ?」
ある小隊長が数字が合わない、と声を上げた。
見栄えと実力の両方が求められる上十二衛では、毎年士官学校の優秀成績者十名の他に、身分不問の剣闘大会の勝者にも席を与えていた。
こればっかりは貴族のコネも効かない完全な実力主義であり、ともすれば華美に走りがちな上十二衛の実力を底上げするのに一役買っていた。
各部隊に二人ずつの新入隊員。去年までは上十二衛の前身となる六近衛の部隊には均等に新入隊員が割り当てられていた。それは隊の数が増えたところで変わらない。
各隊に振り分けていくならば、一人づつ分けるとしても十二人の該当者が居なければ計算が合わない。
「今年は少しばかりイレギュラーがありましたからね。準優勝者くんはお休みです。別に辞退者が出たわけではありませんから」
数人の小隊長がレヴィの方を見て、納得したような目をする。
「……ああ、そういえばそうでしたね。既に一人、極めて優秀な新人が我々にはいたのでしたね」
衛兵の当番を今まで紅雀隊に押し付けてきた小隊長の一人が、一人言にしては大きすぎる声で言った。どこからともなく失笑が漏れる。誰が笑ったのかは判然としないが、レヴィは嫌な気分になる。
幾ら駆け引きに疎いレヴィでも皮肉を言われているということくらいは分かる。
異例のルートで強引に中央勤務に配属されたレヴィが、本来の新入隊員の枠を潰してしまったということだろう。
「準備に二隊、本番の段取りで二隊。青龍隊には全体指揮を取ってもらいます。――ここまでで、何か意見はありませんか?」
上司の助け舟で、場の空気は変わった。さすがにいつまでもネチネチとレヴィをいびるだけが彼らの仕事ではない。具体的な仕事の振り分けが始まると、皆静かになった。
今回ばかりはレヴィばかりに不条理な仕事が押し付けられるようなこともないだろう。
説明を聞き漏らさぬよう注意しながら、レヴィは思ったよりも楽そうな任務にホッとした。
そして先ほどの襲撃に思いを馳せる。
帝都に武装集団が潜入しているという爆弾情報は、既に市内の衛兵たちに伝えてある。
管轄の問題があるから、これが最善かつ最低限の対処である。
念のため、城中の責任者にも話を通しておいたほうが良いだろうか?伝えた時の、同僚の嫌そうな表情が想像出来るだけに、ほんの少し心苦しい。
ミックに対する聞き取りもしっかりやらねばならない。
喫緊の課題を羅列していると、目が回りそうになる。
もともと実家では武器と鍬くらいしか握ったことがない。長子として上等な教育を受ける兄達とは異なり、人を使う勉強なんてこれっぽちもやってこなかった。自警団の仲間たちとも対等の関係で魔獣退治に赴いていたから、指揮経験はないし、折衝なんて殆どやったことがない。努力家の彼女なればこそ、なんとか大きな失敗なく今の仕事を続けていられるが、そもそも小隊長という器ではない。
溜息の一つでもつきたくなるというものである。
「ああ、言うまでもないことだけど、これは公的な式典の一つだ。甲冑はフル装備で来てもらうし、騎士としてそれなりの体裁は整えなければならない。くれぐれも陛下の御心を騒がせる事のないように」
おおよその説明が済んでから。さも思い出したとでもいうように、一言付け加えられる。言葉の裏を読むのが苦手なレヴィは、一瞬考え込んだが、その言葉が自分に向けられたものだということを理解する。
騎士としての嗜み。そんなものをわざわざ強調するからには理由があるはず。
田舎者とはいえ、軍人の家系であるレヴィは最低限の礼儀は心得ている。ということは――
(まず間違いなくあの子を連れて来い、ということでしょうね)
幽議会では咄嗟の機転で、ナタリアの身分証明を強引に行ったが、スマートなやり方ではなかったのは確か。今現在、ナタリアはレヴィの従士として認知されている。
従士が騎士に付き従うという弁であの場を強行突破した以上、こういった公式の場ではナタリアを連れて行かざるをえない。
もちろん、言葉にして命令されたわけではないので、ナタリアに危険が及ぶならば無視するのも吝かではない。しかし多少の要求ならば呑んでおいて、トラブルを避けるほうが余程利口だろう。
それに帝都に悪事を目論む武装集団が潜入しているというのならば、ナタリアには常に自分の目の届く範囲に居てもらった方がいい。
まして騎士の叙勲式典ともなれば、帝都で最も安全な場所の一つに違いない。名うての戦士が一同に集うのだ。暗殺者如きには近寄りがたい場のはずだ。
