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男の人
「相も変わらず、お前さんは暇そうだ」
嫌みな言葉と嫌みなほど整った顔立ちをなさった、男の人。二十歳前後にも、三十路にも見えます。大人っぽいというか老けてるというか。あ、怒られてしまいますね。内緒内緒。
いっつも先触れはおろか、音も気配もなくいつのまにか存在して下さいます。
片手に持つのは煙管。似合っていますね。
朱塗りの羅宇に銀の煙管口。ちなみに銀には細工付。花でしょうか、虫でしょうか。とんでもなく高そうです。私なら使うより飾りたいほど、いえ、その前に売り飛ばしそうですね。
「また、唐突なお越しで」
嫌みを返せば何が楽しかったのか、俯いてのどの奥で笑う。くつくつ、と。
怪しいのに、綺麗なんです。美形ってお得ですよね。
「来ちゃあ、まずいかい?」
「まずくても来るでしょう」
「さて、ねぇ」
飄々と、唇の端をつり上げて笑う男。この方が、江戸時代観をぶっ壊して下さる存在です。
「あい」
名を、呼ばれました。
見上げればにんまりとつり上がる口の端。
「茶ァ、くんな」
自分で入れて下さい。