ミリオタ商売~元自衛官から傭兵が日本でミリタリー塾を開いたが不評だったのでミリオタにおもねった話
「いいか、土嚢の作り方を教える」
ミリタリー知識と民間の知識は重複をしている面が多々ある。
レーダーや兵站・・・軍事、民間、応用可能だ。
極論を言えば、車の運転や裁縫だって軍事知識になる。
その中で市民でも役に立つ知識は土嚢だ。
「もし、日本が侵略され敵軍が侵攻してきたら、土嚢で守りたい場所を覆え。二つ横に並べれば小銃弾を防ぐことが出来る。
爆風だって直撃を防ぐ事が出来る。災害の時も有効だ」
俺は土嚢に関して2時間ぐらい話す事が出来る。
土嚢は素晴らしい。自衛隊と民間、両方良い所がある。
民間は使い捨てだ。自衛隊のように再利用するなんてことは基本ない。
結び方は簡単で速く展開出来る。
一方、自衛隊は木槌などで土嚢を叩いて密度を厚くする。
すると銃弾や水が土嚢と土嚢の隙間を通るのを防ぐ事が出来る。
「さあ、三人一組です」
三人で土嚢を作ると途端に速くなる。一人がクワやスコップで土をならし。一人がスコップでその土を土嚢に入れる。三人目が土嚢を持ち。口を締める。
だが、ここで生徒の1人が手を挙げた。
「あの松永さん・・・・僕は護身を目的としたガンハンドリングを習いたいのです・・」
一瞬、何を言っているか分からなかった。
日本は世界でも高水準な銃規制がある。日常で銃を使う事はほぼない・・・
もし、銃の乱射事件が起きたらアメリカみたいに逃げることになるだろう。
「君はアメリカにでも住むのかね?」
「いえ、日本です」
「なら・・・必要なくない?」
「いえ、電動ガンでも銃の扱いは可能です」
意味が分からなかった。こいつは自衛隊に入れる年齢ではないな・・・
受講生たちは次々に不満を口にする。
「程度が低すぎます」
「そうです。これはミリタリー知識ではない」
「知らないのですか?国際条約で民間人は攻撃されないのですよ・・・」
何てお花畑なんだ・・・ウクライナ戦争を知らないのか?民間人が犠牲になっている。憲兵が機能しているかも怪しいが、後で補償されても死んだら意味がないだろうに・・・
結局、この日はこれで終わった。受講料は返してやった。
この顛末を土地を提供してくれた蘇我さんに話した。
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・ああ、それは、サバゲ系のミリオタだな・・・」
「サバゲ?知っていますけど、あれはゲームでしょう?」
「何でか知らないけど、サバゲがミリタリーと思っているようだ・・」
「ハアアアアーーーー」
電動ガンだろう・・・遊びだろう。
いや、遊びが悪いものではない。
「松永は知っているか?自衛隊でも一時期、電動ガンを導入したときがあったのだ」
だがな。
『風で弾が曲がる・・・』
『射程が短すぎる』
『軽い』
『弾倉の球数が現実と違いすぎる』
いろいろ不評だった。そういや、各国の軍隊でサバゲが訓練に採用されているニュースは聞いたことがない。
更に朝霞でシミュレーション施設が出来てから完全に不要になったな。
「彼らの想定している戦争は市街地だ」
「市街地・・・」
「松永なら分かるよな。経験者だ」
「いや、市街地は検問しただけだ・・」
市街地・・・
アフガン戦争の時、米軍は市街地でタリバン相手に苦戦した事があった。
レニングラードから何も学んでいないと酷評されたな。
市街地、更に詳しく言えば、屋内戦闘だ。
一つ一つの建物を安全化する。
想像して欲しい。
どこに敵が潜んでいるか分からない。これほど恐ろしいことはない。
最近のベネズエラ侵攻前に米軍は大統領府そっくりの建物を作って訓練を行った。
少しも恥ずかしい事ではない。
ここで言う恥ずかしい事ではないとは、戦術的な意味だ。政治的、思想は除外する。
最近のウクライナ戦争では・・・
☆☆☆
『あの建物を爆破する!爆薬はないか?』
『対戦車地雷があります』
『それを窓から投げ込め』
とか。
銃をこうやって構えて銃口だけを窓から入れて、そのままフルオートで建物内を銃撃する。
跳弾だからけの地獄になるのだ。
無理して屋内戦争をするのはトレンドではないように思える。
また、日本だったら。敵が市街地に侵入しビルを占拠したら・・・
『所有者の許可が必要だ』
『戦争できないよ!』
から、法整備が進み。自衛隊法で防衛出動時に建物や土地を使えるようになっている。
運用は未知数だ。何故なら戦争が起きていないからだ。
自衛隊も屋内掃討作戦能力をあげているが、まだ、特別な訓練のイメージだな。
多分、人が死んでから変わるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・
「蘇我さん、どうしようか?ミリオタが何を望んでいるか分からないよ・・・」
「うん。サバゲのフィールド管理者になればいいのではないか?そこでめぼしい子がいたら、自衛隊に進めてよ」
「何かおっさんばかり来ていたが、分かった」
☆☆☆
俺はホームセンターの資材館に行ってベニヤ板や杭を買い込んだ。
「ヤスオ、何するかぁ?」
「ターニャ、訓練施設モドキを作る」
杭を打ち。ベニヤ板で囲いを作った。簡単なドアも作った。
突入訓練だ。
ドアをどうやって爆破をするか。俺は数時間語る事ができる。
そして、募集をした。
ミリタリー塾、生徒募集。
料金は適当にどこかのサバゲを真似た。
人はボチボチ来る。
しかし、笑ってしまうだろう。車で来て軍事訓練を受ける。都市部なら電車だ。
辛い行軍は彼らの頭の中ではミリタリー知識ではない。
口からツバを飛ばして愛銃のAKを力説するおっさん。もちろん電動ガンだ。
「AKは、アクの、リビードは!手はここに・・!」
「ほお、よくご存じですね」
アクと力説して素人ではないと思われたいのだなあ。
しかし、彼らは何故早口で話すのだろうか?
