表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絃ノ匣  作者: しま
第二章 「棹の部」
17/41

体、形、器

草履を履いて、庭に出ました。

すでに鬼さん、いえ、須黒が先に立っています。

名前呼ぶのって、難しいですね。鬼さん、ていうのが一種の名称のようでしたから。

名付け、をしたわけなのですけど。須黒を見る限り、特に変わった様子はないようで何よりです。

普段と変わらず、読めないというか読ませない笑顔ですねぇ。


「移すのかい」

「そのつもりですが、できますかねぇ」


私が持っているのは先ほどの和紙です。大きさは掌ほど、上に頭部を模した丸、左右に着物を模し、下は足を模した四角の紙人形。人形という字を書いて‘ひとがた’。振袖を着た方を模した女性型です。


胴部分に名前を、私から見て左に年齢と性別を記入しました。

須黒に教えていただいたのは二人の名前と年齢です。

形、記入場所、使用した和紙ともに須黒曰く、問題ないみたいです。


さて。何でもあり(と勝手に思っている)の“こちら”で、いったいこの人形の効能がどうなるのか。私自身、予想できません。


ひとまず、私の指が地面に触れぬよう気を付けなければ。

二枚の人形を変色した土の上に置きますと、


「あらま」


シミに触れたところからじわじわと、真白の和紙が黒く変色していきました。

まるで吸われているよう、というか実際吸い込まれているのでしょうね。

土が元の色に戻るにつれ、人形が黒くなっていきました。


‘あちら’で聞いた人形祓いの真似事をしてみたのですが。

確か、三回息を吹き込むか自分の体に紙人形を撫でつけて、燃やすか川に流す、でしたか。

神社で掲示されていた観光客向けの説明文から、の知識だったのですが。

…なんて、須黒には言えませんけど。


本当に、ファンタジーの世界ですねぇ。


「移りました、ね」

「燃やすかい?」


いつの間にか、煙管を懐から出す須黒。

お庭のシミって、燃えた跡でしょう?改めて燃えるのですか。


「試すかい」


そんな悪だくみをする顔で言われましても。

だから、私が望むのは消滅、ではなくてですね。


「この人形、私が触っても大丈夫ですか?」

「移ったのなら、改めてお前さんに移るこたァねぇよ」


黒く染まった二つの人形。

二人にとっては、その紙が体、形、器となったから。


「なら、お連れしましょう」

「…どこにだい?」

「それは、須黒しだいです」

「…」


後で伺ったのですが、この時の私、とってもイイ笑顔を浮かべていたようです。

失礼ですねぇ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