音声データ3 20250806_08410.m4a
再生開始
激しい雨の音。
『俺はここで聖堂騎士団の追手を片付ける! お前たちは先に女を連れてアゲントの隠れ家へ行け!』
恐らく前の録音データの”赤髪の男”の声だ。
雨音に負けないよう、叫ぶようにネビュラ統一言語で言う。
『了解しました。……ご武運を』
雷鳴。
『来い!』
ガチャっと鎖が擦れるような音。
「っ! ……手荒いなあ。来いって言ってるんだろ? こんな得体の知れない所で逃げたりしないからさ」
春華の声だ。
いつもの軽口だが、その声には覇気がない。
『なぜオービスの女なんかを”聖地”に?』
『知るか。アリエス様の指示だ』
「いや参ったね……彼がいないと、いよいよ話も通じない。しかも、本当に聞いたこともない言語だ」
春華の独り言。
いや、ボイスレコーダーに向けて話しているのかもしれない。
『何を一人で喋ってる!!』
鈍い音がし、直後にバシャっと水の中に倒れる音。
「ぐっ……はぁ……はぁ」
『おい、手荒なことはするなとの命だぞ』
『知るか! この女が勝手に転んだだけだ』
『いけないねぇ。その方は”救世の巫女”……聖女様の御息女。くれぐれも丁重に扱うよう、ルカスからも命じられたはずだよ? それは女神に対する背信だよ』
雨音の中をすり抜け、鼓膜にまとわりつくような男の声。
『リ……リブラ様!? なぜこのような所に……』
『聖堂騎士団に追われていると聞いたので、加勢に来て差しあげたんだよ。――ふーん?』
「……なんだい」
「……確かに、あの方によく似てるねぇ」
リブラと呼ばれた男が流暢な日本語で言う。
「部下の非礼を詫びるよ。……傷を見せてくれるかな?」
「痛みが……引いて……」
「では、またいずれ”聖地”で。その時は、自慢の紅茶をご馳走するよ」
『僕はルカスと合流し、騎士団どもを殲滅するから。君たちは彼女を無事聖地まで送り届けてね』
雨音が遠ざかる。
『ところで君、女神の命を聞けないなら、そんな耳――要らないよねぇ?』
雨音が完全に、止む。
『え? ……あ……うがぁああああ!!!!』
絶叫。そして水溜まりの中をのたうち回る音。
静寂。
雨音が戻る。
再生終了