「では、銃の持ち方から始めます」
「「「はい」」」
しかし、彼らは人の話を聞かない。
説明しても思い思いの持ち方をするが放って置く。
ああ、銃の持ち方ね。
基本はもちろんある。前傾姿勢でスタンディングという持ち方、銃口は下だ。
レディという持ち方は肩まであげる。
しっかり持たないと速く構えられないし。5メートル先も当たらないと分かっている。
実戦では死を意味する。
「講師!僕は〇〇〇リ・〇〇〇リの持ち方をするなり!」
「ああ、いいぞ。ハンドガンだな」
どうも自衛隊の適齢年齢者が来ない。
更に事情を調べて見る・・・
本屋にいくと、元傭兵が語るナイフ術・・・
なんて本がある。
「馬鹿か。ナイフ術なんて幻想だぞ」
「ヤスオ、声でかいね」
銃があるのに何故ナイフを使う?日本でも違法だろう。
ナイフスパー?馬鹿か?
「これはアメリカのコンバットシリーズをパクったのではないか・・・」
変な本ばかりとはいわないが、あまりにもかけ離れていた。
「・・・1980年代か・・・もう古い。元傭兵なんて肩書きはない。ただの民間人なのにな・・・」
「ヤスオ、そろそろ働くね」
「戦争は絶えず変化する・・」
「ヤスオ、職安に行くね!」
「・・はい、ターニャ」
ミリタリー塾を辞めようかなと思ったら。
奴は来た。
中学生か。マウンテンバイクで来た。金持っているな。もちろん。ミリタリー系か?米軍放出系の古い迷彩服を着ていた。ギリ、ファッションを超えている痛い奴だ。
「初めまして、松永さんの経歴を見てきました。僕は自衛隊幹部を目指しています!」
「ほお、そうか、いいね」
「それで、自衛隊幹部を目指して、キックボクシングに、ナイフ術、戦術研究をしてます。最近はCQBを研究するべきかと思ってきました!」
パチパチとミリオタたちが拍手する。
彼らはおっさんだ。もう、自衛隊には入れない。
「感心な若者だ」
「すごいなり」
ただの子供の戦争ごっこじゃないか?
何だか、すごく悪い気がした。こんな子供だましで金を取る俺と・・それとこの子自身の無邪気さが・・・人が死ぬって想像できないのだろか?
しかし、子供のリアルな戦争ごっこは気色悪いな。
「いいね。ではそのナイフを見せてくれ」
「はい!」
なんやらガサコソとオモチャのナイフセットみたいなのをリックから出した。盾付だ。
高そうだな。これ法律的にどうなのだろうか?
「では、ナイフスパーをやろうか?」
「はい、松永さんのナイフは?」
「素手で結構」
「ええ、僕、結構強いですよ」
ナイフスパー?対ナイフの訓練をしたことはある。
「あれ、松永さん・・・」
俺は距離を10メートルとった。
☆☆☆
『ヘイ、敵は物陰から諸君らを狙っている。銃を持っていなくても近距離から突撃をしたらナイフでも殺せることを熟知しているのだ!まさにカミカゼ!・・・マツナガ、すまない』
『いえ、大丈夫です』
『なら、訓練を始める!』
敵が10メートル先から突然飛び出してくる想定だ。その間に兵は弾倉を交換して引き金を引く。もちろん空撃ちだ。
敵は弾切れを起した時に突撃してくるからだ。
または、爆弾を抱えた特攻作戦を想定しているのか?
『ヨシ、マツナガ合格、次はマツナガが敵兵役をやれ』
『イエッサー!』
・・・・・・・・
「始め!」
俺は中学生に向かって10メートル先から走って向かった。
「はあ?えっ」
戸惑っている。
何でナイフ持ちは止って戦うとばかり思っているのだろう。
スライディングをして、蟹挟みで中学生を倒して。
背中に乗った。
「・・・これで俺の勝ちでいいか?」
「えっ、こんなの・・・」
「自衛隊幹部は無理だな。帰ってシコッて寝とけ」
「ウウゥ・・・」
中学生は泣き出し。周りの大人は俺を責める。
「大人げない」
「こんな想定あるかよ」
結局、ミリオタ塾は辞めた。建物を解体して
土地は蘇我さんに返した。
「申訳ない」
「いいよ。今、自衛隊は選ぶ時代だからよ」
「あ、そうだ。ミリオタが護身を目的にしたガンハンドリングを学びたいと言っていたのだが、蘇我さん知っていますか?その意味を?」
「アメリカに住むのか?アメリカでも銃を携行して歩けるところ稀だぞ?頭焼かれたミリオタじゃないか?」
「まあ、ミリオタだから仕方ないか・・・」
塾を辞めたのは良いが、ミリオタにこれを聞くのを忘れていた。家に戻る。
「ヤスオ、職安にいくね」
「ターニャ、何でその言葉を知っている」
「貯金、あっと言う間に無くなるね」
「わかった・・・」
とにかく、明日職安に行くか・・・と思う日々だ。
残念ながら、作中のミリオタの発言はほぼ事実を元にしています。
私、個人としては歴史、社会学からアプローチする方、戦史を研究される方などとは会話出来ると思いますが・・・目立つ方は如何かと思っています。
最後までお読み頂き有難うございました。




