1-3 出会い③
***
「苔魔法……え、苔???」
ちなみに私の魔法は、水と植物属性の『苔を生やすだけの魔法』らしい。
(だけって!! それはあれかな。癒しや解呪に近い魔法が良いとか願ったけど所詮モブだから、モブ並みの癒しってこと?? 確かに前世で苔のテラリウムが流行っていたけれども……!! 心が癒される的な感じでワンチャン解呪される??)
兎にも角にもこの世界において、苔魔法について調べようと前向きに考える。
モブの世界は唐突で、超ド派手な展開や華やかさもなく、穏やかに過ぎていくのだろう。
(でもまあ、平凡で平穏が一番よね)
少なくとも私の中では、そう思っていた。すでに渦中に居るのだと私が知るのは、ずっと先だったが。
***
ざあああ。
風が吹き荒れ木々をざわめかせる中、ぽつんと立っていた少女の元に無愛想な男たちが駆け付ける。男たちが近づくと同時に少女は銀髪は水色の艶やかな髪に、瞳も金色の瞳に変わる。髪は肩に掛かるほどで、背丈も青年に近い。黒服に毛皮を羽織った姿は、その場に居た男たちを従えるほどの覇気を纏っていた。
「帰る」
「ボス。今回もお目当ての魔法は、いませんでしたか?」
三つ編みかつ緑色の髪で、眼鏡をかけた執事のリーノは、教会での目標達成が出来なかったのだろうと推測し、声を掛けた。
「ああ。残念ながら、な」
「しかしその割には機嫌が良いッスね」
獅子のようなくせ毛の赤髪で、左目に眼帯を付け、黒服を着崩したアイザックは子どもっぽく笑った。それを受けて青年もまた少しだけ口元を緩めた。
「面白いものを見つけた」
***
時は流れて──1年後に私は最推しに出会う。
「本日はどうぞ楽しんで言ってください」
(お、推しが……同じ空間にいる! あーーーーーーーー!!)
最推しのエリザベス様は真っ赤なドレスで着飾っていて、とっても可愛らしい。エメラルドグリーンの長い髪と、深緑色の瞳にドレスがよく似合っている。
(本編時よりもずっと幼い! かわゆい!)
今日は待ち望んだエリザベス様を視界の端に入れることが出来た。それだけで卒倒しそうなほど嬉しい。そう嬉しくはあるのだが──。
(距離が遠い。取り巻きが常にいて近づけないし、挨拶も出来ない……)
かといって割り込んでいくほどエリザベス様と親しくもないし、なにより周囲に居る取り巻きたちが自分よりも身分が高いご令嬢ばかり。
(挨拶は暫く出来そうにないから、なにか口に……あ)
そこにあったのは《迷い子とワンダーランドの果て》のコラボカフェのメニューにあったフレッシュ桃のタルトだ。焼かずに作るタルトはこの作品のテーマである薔薇の形をしている。
(わぁあ、再現度がえぐい。一口サイズで食べやすい。……んん!! クリームチーズと桃のほどよい甘さが最高! しかも別の種類は桃とアールグレイのタルト! これはこれで美味しい。……桃好きな令佳なら、全種類コンプリートしてリピーターになっていたわね)
そう思うとなんだかとっても懐かしい。それと同時に悲しくもある。
「……令佳にも食べさせてあげたかったな」
「今、なんて言ったのです?」
「それは親友のことを──っ、!?」
振り返った途端、最推しのエリザベス様が私を見ていた。
「あなた、まさか」
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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