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2-2 再会と目的②

***



 数カ月後。

 エリザベス様からお茶会や歌劇場などのお誘いを受けて、頻繁に呼ばれるようになった。それは今まで取り巻きだった令嬢の逆鱗に触れたらしく、嫌がらせを受ける日々に突入。それは今日のお茶会でも発揮される。

 今日は公爵家主催のガーデニングパーティーで、薔薇が咲き誇る中庭で立食ビュッフェに近い形で催された。スイーツなども、一口サイズと食べやすいものになっている。


 ちなみに今回の薔薇をモチーフにした菓子は、我がジュラバル子爵家発案だ。薔薇の形はもちろん、香りや味にまでこだわっている。好評でニマニマしているところで、面倒や取り巻きが現れた。


「「ごきげんよう、ジュラバル嬢」」

「レーガン様、ミハイド様、ごきげんよう」

「ふふっ、最近勘違いした令嬢が居るって噂なんですわよ」

「まあ、そんな噂が」


 サラッと流したことで、令嬢たちの表情が鋭くなる。


「……この際、ハッキリ言いますけれど貴女のごとですわ。子爵令嬢ごときが、ウィンローズ様の隣を歩くなんて分別が付いていないのかしら?」

「本当ね。そんなシンプルなドレスで恥ずかしくないの?」


 扇子で口元を隠してチクチクと言ってくるのは、レーガン侯爵令嬢とミハイド伯爵令嬢だ。彼女たちは確か本編にも、ちょこっと出てきていた気がする。取り巻きAとかBとか。

 私は8歳の頃から事業に携わってきたのだ。そこで学んだ対人スキルを舐めないでほしい。


「まあ、では貴女たちは、私とエリザベス様の共同事業が破綻すれば良いと言いたいのかしら?」

「え、な」

「今回の事業。『とても素晴らしい』とレーガン侯爵家からの融資に話が来ていましたが、あまり乗り気じゃないようなので、しっかりとお断りのお手紙をさせていただきますわ」

「ジュラバル嬢!?」


 レーガン侯爵は彼女の父親だ。しかもかなり前向きな契約だったのを白紙に戻したら、どうなるのか──ぐらいは想像したのだろう。もう遅いけれど。


「それとミハイド嬢が指摘したドレスのデザインですが」

「地味でセンスが──」

「エリザベス様発案なのですけれど、もう少しアレンジを加えた方が良いかもしれないと、私からお伝えしておきますわね」

「あ、な、ジュラバル嬢、いまのは……その」

(この程度で露骨に焦るのなら、最初から喧嘩を売らなければ良いのに)

 

 自分で言うのもなんだけれど、沸点は基本的に低い方だと自負している。ただ私の最推しとの邪魔をする人間に一ミリも慈悲をかける気はない。向こうから喧嘩を振ってきたら、全力で買う。貴族社会で黙って良い笑いものにされたら最後、酷い噂まで流されて社交界に一瞬で広まるのだから。


「お話は以上なら失礼しますわ」

「ちょ、待ちなさい」

「そうよ、まだ話は終わってな──」

「ミーレヌ・ジュラバル子爵令嬢。エリザベス様がお呼びです」


 タイミング良くエリザベス様の侍女が声を掛けてくれたので、解放された。

 侍女は屋敷に向かって歩き出す。栗色で空色の瞳、私よりも2、3歳ほど大人だろうか。ふと、なんとなく出会ったことがあるような不思議な感覚がした。侍女としてではなく、もっと別で会ったようなそんな感覚だった。


「あの……」

「はい?」

「もしかして、1年ぐらい前に教会で迷子になった女の子のお姉様ですか?」

「!?」


 覚えがあるのか、一瞬だけ空色の瞳が大きく揺らいだ。


「え、あ、はい。その……そうです。よくおわかりになりましたわね。全然似てないでしょう?」

「あ、はい……。でも何というか雰囲気がどこか似ていて」

「ふんいき」


 予想外の言葉だったのか、口元を緩めて笑ったような気がした。そしてなぜか悪寒が。


「今度も同じように雰囲気で分かったら、声を掛けてみてください。貴女がどこまで気付くのか──楽しみだわ」

「え?」


 花のように笑った瞬間、風が舞い瞬きをしている間に居なくなっていた。花の妖精のように浮世離れした人だった。


(この世界に妖精はいるってお父様から聞いていたけれど、もしかして今のが?)


 この世界ではゲームの時と同様、童話をベースにした逸話や種族が存在している。代表格は人魚族や人狼族、吸血鬼族などもいるが人間社会に溶け込んでおり、パッと見ただけでは分からない。


 また妖精も身近な存在で、イタズラや賭けを持ちかける妖精たちもいる。お喋りが大好きで噂を広めるのが好きなエアリエルに、家事を手伝うのが大好きなブラウニーやシルキー。高山や土仕事などが得意なドワーフにコボルドなどなど。


(もしかして花の妖精さんとの賭け??)


 高位の妖精になれば人の姿を借りて、街を自由に行き来するぐらいはできるらしい。

 私の魔法は水と植物の中間にあるらしいので、妖精に好かれやすいのかもしれない。



 ***




 12歳になり、エリザベス様と交流を深めつつ足繁く王都中央図書館に通った。

 エリザベス様の黒薔薇の呪いを解くためにも、ゲーム設定では描かれなかった《13番目の魔女》と解呪のヒントを探すため魔法構築理論などの本を読み進める。


 幸いにも貴族であれば個室などの部屋を借りることができるので、集中して読むことができた。しかし今日は個室に着くなり、珍しい人物と出くわす。


「……ジュラバル嬢、これ以上妹に関わってほしくないのだが」

「小公爵様」


 モルヴァン・ウィンローズ公爵家長男。

 エリザベス様と同じエメラルドグリーンの長い髪に、紺色の瞳で、整った顔は彫刻のようにピクリとも動かない。常に無愛想で長身だから余計に威圧的に感じてしまう。

 重度のシスコンかつ眼鏡。宰相の息子として頭脳明晰で沈着冷静だが、妹に関することになると途端に、表情筋が壊れて超笑顔かつ脳筋になるヤバいキャラだ。しかも攻略対象。


「エリザベス様本人に言われるなら多少考えますが、どうして小公爵様に命令されなければならないのでしょうか?」

「そんなの僕とエリーとの時間が減るからに決まっているだろう!!」


 言い切った。

 さすが重度のシスコン。エリザベス様への愛が凄まじい。しかし私とは違いモルヴァン様はエリザベス様の呪いを知りつつも、打開策を見つけようという感じはない。どちらかというと残りの時間を、めいいっぱい甘やかしてやりたいという感じだ。エリザベス様のご両親の不仲も、いずれ失うのが怖くて距離を置いたとか。


(令佳が歩み寄ったことで、両親との関係は良くなったらしいけれど……。このシスコンの本心はどうなのかしら?)

「君の目的はなんだ? 共同事業なども胡散臭い。何を企んでいる?」

「アレはエリザベス様と一緒にいるため、そしてエリザベス様のための資金です」

「……」


 そもそもあの令嬢たちに発破をかけたのは、モルヴァン様だ。どうあっても私とエリザベス様を引き離したいらしい。


「私の目的は、エリザベス様が幸せになるお手伝いをすること。直近の目標は呪いを解く方法を見つけ出す、あるいは作り出すことです!」

「は?」


 モルヴァン様は数秒ほど固まった後、鋭く睨んできた。


「それがどういう意味か、分かっているのか?」

 

楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡

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