さりげない上司の視線に頷きを返す。
望むところだ、と瞳に気合を込める。
毎年の打ち合わせなので、レヴィ以外の小隊長は全員がこの式典の経験者だった。滞りなく会合は進み、紅雀隊には妥当な仕事量が割り当てられる。
嫌がらせは、見えるところではなくなったようだ。
会議は終わったが、仕事はこれからが本番だ。部下たちに仕事を与えなければならないし、準備があるからといって本来の警邏の任務を疎かにも出来ない。隊員をうまく振り分ける必要がある。信頼できる部下がいればよいのだが、いい人材はなかなかいない。
それに加え、ミックへの事情聴取がある。ナタリアにも叙勲式のことを早めに伝えておいた方がいい。
山積する課題に思わず目頭を押さえたが、激務に慣れているレヴィは気力を奮い立たせて、まずは市中の衛兵の詰め所へと向かうことにする。
イレギュラーさえ消えてくれれば、後はどうにでもなる。帝都に忍び込んだ武装集団に対して打てる手は打っておきたい。彼らの襲撃というのも不安だ。
「大賢者様……あなたの居られない帝国はまだ立ち続けていられるのでしょうか……?」
詰め所へは、ミックを引き渡した本人だということに加え、華の上十二衛小隊長という肩書が効いた。制止の言葉もなく、至極あっさりとミックがいる部屋まで通される。
彼らの取り調べは終了しているのか、簡素な部屋でミックは一人でくつろいでいた。逃走防止に見張りが一人廊下に立っているだけである。
「こんにちは。待たせましたね」
ミックの機嫌は悪くはなさそうだ。軟禁してしまっていることを申し訳なく思いつつも、気を引き締める。
彼が悪いとは言わない。けれど、彼の存在によって帝都に混乱がもたらされたのは、覆しようのない事実。ならば、一刻も早く真相を解明することこそが、彼のためにもなるはずだ。
そういう信念を持って今ここに立っている。
「隠し事、話してくれる気になりました?」
「何も隠してないッスよ……。何も隠してないから早く解放してくれッス。連中は今も仇である姉御を狙ってるかもしれないんスよ?」
「自分の身は自分で守れますよ。あなたも、そのことは知っているでしょう?」
たとえ十人に襲われたとしても、レヴィには無傷で切り抜ける自信があった。実際に今日の出来事も危機とは感じていない。むしろ久しぶりに力を出せて気分がいいくらいだ。
不安があるとすれば、近親者を狙われること。
魔獣退治のように追い払う自信はあるのだが、何時でも守れるとは限らない。
つくづく根絶やしに出来なかったのは悔やまれる。
――が、あまり街で暴れまわれば街の衛兵と城の衛兵の間に無用の軋轢を生んでいたかもしれない。こういう所の機微にレヴィは疎かった。
「姉御の強さは見てたッスけど。でも、それでも常に勝てるとは限らないッス」
しつこいくらいにミックは危険を訴える。
古巣の仲間の腕を熟知しているが故の忠告だろうが、いい加減に耳障りだった。
侮るつもりはない。こと戦闘において、蛮勇という言葉はレヴィには無縁のものだ。あくまで冷静に彼我の戦力を考慮した結果、問題ではないと判断したのだ。
自分を狙う、というのならば受けて立つ。むしろ無辜の民に被害が及ばないだけ上等だろう。
質問をすればミックは答える。嘘をついているようには見えない。だから彼自身が何か目論んでいるということはないように思える。
けれど何かが引っかかる。その違和感は彼と話せば話した分だけ、強くなって行く。
数時間に渡る尋問で、新しいことは何一つわからなかった。
疲れを感じ始めた頃、街の衛兵たちに動きがあった。見張りについていた衛兵が直立不動し、外からきた誰かを迎え入れたのだ。
何事かと、振り返る。
やってきたのは顔見知りの警邏の責任者だ。現場では一番偉い。城を守護する上十二衛の小隊長ならばほとんど対等のようなものである。
武装集団の調査に本腰を入れるとするならば、トップは間違いなくこの男だ。
魔術師としても実力者であり、帝都でも有数の個人戦力である。ここは自身を持って彼の強さを保証できる。
肝心の指揮能力についてはレヴィが偉そうに品評できる立場ではないのだが。
「よぅ。勝手に俺のとこの使ってんじゃねえよ、阿呆」
「きちんと話をしてからお借りしていますが?」
「俺に話を通せってことだよ。このくそ忙しい時に面倒持ち込みやがって」
