一、宵の口
一、宵の口
「君、まだ宵の口や。何ならな、今から飲むか?」
「わて、お酒は強うないんですわ。他当たってもらえまへんか」
「そない、言わんと。行くで!」
〜〜しばらくして〜〜
「だから、言ったやないかい!わて、下戸やさかいにいて、ヒック!」
「……ごめんて、まさか。たったお猪口一杯でベロンベロンになるとはなあ」
「何か、言ったんか?」
「い、いや、何もあらへんで」
「ヒーック、おっさん。もっと、ぎょうさん酒を持ってきてや!!」
「分かった、分かった。わいが頼むわ!大将、熱燗を三本!」
〜〜大将、追加で熱燗の徳利を三本持ってくる〜〜
「……あー、わてはいつになったら。出世できるんや、世知辛いてほんまに言いたいわ。しくしく」
「あんた、泣き上戸やったんやな」
「うるさいわい、アホにしとんのか。泣き上戸や言うたかて、わてはな。たばこ吸わへんし、ギャンブルやらへんし。酒かてそないに飲まんとやっとったんや!」
「分かったから、あんたさんな。もう、これで熱燗二本目やで。そろそろ、やめとこか」
「いーや、まだ飲む!嫁さん、最近は冷たいねん。息子らも一緒に飲むの嫌がるしな」
「そうかいな、ほな。もう一本だけ、飲もか」
「おう、分かっとうやないかい。乾杯や!」
〜〜夜の十時、居酒屋は閉店〜〜
「……ガァー、ゴォー」
「……もう、ええ気持ちなって寝てもたな」
「うーん、飲めまへん。むにゃむにゃ……」
「すっかり、夢の中やな。しゃあない、家まで送ってったるわ。無理に飲ませたんは儂やしなあ」
「セリちゃん、ちょっとはわての……」
「セリちゃんか、年下の嫁さんかいな。羨ましいわあ」
「……ガァー」
「ふう、酔っぱらいを背負っていくのは骨が折れるなあ。まあ、頑張って送らなあかんな」
終わり




