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第十四話 表 顛倒


 清光は(あるじ)を失った社の周囲を掃き清めていた。


 現人神たるウカノミタマをあるべき場所へ送り出し、巫女であった孫の燈もその役目を終えた。

 先祖代々受け継いできた業を精算し、肩から荷が降りたような、寂しさのようなものを感じている。


 その結末を、村に縁もゆかりもない一人の青年に押し付けてしまった罪悪感も。

 

 今では、小山の頂上に佇み木々に囲まれたこの神なき神域を守ることが、老いたこの身に残された最後の役目と日々の日課にしている。


 掃除が一段落し、汗を拭ってから娘が持たせてくれた水筒に口をつける。


 社の戸締りを確認して石段を降りているとふと、さっきまで耳をつんざかんばかりに鳴いていた蝉の声が消えたことに気づいた。


 木漏れ日ですら体を焼くほどの強さだったはずの太陽が、雲もないのに翳っている。


「……なんだ?」


 ザァッと音を立てて、鳥の群れが飛び立つ。


 左右に繁る木々の向こうに見えた景色は、およそ現実感などないものだった。


 上空に、丸くくり抜かれた山が浮いている。

 いや、そのまま下へ、徐々にその速度を増し、村に

 

 ――墜ちる。


 

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