荒々しく悪態をつく男は、脱いだばかりの外套を部下に投げつけるように預ける。
「武装した連中が真っ昼間から、全国刃物物産展をしていたって?いつから大道芸で死人が出るようになったんだ、まったく」
「聞いているではないですか」
「しかも屍体の始末までこっちにやらせやがって……」
「それに関しては申し訳ないです。通りに野ざらしにしておくわけにもいかず」
「はあ……。――で、そいつが下手人か?」
指差しされたミックは、首をぶんぶん振る。
「違いますよ、むしろ被害者です。重要参考人でもありますがね」
「どっちでもいいよ。牢屋にぶち込んどけばいいのか?」
「全然良くありません……。しばらくここで、預かっていてもらえませんか?」
「却下だ。忙しいっていったろ?そっちでなんとかしろや」
心底うんざりした様子の男をよく見れば、薄っすらと隈が目元にある。忙しいというのはただの口実ではなさそうだ。
「せめて人だけでも借りれませんか?」
「人が足りねーんだよ。城の気取り屋たちは、自分たちに危害が及ばなければ、やる気が出ないらしいからな。おかげで忙しくて、忙しくて、こそ泥は喝采しているだろうぜ」
レヴィも彼の言う城の衛兵の一人なのだが、彼には嫌味を言っている自覚はないようだ。明け透けにものを言うから、口は悪くてもさほど気分は悪くならない。
「とにかく。これ以上仕事の邪魔すんな。暇になったら手伝ってやるから。そいつが犯罪をしたわけでもないんなら、俺らの管轄じゃねえ。屍体の処理はやってやったんだから、後はそっちでなんとかしてくれ。刃物の連中についてはお前が心配するまでもねぇ。既にこっちは厳戒態勢で街を張ってる。物騒な連中も萎縮してるはずだ」
だんだんイライラしてきたのか、徐々に声が大きくなっていく。これ以上粘ると逆効果になる。厳戒態勢だというのならば、その状況下でも動いていた彼らの大胆さを認めるべきか。気配を消すこと、隠密にかけてはミックの一族というものは侮れないものがある。
ミックが事件に関わっていることは間違いないのに。どうも向こうにも事情があるようだ。
渋々レヴィはミックに出て行くように促す。紅雀隊も暇ではないが、どうにか監視人員を捻出するしかないだろう。
こうなってくると、呑気に式典を開くつもりでいる同僚たちを叱咤したい気持ちになる。来たる青少年のための叙勲式の人手や通常の業務との兼ね合いがある。無条件で使える部下はいない。
こういった人材の割り振りを学んでこなかったレヴィは、考え込み過ぎて頭が痛くなってきた。
ミックが退出した後、頭を抱えるレヴィに向かって、街の衛兵頭が聞かせるともなく独言する。
「こんな状況でさえ無ければ、な。”全てを終わらせる炎”なんて大層な二つ名の専門家なら、知っているか?常人が短時間で大火事を起こす方法を?」
「火事……。もしかして、商業区の爆発事件は放火だったのですか?」
「独り言だ。空気読め」
「……三つほど思いつきます。強力な日、空属性の魔術師を用意すること。あるいは複数の火元。または特殊な魔薬を用いること」
「ふむ、軍ならば確かに火事くらいは起こせるな。民間となると人手がネックになるだろうが。最後の魔薬ってやつは初耳だ。どんなものだ?特徴、効果、流通、なんでもいい」
「火の精粉という黒い粉です。火を近付けただけで、瞬間的に爆発を起こします。爆発の規模はその粉末の量に応じます。あまり一般には出回りませんが、魔法薬を扱う錬金術師ならば、容易く手に入るものです。鉱山都市から流れてくるものが殆どですね」
「そうか、すまねえな。専門家に断言してもらえると助かる。……一、いや、二週間くらいならジョンのやつを使ってもいい――もちろん、全部独り言だがな」
「っ!ありがとうございますっ。――もちろん、独り言ですが」
そっぽを向いた衛兵頭に別れも告げずレヴィは出口へ。
部屋を出るとき、見張りに立っていた衛兵が、レヴィにこっそり耳打ちした。彼の上司には聞こえないように、
「うちの人、上機嫌です。きっと炎剣殿に頼られて嬉しいんですよ」
微かに笑いながらそう呟いた。
犯罪を犯したわけでもないミックをこれ以上拘束するのは、現実的ではなかった。
人権に配慮したというよりも、帝都がそれどころではなかったというのが、なんとも情けないことだ。
