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02話 ためらいの代償

 【モニター参加者の説明会はこちら→】

 という案内板に従って廊下を進むと、会議室らしき部屋が見えてきた。


 ドアの向こうから、人の気配がする。


 なんだか緊張してきた・・・。


 就職の面接前みたいに喉が少し渇く。

 私は一度深呼吸をして、そっとドアノブを回した。


 ガチャリ、と小さな音。


 中に入ると、思わずギョッとした。


 白い蛍光灯に照らされた広い会議室。

 二人掛けのテーブルが整然と並び、ざっと五十人ほどがすでに着席している。


 一斉に視線が私に集まる。


 気まずーーーい!!


 急いで空いている席を探すが・・・


 ない。


 正確に言えば空いている席はあるが、座りたくない。


 だってその席は・・・


 最前列、ど真ん中。


 なぜ。


 なぜそこだけ。


 まるで「どうぞ」と言わんばかりに、ぽっかり空いている。


 ビルの前で「帰ろうかな……いやでも5万……」とウダウダしていたせいで、どうやら最後の参加者になったらしい。


 あのときの私に全力で言いたい。


 「当選したとき、あんなにルンルンだったでしょ!」


 でも、もう遅い。


 やる気ゼロなのに、

 一番目立つ最前列センターに座らなければならないのは、シンプルにきつい。


 しかし、座らなければそれはそれで目立つので、平静を装いながらセンター席に腰を下ろし、机の上のプリントをめくるふりをして心を落ち着かせる。


 しばらくすると、コツ、コツと複数の足音が廊下から聞こえてきて、会議室のドアの前で止まった。


 ガチャ。


 30代前半くらいの男性と、20代前半ほどの綺麗な女性が入ってきた。


 そして思わず、男性の髪に目がいく。


 見事なパンチパーマだ。


 指でくるっとしてみたい。


 ・・・いや、何を考えているんだ私は。


 ここは説明会だ。

 せっかく頑張れば月5万以上稼げるモニターに当選したんだ。集中しろ、私!


 気づけば、パンチパーマの男性が私の真正面に立っていた。


 距離、近っっ!


 スマホもいじれないじゃーん。と心の中で文句を言っていると、その男性は笑顔で話し始めた。


 「モニターの皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。わたくしはSAVE U(セーブ ユー)株式会社社長の門脇(かどわき)と申します。」


 え!この人、社長なの?! すごっ! 私と同い年くらいなのに・・・。


 それにしても、社長が直々に説明に来るとは。

 思っていたより、ずっとこのモニター体験に力を入れているらしい。


 そう思うと、自然と背筋が伸び、気持ちが引き締まる。


 門脇社長の話は続く。


 「前置きはさておき、皆様と今後生活を共にするメンタルサポートAIをご紹介します。吉田さん、お願いします。」


 吉田さんと呼ばれた女性が頷き、ヒールの音を響かせながらドアへと向かった。


 「さぁ、入りなさい。」


 誰かに声をかけている。


 ・・・どんなAIなのだろう。


 最初はやる気ゼロだったはずなのに、人間と生活を共にできるほどのAIとはどんなものなのか、気になり始めている。


 鼓動が、少しずつ早くなっているのが自分でも分かった。


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