皇帝の不在はじわじわと帝都の行政機構を麻痺させていた。数ヶ月ならなんとかなる。そのくらいの備えは、叛乱鎮圧に向かう前に想定していたものだ。けれど、皇帝が戦の空へ旅立って早半年。想定の倍の期間の不在は、未処理の重要書類を累積させ、人事の停滞を招いていた。
かといって、武装集団の一族であるミックを放置はできない。なによりも血気に逸る彼自身のためにも。
「一週間様子を見ます。その後何事もなければ二週間ほど、監視を付けて自由を認めます。その間、一日の予定を朝に、その日行ったことを夕に、それぞれ報告すること。これは守ってください。ましてや彼らとの接触は厳禁です」
「……わかったッス。でもくれぐれも油断はしないでください。常に相手よりも多人数で立ち回るように。ひと気のない場所には近付かないように」
彼の表情は真剣だったから、茶化しはしなかった。けれどレヴィと彼らとの接触を必要以上に嫌うのは、肉親の情だろうか。決別した相手でも気遣う気持ちは残っていておかしくない。
顔面が損壊した屍体を見て、彼は何を思ったのだろう。恨まれているだろうか。憎まれたのだろうか。
罪人を屠殺したことを、誇りこそすれ、後悔などするはずがない。
それでも、今だけは何故か心が暗かった。
「あ、一週間となるとお弟子さんとの約束の日が……」
「――それくらいなら、伝えておきますよ」
ナタリアの話となると、固かったミックの表情も微かにほぐれる。
「ああ、でもこんな状態でそもそも会わないほうがいいッスよね。せめて帝都から追い出してからじゃないと、おちおち食事もできないッスから」
かと思えば、すぐに落ち込み思いつめたような顔をする。
コツコツとかかとを揺すりながら、いら立ちを抑えるために深呼吸をしている。
彼にとっても少女のことは心配事の一つなのかもしれない。
一刻も早く、この案件を解決しなければならない。
その為には当事者の一人である彼の協力は必須になってくる。
ナタリアの存在が彼の心の奥の秘密を暴く突破口になることを無意識に期待し、レヴィはジョンと部下たちに監視のローテーションを采配することにした。
期限付きで派遣されたジョンという街の衛兵の助けはありがたい。が、24時間の監視をするのならば、三交代制でも最低三人が必要となる。あと二人はどうにか部下たちの中から、見繕うしかない。
部下たちの顔と名前は覚えている。帝都に上京して、紅雀隊を任された時、徹夜で覚えたのだ。仲良く、はともかく、きっちりやって行こうとあの時は思っていたのだ。あの時は。
紅雀隊はならず者の巣窟だった。隊規は乱れ、いい加減な空気を吸った新参者も同じ色に染まる。結果、全員が困った者ばかりになる。
指揮経験のないレヴィは困惑した。捻くれ、曲がり切ってしまった彼らにどう相対すればいいのか。
市場で窃盗した隊員がいたから、厳しく折檻した。
賄賂を受け取る隊員には三日三晩かけて教育した。
どう扱っていいのかわからないから、間違ったことを正すことしかレヴィにはできなかった。
レヴィよりも腕の立つ兵士はいなかったから、全て力で黙らせた。悪事には罰を。鉄拳で小隊を支配する。
規律はマシになったが、こんなありさまでは信頼できる部下ができるはずがなかった。以前訪ねてきたナタリアを襲おうとした不届きものがいたくらいである。
レヴィが部下を信頼しないから、彼らもレヴィを信頼しない。
女である、という些細な侮りは部下たちの心から、とっくに消えていたが、それでも部下との仲はうまくいかない。
「このままではいけない事は分かっているのです……。最初は嫌々でした。帝都て一兵士として働きたい、と軍に上申しただけなのに、何故か上十二衛の小隊を任されました。任された大役。せめて信頼の分は応えようと頑張りました。……ぁあ、本当に私の背中は誰か他人を背負うには狭過ぎる。こんな私にも娘ができました。可愛らしく、利口な娘です。下に守るべきものを持つのならば、それなりのものが求められます。私の背中はこんなにも小さいのに、慕ってくれる人がいる……」
しっかりせねば、と思う。
頑張らねば、と強く思う。
守るということは本当に難しい。日々未熟を感じざるを得ない。
守りきれない時は、保身を優先して見捨てる。最初にナタリアと胸襟を開いて話し合った時、そう宣言しているのに。
守りたい。守れるものならば、全てを守ってやりたい。
届かないことを知っていてなお、レヴィの奥底にはあの血の一日の記憶がこびり着いたままなのだ。




